前回の記憶の話をもとに今日は記憶術について触れていきます。
これは、基本的に「陳述記憶」の話をしています。もう一歩進むと、
「漢字はこうやっておぼえた方がいいよね」
とか
「ごろあわせってこういうことなんだ」
とか
少しずつ学習の仕方がわかってくるようになりますが、今日までは(もしかしたら次回も)、何の意味があるかわからない記憶術におつきあいください。
ちなみにここで紹介する記憶術は、ギリシア以来の古代から作られているもので、記憶で勝負している人たちにとっては、当たり前、かつ、初期のものでしかないと思います。
このページを訪れているあなたは、すでに「学び方」に関心を持っているわけですが、その気になれば、そんな方法は山ほど紹介されているはずですし、少なくとも書店に行けばたくさん見つかるはずです。
つまりは、意欲、なんですよね。
では、今日の話に入りましょう。
イメージ化=数字を使う
記憶を定着させるためには
- イメージにすること
- ストーリーにすること
- 体感=五感でイメージすること
が条件になります。
どうしても、「覚えるものは少ない方が楽!」とばかりに周辺情報を切り捨てますが、そうせずにむしろ余計なものまで入れた方が覚えやすい。
たとえば、40人の人の名前を覚えればいいとして、名前だけが与えられるのと、顔写真がついているのと、では、顔写真があった方が、「この子かっこいい」「○○はめがねばっかりだ」とか「○○と××は似ている」とか「○○って名前なのに…」、なんとなく情報が入って記憶にひっかかるのです。
もっというなら、座席表もあった方がいい。そうすると、「ここに女子が固まって、こっちには、確かこんな感じのが…」なんて思い出せるようになるわけですね。
では、実際にやってみましょう。今日の授業は、実際にやってもらうのがポイントです。覚えてみてくださいね。
前回の最後に示した買い物の問題です。
覚えるものは以下のものでした。紹介したい方法が3つあるので、3等分しますね。
ノート
チョコレート
醤油
筆箱
修正テープ
切手
りんご
アルミホイル
シャンプー
ケーキ
グローブ
これだけではイメージしにくいので、数字を使ってイメージ化します。記憶術ではよくある方法で、あらかじめ番号をイメージにしておき、覚えるときにそれを持ち出すわけです。やる方法は、語呂合わせでも、好きな選手の背番号でも、なんでもいいのですが、とりあえず次のように、形から連想させます。
- 1は、この形なので、ろうそく
- 2は、この形から、あひる
- 3は耳でどうでしょう。
- 4は包丁
- これがちょっと苦しいですがショベルカー。5がショベルのところですね
- はさくらんぼ。下に実があって、上に伸びる感じ。
- はブーメランでどうですか?とんできそう
- はめがねで大丈夫
- はルーペ=虫眼鏡で行きましょう。
- は痩せた人と太った人
- は連想ゲームでサッカーでいかがですか?
12だったら、一ダースとかクイーンでもいいし、13だったらキングもあれば13日の金曜日のジェイソンもいます(今の生徒には通じませんね)。14は語呂合わせで「医師」とか「石」、15はイチゴ、16は「色」、17だったら「大谷翔平」でもいいですよね。
さて、こうした自分の順番が出来上がったら、これを使ってイメージ化しましょう。
お願いですから、やってみてくださいね。
1はろうそく。覚えるのはノートです。火のついたろうそくで、ノートを燃やします。焦げたにおい、熱さ…もったいないなあ、とか、何やってるんだろうとかいう感情もいいですね。あとは匂いは、記憶と結びつく確率が高いので匂いもがんばってください。
2はあひる。チョコでしたね。あひるがバケツに入ったチョコに突進。チョコまみれのあひるがあなたに向かってきます。飛び交うチョコまみれの羽毛。甘いようなくさいようなにおい…服につくチョコ
3は耳ですね。醤油です。お母さんが話をきかないあなたの耳をつかんで話をきかせようとします。「話を聞かないやつはこうしてくれる!」とばかりに、耳に醤油をかけてきます。耳に醤油が入ってくる感覚。醤油の匂い
4は包丁。そして、筆箱。怒っているお母さんが、包丁でトントンと料理をしています。今日のご飯なあに?と聞くと、筆箱のサラダよ。と返ってきます。きれない感じ。音。イメージですよ。
5はショベルカーで、修正テープですね。テレビか何かを見ていると、大量の修正テープを、ショベルカーで捨てています。きっと、違法なんでしょう。商標の侵害なんでしょう。もったいないなあ、とか思いながら、この映像見てください。
6はさくらんぼで、切手ですね。お父さんがさくらんぼを食べると、その種をなぜか切手にはりつけます。もうひとつ食べると、その種をまた切手に‥なんの意味があるんだろう?とか思ってください。
7はブーメラン。リンゴですね。ブーメランを投げてあたったものがもらえるゲームです。スイッチとかアイフォンとかほしいものはいっぱいあるのに、お母さんがリンゴを狙えといってきます。やっとリンゴにあたる。スパッと切れるリンゴ、飛び散る果汁、リンゴの匂い。
8は眼鏡でアルミホイルです。眼鏡がアルミホイルでまかれています。これをしていけとお母さんに言われます。成績があがるんだそうです。耳のところは痛いし、いやな音はするし、何より見えない‥
9はルーペでシャンプーです。コナンくんにでもなったつもりで、ルーペで手がかかりを探します。そうすると、キラッと光るものが、とっても小さなシャンプーです。これが事件の手がかり?まさか犯人は小人?おすと出る‥シャンプーの匂いだ‥
10はやせた人と太った人です。ケーキですね。キャッチボールをしています。何かなあと思ったら、ケーキをキャッチボールしている。クリームまみれになっていく二人。ケーキもあとかたもなくなっていきます。
11はサッカーでグローブ。ワールドカップを見ていたら、選手がみんなグローブをしています。なんだこれ?と思っているとボールもグローブのようです。
いかがですか?
