ここまでで記憶の仕組みについては、ある程度、説明ができてきましたので、具体的な学習方法に入っていくことができます。
というわけで、今日は具体的にどのような学習計画を作るか、という話になります。
今回のお話は、「反復」の話です。効果的な反復の話をしているわけですが、これは一方で、ただ反復するのは意味がないということでもあります。そのあたりは以下にまとめ直しています。
後から書いたものですが、是非合わせてお読みいただければと思います。
- 長期記憶には5回の反復が必要~復習の仕方
- 「7回読み勉強法」の紹介~リスク管理「範囲は全部終わらせる」
- 歴史や地理の学習の仕方「まずは全体を読む」
- 現代文や英語、長文の定着「一日一題『読む』」
- 算数や数学の問題演習「簡単なところだけをやる。応用をとばす。」
- モチベーションをたもつために。「ゴールを多く作る」
長期記憶には5回の反復が必要~復習の仕方
このブログをしっかり読んでいただいている方には、もう何度も何度も出てきたフレーズですね。復習をどのようにやるか、というような話になています。
一応、その話です。
この復習の数の数え方は非常に難しく、要は「意識」の問題もありまして、どう少なく見積もっても2回、普通に考えれば5回ぐらい、できれば7回ぐらいの反復が必要になります。
したがって、この段階で単純に言えることは、1年間しか受験勉強の期間がないと考えたときに、
1年間で全範囲を終わるように計画を立てる
では、だめだということですね。
そうではなくて、
1年間で全範囲を7周終わらせる計画を立てる
ということになるわけです。
こう考えると、
「そりゃ、それだけ終わらせれば受かるよね。でもさ、時間もないし、1から始めなくちゃくいけないし、1周終わるだけだってあやしいんだよ。結局、中学入試も大学区入試も早くから始めなさい、っていうこと?」
なんて声が聞こえてきそうですよね。
私が書くのは、同じ1年であっても、ということで、早くからはじめろ、ということではありません。
(まあ、確かに早くから始めた方が得ですが、私の説はそれを学校の授業でやるんだよね、ということなので、それはこちら
この話、最初の方に書いたんですが、しっかり読んでくださいね。)
たとえて、言うなら、好きな映画とか漫画とかのカルトクイズ的なものに挑む人を想像してほしいんです。このカルトクイズに答えられる人って、本当に受験勉強的に勉強したんでしょうか?
1年間で全範囲が終わるように計画する=一度も最後まで読むことなく、読んだ最初のページから何度も何度も繰り返して、覚えたと思ったら、次のページに進み、1年経ってようやく最後のページにたどりつく
1年間で7周できるように計画する=とりあえず一度見てみたらおもしろかった。だから2回目、3回目と繰り返し見た。そしたら、なんとなく話の展開を覚えてしまった。5回、7回とみて、細かいことまで頭に入った
と考えてほしいんです。
こう考えてみると、いかに1年で1周という計画が無謀かがわかりますよね。
何も7周といっても細かいところまで覚えることを7周するわけではなく、最初のうちはあらすじ、あるいはもっといい加減でもいいわけですよね。
これを今日は説明します。
「7回読み勉強法」の紹介~リスク管理「範囲は全部終わらせる」
7回といえば、まずはこの本の紹介です。これもかなり売れているはずですが、一応紹介しておきます。
この本の書いていることは直観的、あるいは経験的なことからだとは思いますが、理論的に考えてもものすごく正しいことです。
この人が書いているので印象深いのは
「5回も読めばだいたい覚える」
というセリフから、この本の中身にたどりつくようなのですが、これはまさに、
長期記憶にするには5回の反復が必要
ということそのもの。それを、トップを狙うところまでやるなら、7回になる、ということなのでしょうか。
いずれにせよ、このやり方は、暗記物から、長文読解から、数学まで使える計画の立て方になりますので、ぜひ一読ください。
さて、これは入試に向かうまでの学習の達成率から考えてもリスク管理になります。
もし、細かく少しずつ進んで、最後の範囲まで終わらなかったら、70%しか終わらなかったら‥
100点満点の70点ならいいのですが、そのための条件は、やったことは100%であることです。もしやったことの70%だった場合、
70%×70%=49%
の定着です。
でも、もし、7周するはずが、70%分しか繰り返せず、細部30%がつめきれなかった場合は、
100%の範囲×70%=70%
の定着なんです。
大学入試では、偏差値が低い大学でも、合格最低は70%あることが多いです。つまり、簡単なところだけでも全範囲終わることが条件。
中学入試でもそうですよね?簡単なところをまず落とさないこと。
なんとなく、理解してもらえますか?
