2020年の入試改革、そして新課程の導入と、状況が変化する以上、人それぞれ立場が変わってくるわけで、ここで何を書いたとしても、入試年度によって、そのことがもつ意味は変わってきます。特に今年は、私立大学の定員厳格化。
現高3から始まって、それぞれの学年にメッセージを発信していくしかないかなあ、と思うので、学年別にメッセージを贈ります。
この記事は2018年6月に執筆し、その段階でわかっていることや予測をまとめたものです。2019年4月現在の同様の記事を以下にまとめています。
※2019年6月執筆の2019年入試分析、2020年度入試展望はこちら。
2020年入試改革 各学年に与える影響
まず、2020年=現高1学年の入試で何が変わるか、ということを簡単に整理しておきましょう。
- センター試験が共通テストに。国語と数学①に記述が出題されていく。また、複数解選択など、今までとは異なる問題形式も出題される。
- 国立大学が一律、英語四技能外部検定を義務化。とはいえ、どのように入れていくかは不透明。ちなみに方式は、高3になってからのみ、2回チャンスがある。発表はされていないが、結果を使うのではなく、「受験として受ける」と宣言して検定を受検。だから、高2までの成績は使えない。
- 学力の3要素(知識技能・思考力判断力表現力・主体性をもって他者と協働する力)を、どの入試形態であっても問う
- それにともない、調査書の形式を変更。学年ごとに6項目にわたる記載。調査書の上限がなくなり、いくらでも書けるように。大学はアドミッションポリシーに応じた生徒であるかの記載を求めてよい。
- 多様化した推薦、AOなどをまとめていく。学校選抜と総合選抜の2本立て。ただし、内容の統一ではないので、名称を2本にして、中身は現行とそうは変わらない。
- ePOATFOLIOが本格化。ただし、この運用は今年から始まっており、また、2020年に義務化されるわけでもない。
こんな感じです。
確かにセンターと現在公表されている共通テスト試行調査の問題は、だいぶ異なっていますから、ある程度の準備は必要ですが、それ以外を考えてみれば、実はそんなに変更がないとも言えます。
英語の四技能は現段階でも、相当数の大学で導入されていますし、これが拡大するのは目に見えて明らか。
そんな中で意外と見落とされているのが、3番目の「学力の3要素をすべての入試形態で問う」ということです。
推薦で学力が問われる、という風に言われていますが、英語四技能も小論文も口頭試問も、学力を問うことになるようですから、そこそこのレベルの大学については、実は推薦入試自体の変更はないと思います。
厄介なのは、一般入試です。知識技能は今まで通り。思考力判断力表現力は、大学入試問題が変わっていく、という話。正しいかどうかは別として、センター試験がマークを維持したまま、「思考力重視」の新傾向問題を出してきていることを考えれば、やはり、これは入試問題の中で解決可能ですし、要は入試であるということです。
問題は3つめの「主体性」。こんなものを一般入試で問えるわけがない。推薦AOであれば、志望理由書や面接でこれを評価することになるでしょうが、一般入試でどうします?これ。
ひとつの可能性は「やらない」。でも、どうしても「やれ」といった場合は‥。
JAPAN e PORTFOLIO が義務化されれば、これは可能ですが、無理でしょう。そして、全大学が一気にすべてで活用なんて考えられない。
とすると、調査書しかないんですが、現段階でデジタル化があと2年で義務付けなんて、ポートフォリオ以上にありえない。(将来的にはこれは必ず進むはずです。それも思ったより早く)となると、紙ベースの調査書を大学が拾う‥
ほぼ無理です。今、やっている作業以外は。
今やっている作業というのは、出欠席や成績、単位、つまり評定平均の入力だと思われます。これが2020年から「学習成績の概況」と名前があらためられるのですが、使えるとしたら、これくらい。
私は、現高1から、「主体性」という名のもとに「評定平均=学習成績の概況」が入試に便宜上加算されるのではないかと思っています。
というわけで、学年別の入試改革の影響です。
今年 現高3
現段階で、新入試の影響は考えなくてよい。ただし、今日のもうひとつの話の「私立大学の定員厳格化」から始まる様々な影響は、本当に大変な状況になっていると思います。だから、しっかり準備をしましょう。
しいていうなら、共通テストの試行調査に見られる傾向の変化はすでに起こっています。昨年の試行調査で国語の評論で写真が出ていたら、やはり予想通り本番で出ましたよね?現高3は、今年の秋の試行調査も要チェックです。ただし、複数解選択や記述そのものは出ません。また難易度は50%を切るぐらいですから、センターはもっと簡単というイメージはもっておきましょう。
