まだまだ基本的な理論説明が終わっていない状況ですが、そろそろ教科別に学習方法を教えていきたいと思います。
もしかしたら、
「理論的なことはほどほどでいいの、とにかくどうやって学習すればいいの?」
という声も出てきそうな気がするので。
悪いことではありません。ぼくら教育にたずさわるものも、できるだけ早く(私の場合は、最初に限ると思っています)効果を実感させて信じさせないと、やっぱり効果があがらないんですね。
一番は記憶術。まだ読んでいない人は、もう一度どうぞ。信用度をあげましょう。
というわけで、これから教科別の学習方法を少しずつ説明していきます。今回はその最初ということで、全体的な概要を説明しておきます。
いろいろな科目に、実はさまざまな要素が入り込んでいますから、正確には科目別にわけることができないのです。次回以降は、タイトルを科目別にしていきますが、今回はジャンル別というか、だからこういう学習をする必要がある、というあたりを説明していきます。
まずはその説明のもととなる記憶の説明です。
陳述記憶と手続き記憶
記憶の仕組みの最初で説明したことが陳述記憶と手続き記憶という話でした。
陳述記憶型の科目
歴史、地理、中学校ぐらいまでの理科、単語や文法、大学受験文系選択の理科基礎科目の一部。
手続き記憶型の科目
算数・数学、高校以降の物理、化学、理系の生物、現代文・国語、英語の長文読解、リスニング、スピーキング、ライティング
こんな感じでしょうか。
陳述記憶というのは、言葉で記憶して再現する、というイメージです。したがって、やり方を工夫していけば、いくらでもごまかせる部分です。大学受験でいうと、私立文系だと、陳述記憶のウエイトが大きくなりますから、究極をいうと大逆転が可能なのです。たいていの場合、高3夏から死ぬ気でやって合格した、というエピソードは私立文系に多くなります。しかも、この大逆転できる生徒は「もとから英語だけはできた」「読書はすごく好きで、国語だけはなんとかなっていた」というようなエピソードを持っていることが多いですね。たとえば、「ビリギャル」の話にしても、慶応SFCなら、英語or数学+小論文ですから、帰国子女なら実質小論文のみですね。もちろん、SFCの小論文は本当に大変ですから、作文力なんていう言葉ではとても語れませんし、じゅうぶん下克上だと思いますが、「逆転」というのは、陳述記憶系でしか起きないことです。
手続き記憶系の科目が多い大学受験の理系では、大逆転は不可能です。私が学校で説明しているデータでは、文系理系とも、80%は2年生の秋で決定し、逆転できるのは20%以下になりますが、データを見ると、文系の場合は、逆転できる条件として英語の完成度、として示すことができます。簡単にいうと、英語が一定のレベルにいっていれば、逆転する条件が整うことになります。
ところが、理系のデータをみると、すべての科目が合格者と不合格者で微妙に上回る、という結果に。
つまり、理系では「高校2年生秋で少しでも上にいて、合格レベルに達している人は80%受かり、達していない20%の逆転する人は、少しでも合格レベルに近い人である」という本当につまらない結果なのです。
冷静に考えてみれば、逆転なんていうことは簡単にできるわけがないのです。
たとえば、あなたが何かのスポーツをやっているとします。
引退の1年前、ラスト1年になって、同級生の新入部員が入ってきて、「レギュラーになりたい。全国大会に行きたい」と言ってきたとします。正直「なめんな」と思いませんか?
もし、これが可能な人がいるとすれば、経験者以外ありえないし、しかも、かなりかつて実績を残した経験者のはずですよね?
初心者で、こんなことをほざいたとすれば、あり得ないと思うはずです。
なのに、なぜか、勉強だとこれができるとみなさん思っているんです。大学受験で、このブログを読んでいる方、もし、高3なら、よほど覚悟して受験にのぞみましょう。もし、高1高2なら、今から、そこそこ土台を作ること。
ちょっと余計な話になりました。
戻りましょう。
手続き記憶系の科目は、身につけるという要素が強くなります。ですから、暗記したからといってできるわけではありません。その手の科目ほど、時間をかけて、解き方を身につける必要が多くなっていきます。
それでは今日の最後に、科目ごとの基本的な方針を書いて今回は終わります。実際には、学校や問題傾向によって、さまざまな学習方法が必要になってくるのですが、とりあえず、ざっと書いておきます。
歴史や地理など暗記系の科目
陳述記憶中心の科目においては、記憶の要素にしたがって、学習することがポイントになります。
イメージ化
記憶のためには、イメージ化がポイントです。知らないものは映像になりませんから、まずは映像にするためには、漫画や映画がものすごく重要になります。中学受験なら、まず服装や文化的なものが映像になるかどうか。大学受験だと、世界史が映像化されないまま学習することが多くなり、どこかで破綻していることが多くなります。
地理だとすれば、男の子なら、「鉄道に乗って旅をするイメージ」、女の子だと「買い物をして観光をしてくるイメージ」が重要です。要は資料集が、旅行ガイドのように見えるかどうかです。
陳述記憶が最終的には多くなりますが、ここはテクニックで乗り切れる部分ですので、要は覚えやすい方法をどれだけ手に入れるかになります。
ストーリー
たとえば、歴史を一本の映画ととらえて、細かいところを暗記しなければいけないと考えたときに、1回を細切れにしながら、少しずつ丸暗記していくという手法をとるでしょうか。