では、答え合わせです。
- ろうそく=?
- あひる
- みみ
- 包丁
- ショベルカー
- さくらんぼ
- ブーメラン
- めがね
- ルーペ
- やせた人と太った人
- サッカー
いかがですか?おぼえちゃってないですか?これがイメージ化の力です。
部位記憶法
このまま12以降も続ける手もありますが、今回の目的は記憶術を紹介することなので先にいきます。
もうひとつのキーワードは体感です。
体の皮膚感覚は記憶と密接に結びつきます。したがって、体に覚えこませていくのです。私の場合は、頭のてっぺんからだんだん下にいって、体の中にいって出てくるルートを使っています。
- 髪の毛
- おでこ
- まゆげ
- 目
- 耳
- 鼻の上
- 鼻のあな
- ほっぺた
- くちびる
- 歯
- 舌
私の場合はこのあと、のど、食道、胃、大腸、肛門、おしり、なんていうルートです。
覚えるのは、次です。
マヨネーズ
鉛筆
洗濯ばさみ
はんぺん
ガム
せっけん
USBメモリ
わりばし
ポテチ
サッカーボール
紙袋
というわけで、またストーリーです。お願いですからちゃんとイメージしてくださいね。
髪の毛はマヨネーズ。洗いましょう。べたべたになります。くさいです。いっこうにきれいになりません。でもあらいましょう。
おでこは鉛筆。がりがりがりがり。おでこに必死に書いてください。痛いし、書けないし。でもやるしかないんです。
まゆげは洗濯ばさみ。これは簡単。たくさんつけましょう。痛いですよ。10個ずつぐらいがんばってつけてください。
目ははんぺん。はんぺんでよかった。目をふいてください。ハンカチのように。はんぺんがこぼれます。涙をはんぺんでふくんです。
耳はガム。かんだガムを使って耳栓にでもしましょう。
鼻の上は石鹸。とりあえず、あらいましょう。くろずみをとるんです。ごしごし。だめなら、鼻の上にのせてみましょう。
鼻の穴はUSBメモリ。さしこんで、インストール。それともダウンロード?意外とイメージしやすいですね。
頬っぺたは、わりばしです。わらずにほっぺたをはさんで落ちないようにがんばる。何膳つけられますかね?
唇はポテチ。はりつけておけば、授業中、つまみ食いができます。ちょっと見た目が悪いけど便利。
歯はサッカーボール。噛みましょう。がりがり。なかなか噛めませんよ。
舌は紙袋。なめましょう。紙のざらざらとした味。
いかがですか?では答え合わせ。
- 髪の毛
- おでこ
- まゆげ
- 目
- 耳
- 鼻の上
- 鼻のあな
- ほっぺた
- くちびる
- 歯
- 舌
いかでしょうか。ちなみにここで一個前の答え合わせをもう一度。
- ろうそく=?
