さて、第二回目は志望理由書の書き方についてです。これをもとに面接がなされ、それによって評価が決まるわけですから、面接の質問事項と、あなたに対する関心がここで決まると言っても過言ではありません。
今回はやってはいけないことでまとめてみました。
考えてみればわかるのですが、これは必ずしも大学受験だけでなく、その後の就職活動も含めたさまざまな局面で生かせることです。「デキル」あの人は、こんなことをわざわざ読まなくてもできてしまいます。ちょっとしたことで差がつくんですよ。
- なんとか字数をうめたい・どこの大学でも同じものを書きたいと思う
- その大学ならではのことを書く。どうして〇〇大学の〇〇学部なのかを書く
- 大学の魅力を書く・やりたい研究室や科目を書く
- 自分がその学問に魅力を感じた「きっかけ」を書く
- 「興味がある」ことをアピールする
- 難しいことを具体的に書いたら面接で突っ込まれるから、できるだけぼかして書く
- 自分をクラブや行事など、学科に関係のない性格で褒める
- コミュニケーション能力がもめない力だと思っている
なんとか字数をうめたい・どこの大学でも同じものを書きたいと思う
まず、これがだめなのは当たり前ですね。
志望理由書は「自己アピール」ですから、無限に書きたい、ぐらいでないと受かりません。相手に選んでもらうのに、書くことがない、なんていうのは最悪です。まず、書くことがないなら、書くことができるように何かをしなければいけません。
また、相手の好みを知ることが大事です。「アドミッションポリシー」ですね。もちろん、似たような学科を志望する場合、その大学がたまたま同じアドミッションポリシー=好みであることもあるでしょう。それなら、同じ志望理由書が使える可能性もあります。でも、そうでないなら、相手の好みに合わせてアピールするところの軽重を変える必要があります。
その大学ならではのことを書く。どうして〇〇大学の〇〇学部なのかを書く
よく学校の先生がこういう指導をしますが、まったくいりません。こんなことの本心は…
- いい大学=偏差値が高くて人気があるから
- 就職とか見栄えとかがいいから
- 家から通えるから
- お兄ちゃんとか先輩とかが行っていてよさそうだから
- オープンキャンパスの印象がよかったから
とか、こんな感じになります。字数のムダです。
大学は、確かにそれぞれ個性がありますが、あなたは一人。そして併願をかけるのも事実。どこにいっても、あなたはあなたとして、力を発揮する。
その大学でなければならない理由なんてない。
「え~、それでいいんですか?」
その大学ではじめてものになる人
どこにいっても力を発揮する人
大学がほしいのは後者。だから、大学をほめる必要なんてないんです。選んで、受ける時点で十分。もちろん、どんな大学か知らないのは論外ですが、わざわざ書くことではありません。
大学の魅力を書く・やりたい研究室や科目を書く
さっきの項目をちょっと気を利かせて、大学の中身に触れる人もいます。
- やりたい研究室がある
- 魅力のある学科がある
- そこにしかないプログラムがある
- 魅力的な先生がいる
などになります。これも問題。
相手は、あなたがどういう人かを知りたいのであって、「私(大学)を特別だと思ってくれる人」をとりたいわけではないのです。
もう少し、厳しくいうと、いくら研究室やプログラムを書いても、書けば書くほど、「私は何もできない人ですけど、そういうプログラムや授業や研究室を通じて、私をすごい人にしてくれそうなんで選びました」と書いているように感じます。
その学科や研究室やプログラムは、確かにすばらしいかもしれませんが、「それをすごいと思う人」や「それを受けたい人」というのは当たり前で、大学がのぞんでいるのは、「それを通じてどのような人間になるのか」「何のためにそのプログラムが必要なのか」です。
魅力的な先生、というのも厄介。いなくなってるかもしれませんし、学内で主流派でないかもしれませんし、面接官はその先生を嫌いな人かもしれません。(実際にあった話です。面接の冒頭で「あ~、〇〇先生のとこね、ふ~ん。」で終わってしまったなんてこともあるんです)
要は、自分の問題、自己アピールですね。
自分がその学問に魅力を感じた「きっかけ」を書く
よくいわれるのが動機です。これを「きっかけ」と読み替えると痛い目にあいます。
- こどものころにおじいちゃんがなくなって看護師にあこがれた
- 幼稚園のころから車が好きだった
- ずっとアメリカにあこがれていた
こんなことで、それぞれ大学に入れるでしょうか。
同じくらいだったら、小学生から看護師になりたい人をとって、中学生からなりたいと思った人を不合格にする…そんなことがありますか?