来年 現高2
問題の学年です。現役なら、現高3と同じ状況、浪人したら、新入試。
今回は、課程変更ではありませんから、経過措置、移行措置なんてものはあるはずもありません。浪人したら、センターに記述。
というわけで、「浪人できないプレッシャー」がかかってきます。こうなってくると、ただでさえ、私立大学の受験校を増やしているのに、これに安全志向が重なったら‥と考えるとおそろしくなります。
とはいえ、本当は安全志向になるということは、第一志望に関しては、「うかりやすい」という理屈になるはずなんですが、そう思えるか、そして、第一志望に届くための準備をきちんとできるかが問われる学年です。第一志望にかじりついてでも行きたい人にとっては、実はラッキーな学年になるはずです。安全志向になればなるほど、厳しくなる学年ともいえるでしょう。
再来年 現高1
有無を言わさず、とにかく新入試。てさぐりの学年ですし、現段階、共通テストの準備といっても、試行調査ぐらいしかない。高2の学年末ぐらいから、共通テストを意識した模試になっていくようですが、先輩たちのように「過去問20年分やる」なんてこともできません。市販のセンター型問題集も大半が、前年のマーク模試のまとめであることを考えると、そういう問題集そのものがどれほどできあがってくるのか‥
ただし、悲しいことばかりでもありません。ひとつ上の先輩たちは、「浪人したくない」学年ですから、1ランク2ランク下げても現役で進学してくれます。つまり、強い浪人生がいない学年になりますね。ラッキー。
2018年入試(直近)の様子
それでは、直近入試の結果を簡単にみていきましょう。
文高理そのまま
「文高理低」なんていうことが言われていますが、とにかく私大の定員厳格化が進み、合格者を減らされている以上、とにかく楽になるイメージはありません。
好況になると(就職状況が改善すると)文系人気が高まる傾向がありますが、まさに文系人気は復活傾向。
では、理系は下がるか、といえば、私大の合格が減っている以上、楽になる印象はありません。とはいえ、厳しくなっている数字でもない、というのは理系志望者にはうれしいかぎりでしょう。
系統的には、法経済商などの実学系の人気が復活。国際系は根強い人気。理系では、農学系統と理学系統が人気がなくなってきていて、工学系が人気。AIの関係か、情報系が人を集める傾向がありますね。
私大の定員厳格化=難化=国立は‥?
私大の定員厳格化は2019年度入試で定員100%を越えると補助金減額となるので、今年も「厳しいまま」もしくは「もう一段厳しくなる」という形です。
とりあえず、今春の結果の振り返り。
この状況が2019年入試でも続くかは不明です。個人的には、意外と現状維持であるような気がします。もう、すでにやっている、ということです。ただし、現高2に関しては、きっと共通テストに変わる前に、安全志向が働きますから、現高3は「去年悲惨だったから安全に」、現高2は「来年悲惨になるから安全に」となるような気がします。
早慶上
志望者が増え、合格者を減らす。つまり、激戦に。早稲田あたりでも、追加合格の量はだいぶ増えたようですので、しぼっておいて、あとから調節、という受験生にとっては、困ったやり方になってしまっているようです。
GMARCH
志望者が増え、合格者を減らす。こちらも激戦に。つい数年前までは、明治と立教が頭ひとつ抜けたかな、という印象でしたが、今年の結果を見ると、中央や法政もぐんともどしていて、受かりやすいところを見つけることができません。
文系センター利用3科目だと、ついこの間まで「80%」が基準でしたが、いまや「85%」で一番楽なラインで、80%後半から90%以上が求められる状況になってしまいました。
成蹊・成城・国学院・武蔵・明治学院
このいわゆる「いい教育をしてくれる大学」群も、とにかく難しくなってしまいました。特にセンター利用で合格をどんとしぼってくる傾向が強くなっています。GMARCHが厳しくなった時に、私は強くおすすめしていた、これらの大学もひっぱられるように厳しくなってしまいました。成城がしぼり、明治学院はひきつづき厳しく、武蔵も厳しかったようです。成蹊のねらい目の入試形態も難化傾向だったようです。
特にセンター利用が厳しくなると、一般で受ける方向になっていくのですが、併願を考えるときでも苦労することになります。それでも、この大学群は、安全策で進学を考える併願を考えるなら、GMARCH一辺倒にせず、きちんと調べて受験すべき大学だと思います。
日東駒専
日大は、学部新設などもふまえて合格者を増やしましたが、それ以外は、志望者が増え、合格者を減らす。東洋大あたりが一番厳しい状況だったと思います。