- あひる
- みみ
- 包丁
- ショベルカー
- さくらんぼ
- ブーメラン
- めがね
- ルーペ
- やせた人と太った人
- サッカー
覚えてるでしょ?これ、明日になっても覚えてるんですよ。恐ろしいです。
さあ、今日の紹介は最後です。
場所記憶法=メモリールーム
これは有名な記憶法です。いくつか例をあげます。
- 駅から家に帰ってくるまでの道のりにある店や目印にそのものを置いて覚える
- 部屋の中をイメージして、部屋の中にいろんなものを置いて覚える
- 朝起きてから家を出るまでにする順番、行く順番を決め、そこに覚えるものをおいて覚える。
というような記憶法です。最後のやつはタモリさんがこれだといっていましたし、マツコの知らない世界の記憶の時には、メモリールーム、二番目で説明していました。
順番さえ、決まっているなら、タンスの引き出しでもいいし、机の引き出しでもいい。時間割でもいいし、駅でもいいんです。そこにものを置いていく。
そんな感じです。
とはいえ、これが説明しにくい。なぜかというと、人によって生活が違うから、共通するイメージがないんですね。
学校でやるときは、まだ学校という場所があるので、なんとかできるんですができるんですが‥
というわけで、今回は家の前から、家の中という設定でやってみます。
- 玄関の前
- ドアノブ
- 玄関の中
- 下駄箱
- 廊下
- トイレのドア
- トイレ
- トイレットペーパー
- 洗面台
- タオル
- 洗濯機
あたりで大丈夫かな?
ビー玉
クリップ
のり
ミルキー
オレンジジュース
スカート
シャーペン
ラップ
カレールー
ケチャップ
ガムテープ
覚えるのは以上ですね。
玄関の前に立つと、なぜか一面がビー玉です。ビー玉があまりに多くてつるつるすべるぐらい。
ドアノブを触ろうとすると、なぜかクリップがはりついています。ドアノブがクリップホルダーになったかのようなクリップ。
玄関の靴がおいてあるところ、中に入ると一面がまっくろで何かと思ったら味付け海苔です。
下駄箱をあけると、なぜかミルキーがごろごろっと出てきます。
廊下にあがると、一面オレンジジュースでびしょびしょになっています。
トイレに行きたくなってドアをあけようとすると、スカートがかかっています。
トイレに座ろうとするとシャーペンが無数に浮いています。
紙をとろうとするとなぜかそれがラップになっている。こんなんじゃふけないよ‥と思いつつ、
洗面台に行くと、カレーのルーがおかれています。
タオルで手を拭こうとすると、なぜかケチャップまみれに。
そのタオルを洗濯機に入れようとしたら、洗濯機はガムテープでまかれている‥
以上です。
では答え合わせ。
- 玄関の前
- ドアノブ
- 玄関の中
- 下駄箱
- 廊下
- トイレのドア
- トイレ
- トイレットペーパー
- 洗面台
- タオル
- 洗濯機
記憶術をどう応用していくか?
というわけで、今日の説明は終わりです。問題はこれをどう学習に生かすか、ということですよね。
順番に覚えるものってそう学習にはありません。
でも、イメージ化や、場所記憶法を応用することはできます。それこそいくらでも。
だから本当は理論を知っていると楽だし、覚えることが得意という人は無意識に似たようなことをやっているケースが多いんですね。
たとえば、漢字。
例えば、歴史。
たとえば、地理。
もちろん、今日紹介したのは、陳述記憶のしかも、一番単純に覚える類のものなので、もっと整理をして覚えるなどの方法もあるわけです。
マインドマップとか地図記憶法とかですね。
というわけで、前提の説明が終わりましたので、少しずつ各教科の説明を始めていきます。
ただ、いろんなことに手を広げているので、一つずつの進みが遅くなるのはご容赦ください。リクエストがあれば、それから先に書くようにします。
では、最後に、今日の復習です。
- ろうそく=?
- あひる
- みみ
- 包丁
- ショベルカー
- さくらんぼ
- ブーメラン
- めがね
- ルーペ
- やせた人と太った人
- サッカー
- 髪の毛
- おでこ
- まゆげ
- 目
- 耳
- 鼻の上
- 鼻のあな
- ほっぺた
- くちびる
- 歯
- 舌
- 玄関の前
- ドアノブ
- 玄関の中
- 下駄箱
- 廊下
- トイレのドア
- トイレ
- トイレットペーパー
- 洗面台
- タオル
- 洗濯機
全部言えたあなたは、正しい学び方のいったんを理解してくれたと信じます。ただし、これは私のネタではなく、古来ギリシアからのネタであるということをもう一度。
世の中には、いろいろな知恵がすでにあるものです。
本を紹介します。
ギリシア以来の方法ですから、ほかにもたくさんあるのですが、この本が今日の話に一番近いと思います。
最近は塾的なマニュアルと受験的な学習によって、直接の点数のものが学習方法になってしまい、マニュアルがあること、覚えるものが整理されていることに価値がおかれてしまって、過程が軽視されているんですよね。
ではまた。
実践編で漢字を書きました。
よろしければどうぞ。