おそらく、何度も何度も映画を見て、少しずつ細かいところを覚えに入るはずです。したがって、学習計画を立てるときに、受験期でようやく1周するような学習計画を立てるのでなく、少なく見積もって5周ぐらいする学習計画が重要になります。この方針があるかどうかが非常に重要になります。
まとめ直し
以上をふまえて、こういう学習に沿ったまとめ直しにノートが作れるかどうかです。中学受験ではなかなか厳しいかもしれませんが、少なくとも大学受験では、自分でインデックスを意識してまとめができないようではかなり厳しいと思います。
語学系の科目
語学系の英語や古文、そして現代文もふくめて、「読む」ことが重要になります。新しい概念については、とにかく、モノ=イメージをどう「言う」のかという形で人間は把握していきます。つまり、学習者からすれば、「聞く」→「まねて話す」ということがすべての基本です。
モノ=イメージを念頭にひたすら聞く、そして音読する、というのが基本です。そのあとに、「読む」→「書く」という順番です。
たとえば、英単語にしても、
- 英語で聞いたものを、イメージできるようにする
- あるモノ=イメージを英語で言えるようにする
- その英単語を読めるようにする
- 英単語をかけるようにする
という順番が大事で、この順番を無視して、いきなりスペル練習をするようなことは意味がありません。
また、どんなに単語や文法が抜けているとしても、英語をリスニングする作業、そして音読する作業は、毎日少しでもやっておくようにこころがけます。ある一定量がないと、聞けないことは明らかになっていますし、聞けなければ、話せない、話せなければ書けない、というのは当たり前だからです。
ちなみに、ですが、本当に英語がどうしようもなくて、リスニングも音読もしても訳がわからない、というレベルなら、まず日本語訳を先にカンニングして、頭の中にいれ、だいたいこんな話をしている、と頭に入れて、音読だけします。
古典などでは、「百人一首を覚える」とか「名文冒頭暗唱」とかありますよね。私は、唱歌を聞くことをすすめています。「夏は来ぬ」「はまべの歌」「仰げば尊し」「ふるさと」などなど。言葉を知っていれば、あとから理解がついてくるということがあるのですね。
現代文については、とにかく知らない言葉で知らない考え方が書いてあるとすれば、どうしようもなくなりますから、とにかく短くていい文章=入試問題を音読させることは継続しましょう。
数学系の科目
手続き記憶は繰り返しが必要
算数・数学を暗記というように説明することについて、私はあまり賛成しません。暗記といっても手続き記憶だからです。
ですから、算数・数学が一番スポーツやピアノに似ています。
ここでいう覚えるとは、まさに「真似」として繰り返し、自分の身につけることを意味していて、言葉で覚えてもだめなのです。
もう少しシンプルにいうと、ある数学の問題の解法を言葉の上で丸暗記してもだめだということです。
スポーツと違うのは、言葉として丸暗記しても一応できているように見えてしまう、ということです。
算数や数学を暗記だという人は、おそらく、
何度も何度も真似をして同じことを繰り返す中で、はじめて身につくのだ、ということだと思います。これなら反対はしませんが、苦手な人に限って、こういう言葉の理解はしてくれません。
さて、数学という科目は、私はなぞなそやパズルだと思っています。なぞなぞやパズルの得意な人はどうやって、得意になったのでしょうか?
- なぞなぞやパズル・暗号を死ぬほど解いて、答えを暗記し、一度やった問題が出ているから簡単に解ける
- なぞなぞやパズル・暗号をやまほど解いているうちに、なんとなく解くときのパターンが体の中にとけこんで、何パターンかの解き方を試しているうちになんとなくはまる
もちろん、2ですね。したがって、
- 真似をして解く
- できたと思っても、自分だけの力で似たような問題を解く
という作業が重要になります。
それからもうひとつ簡潔に触れておきます。すごく苦手なタイプと得意になりきらないタイプの特徴です。両方ともマインドマップ的な発想になります。
逆算のプロセスを練習する
苦手な生徒は、逆算ができないことが多いです。ゴールに向けてのステップがいくつかになってくると、さかのぼって一手目が思いつかない、あるいはさかのぼって一手目をやっているうちに、全体のプロセスを忘れてしまう、という生徒です。中学生ぐらいまでは死ぬほど多いパターンです。
この生徒に、あらかじめ手順が示されている問題をやらせるのはあまり意味がありません。
この生徒は、手順が示されていればできるけれど、手順を自分で組み立てることができない
からです。
したがって、
- 手順=プロセスを逆算させること
- それを記録させること
- その通りにたどる
という練習が必要になります。
発想のプロセスを練習する
これは苦手ではないけれど、得意になりきれない生徒に多い傾向です。さきほどの、なぞなぞの話に近いのですが、「気づかない」「思いつかない」というパターンです。この生徒たちも、言われた通りにやるために、自分で変化させる、とにかくやってみる、というエッセンスが欠けていることが多くなります。
これもやはり練習が必要で、ヒントの少ない状況から、いかに拡大させて、知っている形に変えられるか、がポイントになります。
今回はざっと書いておくにとどめます。また、各科目の各項目ごとに具体的な方法を示していければと思います。