昨年は、日東駒専は合格者を減らす、というところまではいっていなかったのでかなり厳しい状況にうつってきた、という印象ですね。
この系統でもセンター3科目は難化傾向で、80%下回ることはないと思った方がいいでしょう。
東洋大あたりだと、センター4科とか5科とかだとそこまで難化はしていません。
また理系に関しては難化しているような状況ではないようです。
私立と国立の難易度の関係
というわけで私大が定員厳格化でとにかく厳しい。
たとえば、
千葉大文系とGMARCHの関係を千葉大前期受験者でみていくと、合格をとれるのは20%程度のよう。すべりどめというより、千葉大の方が簡単ぐらいの数字です。
理系で見ると、
千葉大と理科大では、理科大はまったくすべりどめにならず、芝浦工大がなんとか候補になる感じ。
ところが茨城大になってくると、芝浦工大もすべりどめにはならない。東京電機あたりがやっとでしょうか。これでも40%ぐらいです。
だから、まずは、「国立大を最後までしっかり狙う」ことの方が大事。
一番最悪なのは、高校2年、3年まで国立大学を狙っておきながら、ちょっと模試成績が伸び悩んだからといって、科目をしぼって私立にするパターン。
今も見たように、「国立が厳しい」だから「私立」という状況ではありません。国立が厳しければ、1ランク2ランク下の私立を覚悟しなければいけません。
もちろん、科目負担が問題なら、覚悟で地獄の「私立」に向かうしかないのですが、「甘くはない」ということです。
それよりも国立にしっかり向かうことはとても大事なことのように思います。
英語4技能入試の拡大
こういう現状の中、数少ない一般入試の合格が、英語4技能にも回されてしまっている状況。一概には言えないけれど、英語型の方がやさしいような印象。
ただし、グローバル入試といってもいろいろあいます。
英語免除型=英語の一定資格があると、英語が免除される。上智のTEAP入試が典型だが、英語の成績がなくなってしまうので、残りの科目で合否が決まるから、必ずしも英語が得意な生徒が有利になるとは限らない。
加点型=東洋大や東京理科大がこういう形をとるが、スコアや級に応じて、加点される内容が違ってくる。最たるものは「みなし満点」型。
資格型=受験資格となることで、競争が緩和されるが、入試自体はそのままというケース。
これらの入試が、一般入試と併願できたり(例:早稲田文)、できなかったり(例:東京理科大)、併願できて一般の英語と資格のいい方をとってくれたり(例:東洋大)、とにかく一言で言えないのがやっかいなところですね。
でも、言えることは、英検2級以上をとっておくにこしたことはないです。最近は、指定校の条件にも英検2級と入れてくる大学も増えてきつつあります(まだまだ少数ですが)。
とはいえ、英検2級だと、いわゆるいい大学の資格としては低い。かといって英検準1級はそう簡単にはとれない。となると、
- スコア型
- 準備がしやすい=単語の教科書でのカバー率
- 受験料がほどほど
- 入試で認めてくれる大学が多い
という条件が出てきて、現状、関東にあるうちの学校ではほとんどがTEAPに向かっています。
これが、2020年になると、おそらくGTECに向かうのではないかと思っていますが‥
定員厳格化による入試の変更
さて、現状で一番厳しいのは、私立や国立がこの状況の中、定員を守るように、定員確保に向かっていることです。
つまり、
指定校推薦
公募推薦
AO入試
に定員を回しているということ。
もちろん、この推薦は、受かる推薦ではなく、競争のある厳しい推薦であるということ。
学力・意欲・志望理由・実績‥
ありとあらゆることがチェックされます。
国立の推薦は、今や
- 出願条件が、評定や実績や英語4技能
- 小論文、面接、英語など、実際に厳しく入試
- 内定が出た後、センター試験で一定の得点をとって合格
という感じです。旧帝大だとセンター80%ぐらいでしょうか。旧帝大としては低いですが、誰でもとれるスコアではないですよね。
センター80%だけなら、いいのですが、結局、提出するレポートや実績や、小論文、面接の準備など、かなり専門的にしっかり勉強する必要が出ます。
いや、大変‥。
こんなことを国立がどんどん進めているところに、私立に定員厳格化の波がきたものだから、いくつかの大学は明らかにこの動きをしています。
となると、私立大・国立大に関わらず、第一志望にAO公募があるなら、やっぱりチャレンジしたい=余計なことをやっておきたい、ということになりますね。
2020年入試の前から、結構大変な受験状況がやってきていると私は思っています。
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