そもそも、一度も見たことのない映画、全体像をつかんでいない映画を細部をつめながら見ていく、って不可能ですよね?
できる人とできない人の違いとも言えます。できる人は、細部に行く前に全体像をなんとなくつかんだ上で、細部をつめているんですが、できない人は、とにかく覚える!という感じになっていくんですね。
歴史や地理の学習の仕方「まずは全体を読む」
というわけで、歴史の場合、まずは教科書を物語のように読む、というのが1周目。映画と同じように、ただ楽しく、筋だけわかればいい、覚えるという感覚は捨てるぐらいでいいですね。
世界史と日本史では日本史の方がやりやすい、と言われるのは、日本史だとあらかじめあらすじが入っていて、しかも映像化ができているからです。
だから、世界史の場合はすごくざっとでいいから、どう展開するかをイメージする必要があります。
中学受験のレベルだと、1周目は漫画やアニメでいいわけです。
大学受験で、教科書を読んでもおもしろくない場合は、最近は大人向けの、ちょっとおもしろく書いた世界史の本、たとえば、
とかいろいろありますので、こういうのを最初に使うのは手です。 このぐらいなら、時間は1冊の本を読むのとかわりませんから、下手すれば1日、長めにみても1週間ですね。
2周~4周ぐらまでは、最低限、目次=単元名と大見出しぐらいは言える感じにしたいですね。見出しが言えるようになってしまえば、あとは細かいことだけが残っているだけで、展開=あらすじは当然全部いえる感じになります。ここまでせいぜい1か月。
5周目以降は細部をつめに入ります。太字から入って、太字でないところまで。
この段階に入ると記憶術などの応用が必要になってきますし、マインドマップの作製も必要になると思いますから、そう簡単に何周もできないかもしれませんが、1年のうち1か月を使って4周ぐらいして、あらすじ=見出しがつかめているなら、残り11か月で細かく3周するにしても、1周3~4か月使える計算になります。
現代文や英語、長文の定着「一日一題『読む』」
いわゆる文章の理解も5回読むぐらいが流れとしてはいいと思います。このあたりは、とにかく1日1題読む、ということをすすめています。
理想的にいえば、ひとつの短い文章を5回ぐらい音読すると、なんとなくわかる状態に近づく可能性が高い、という風に言い換えられます。
古文とか英語の長文の場合、何も内容がわからないのに、音読で大丈夫か、という問題がちょっとだけ残ります。
目の前に、モノがある中ではじめての言語を聞く場合は、確かに5回ぐらいきけば、「ああ、これを〇〇とよぶんだな」とわかりますが、長文の場合は、概念だったりするわけですから、目の前に何もないのに5回読んでも仕方ありません。
というわけで、この音読前のテクニックは、
先に訳をカンニング=日本語で内容を把握
後で5回音読
ですね。この程度のことを毎日続けるだけで、だいぶ得意になりますよ。90日ぐらいでだいぶ成果を感じとれるはずです。逆にいうと夏休み明けぐらいがタイムリミットということもできます。
算数や数学の問題演習「簡単なところだけをやる。応用をとばす。」
実はこれらの科目も反復が必要です。あくまでも全範囲が終わって復習しているという前提で書きます。仮に、高3の範囲が終わっていなかったとしても、高1から高2の範囲は終わっているわけですから、高3の全範囲が終わるまで復習しない、なんて必要はないし、数学は、ある分野の理解の上に積み重なりますから、早く穴をふさがないと高3にも影響がでます。
これらの科目は、
1周目=例題だけ ただし、必ず自力で問題を解く
2周目・3周目=基礎問題だけ
4周目・5周目=標準問題だけ
6周目以降=応用問題
というようなイメージでとりかかるととにかく全体像がわかりますし、復習にもなります。
こういう学習をするときには、
目次を書き出して、表を作ることをすすめます。
自分なりに理解度を×、△、〇、◎というような感じで評価して、次の周回では、×ならもう一回同じレベルを◎なら先に進む、というような表を作っておくといいと思います。
モチベーションをたもつために。「ゴールを多く作る」
これはすでに書きましたが、ゴールを多く作ることにもつながります。
ゴールをする経験は自信につながります。スモールステップを作る、ということですね。
でも、数学のような問題を
単元ごとに、例題→基礎→標準→応用、なんてやっていたら、苦手な子はなかなかゴールできません。だからこそ、例題だけでゴールを作る、ということがこうした観点からも理にかなっているのです。
というわけで、夏休みから受験期の学習計画を立てる際に、参考にしてもらえるとうれしいです。