こんなきっかけや志望の長さ、なんていうのは、今のあなたになんら関係はないのです。動機やきっかけなんていらない。
いるのは、ただ、今のあなたが何をやりたいか。それが動機なのです。何を実現したいか、そのために何をする予定なのか。それが、あなたの志望動機なんです。
「興味がある」ことをアピールする
興味がある、なんていう表現はいりません。興味があるのは当たり前で、受験生全員だからです。
この場合、
「興味がある」=「興味があるけどまだやっていない」
という印象になります。
よく、「興味があります」という人に、「じゃあ、何か関連する本とか読んだ?」と聞くと「忙しくて読んでません」というような人がいます。
その程度の「興味」だということです。
「あなたが進もうと思っている研究をわかりやすく説明して」と聞くと、「わかりません。興味があるだけなので」と答えたり、「ロボットをやりたい」という人に「どういうアイディアでそれを実現するの」と聞くと「まだわかりません」と答えたりするのも一緒です。
「興味があるだけで、何も知らないし、行動していない」
ということです。
少なくともこんなことを志望理由書に書いてはいけません。書くのは「知っていること」です。
「興味がある」ではなく、
「〇〇について、〇〇の観点から〇〇を〇〇のように実現したい」
ぐらいのことを書かないといけないんです。
難しいことを具体的に書いたら面接で突っ込まれるから、できるだけぼかして書く
当然、相手は専門家です。専門家に知ったかぶりをして、また、上から目線で書くようなものは困ります。
しかし、そんなことを言い訳にして、できるだけ専門的なことを書かないように、ぼかしてぼかして書いたらどうなるでしょうか。
相手は、あなたが大学で何をしようとしているのか、ほうっておいてもやる人間なのかをチェックするわけですから、志望理由(動機、ですし、それは大学でやること、ですし、それは学習計画ですね)について必ずつっこんできます。
ぼかせば、何を聞いてくるかわからない。
しかし、ある程度、しぼって具体的に書けばどうなるでしょう?
(こいつ、偉そうなこと書いているけど、本当に知っているのか?本を写したんじゃないのか?先生や親に言われたこと書いてんじゃないのか?)
なんていう心理から、
「じゃあ、具体的に説明して」
とか
「化学的には何が問題?説明して」
とか
「〇〇っていったけど、〇〇ってどういう課題がある?」
とか来るに決まってるんです。
こうなればしめたもの。あなたはあなたの専門的なことを聞いてくる。つまり、質問をコントロールできるわけです。あなたが書いたことを確かめるということは、あなたが質問を決めている。なら、答えは用意できる。その答えでされる質問も予測できる…ということですよね。
自分をクラブや行事など、学科に関係のない性格で褒める
ここまで自分のやりたいことや大学での学習計画が語れれば、その他の面も「意外な一面」になりますが、
- 志望したきっかけを書く
- その大学ならではのいいところをほめる
- 大学でとりたい授業や入りたい研究室を書く
というような展開で入ってくると、クラブや行事を書かれても、「うちの学科、野球やるわけじゃないし」ぐらいで読まれてしまいます。
あくまでも、大学は、その学科で何をしたいのか、学問を通じて何をなしとげるのか、を知りたいのであって、あなたという人間そのものが知りたいわけではありません。この部分は書いていけないのではなく、あくまでもサブの部分だということです。
コミュニケーション能力がもめない力だと思っている
最後に死ぬほど見るのが、
- コミュニケーション能力がある
- 協調性がある
という二つです。みんながアピールするというだけなら、まだ害はないのですが、たいていの場合、これは、
「もめない力」「うまくやる力」
として書かれています。
大学がほしい人材は逆。
「もめる力」「摩擦を起こす人間」
です。
もめるのは、「自己主張」をするから。そして「自己主張」とは「自分がある」ということです。
もめないのは、「自分がない」から。
そんな人を推薦入試でとる必要はありません。
強いチーム、素晴らしい集団は、それぞれの「個」があります。アピールすれば、ぶつかります。もめるわけです。みんなが主張して乗り越えた時に、いいものができあがる。これをコミュニケーションと呼ぶのです。
自分の意見を聞かれても、「いや特に…」と答えず、もめていたら「まあまあ、まあまあ…」とその場をおさめ、「だから、〇〇したいんだ」「いや▽▽でしょ」という二人の意見も理解せず、「まあまあ、どっちでもいいじゃない」という人がいたら、ふざけんな、と思いません?
私が1と主張し、A君が10と主張する。B君は「まあまあ」と言って「じゃあ、5」とまとめる。私はA君は認めるけれど、B君は認めません。A君は信念で10だし、私の1も聞いているけれど、B君はただ間をとっているだけで、5と主張する、それは私の1を聞いていないのと一緒です。じゃあ、B君が100と言っていたら50なのか?私がマイナス10と言っていたら1なのか。これは私の話を聞いていないのと一緒。
こんなことにコミュニケーション力があるなんて思ってはいけません。
コミュニケーションとは、「主張して、もめて、それでもなんとかまとめていく力」です。
以上です。要は、「自分のことを書く」「自分が将来社会でなしとげたいこと」「そのために大学でどのように学ぶか、課外活動もふくめた計画」「そのために今までに自分がやってきたこと、挙げた成果」ということが大事だということです。
では、今日はここまで。