2019年も、入試動向を分析する時期がやってきました。予備校の分析会から2020年度大学入試の動向を考えていきたいと思います。
今年も、秋が深まってくると、各予備校の分析会がはじまっていき、受験生は志望校や併願校を検討することになります。
今年は、もともと来年に起こるはずであった入試の大きな変更を敬遠して、「安全志向」になることを予測していました。
実際には、一番やっかいであったはずの、英語4技能外部検定の義務化が周知のように見送られたこともあり、その意味では、センターが共通テストとなって、記述が入ったり、平均点が下がったりする以外はたいして変わらないのかもしれませんが、すでに推薦入試の選択など、「安全志向」をもとに選択がされていますし、早稲田政経に象徴されるように私立大学の入試変更も今のところ多く予定されています。また、何より、この入試に関わるどうなるかわからない不透明さを考えると、一気に「安全志向」が解消されていくとは思えません。
というわけで、こうした「安全志向」の入試を模試の志願動向などから分析していきたいと思います。今日は、全体的な概要になります。詳細な分析は、次回以降にしたいと思っています。
- 「安全志向」の年は、第一志望へ合格するチャンス!
- 全体の受験者、志願者は減少傾向にある!定員管理はほとんど落ち着いている!
- 志願者減少は、推薦の影響?だとすると…推薦入試と一般入試の定員の関係
- 系統別の動向~「安全志向」の結果、国際系の他、法学など人気の反動現象が。理系では医療系・農学系が落ち込み、理学の人気回復傾向が見える
- 全体的な動向は?~国立は、東工大、一橋大が減少、私立では、早慶上智MARCHで減少。それ以下から徐々に激戦に。
「安全志向」の年は、第一志望へ合格するチャンス!
なかなかそうは思えないかもしれませんが、指導要領の変更など、入試が次年度に変わるということがわかると、受験生は浪人できないと考え、今年のうちに決めたいという心理が働きます。
これを「安全志向」と呼ぶわけですね。
こうなってくると、「推薦が人気になる」「一人が受験する学校数が増える」「1ランク落として受験する」などの状況になります。
なんとなくですが、こうした要因を見ると「受験が激化する」というイメージがわいてきますが、実は過去を振り返ってみても、「安全志向」の年ほど、強気でいくと成功する確率があがるんですね。
簡単に原理を書くと、A判定とかB判定の人は、安全志向であってもそれを下げる必要はあまりない、ということなんです。
安全志向の年に起こることは、C判定の人が1ランク下げてB判定以上のところに出願をしたり、D判定やE判定の人が逆転を信じて最後までがんばることをやめる、ということなんですね。
「安全志向」である以上、普通だったら受けない受験層が、自分が逆転して受けたい大学におりてきてしまいますから、なんだかレベルアップするような気がしません?でも、本当にそんなことが起きたら、MARCHが早慶なみの難易度になり、日東駒専が、MARCHなみの難易度になる、なんてことが起こるはずで、そうなるとわかると思いますが、早慶ってどんな難易度になるの?ってことになるわけです。優秀な受験生がどっかから湧いて出てこないかぎり、そんなことは起きないんです。
つまり、現実にはありえない、実際にどの層でも同じように「安全志向」が起こると仮定しても、次のようになります。
- 最難関では、不合格するかもしれない層が受験しないため、合格ラインが下がり、その人たちが1ランク落とす。
- 難関では、最難関を敬遠した人たちが受験をするが、その中にはもともと受験する人たちもいるはず。他の受験生がまったく動かなければ、それでも合格ラインは必ず上昇するが、実際にはもともと不合格の層だけでなく、合格する層も受験をやめて1ランク下に落とすので、絶対に合格ラインがあがるとは限らない。
- 中堅でも、難関を敬遠した人が受験してくるが、その中にはもともと受験する人もいるはずで、それでも上位は確かに増えるが、同様に合格するかわからない層が受験をやめるという現象も起こってくる…
という感じなんです。もちろん、こんなきれいにはいきませんけどね。
でも、一般論としていえることは、合格者が1ランク上の受験者だけで占められるような、人気が突然出たような現象が起きない限り、もともと滑り止めで余裕で受かる人たちはちょっと増えても、最後のイスを争う受験生は「受からないからやめる」となる確率が高く、結果、逆転はしやすい年になるんです。下手すれば、C判定ぐらいの人も受験をやめてくれますからね。
これ、実はセンター試験が易化するか難化するかと同じ話です。
昨年2019年度入試のように、センターが易化して、平均点が上がると、期待していた得点がとれてしまう。だから、本当はボーダーも上がるのに、得点が取れたからみんなそのまま出願してしまう。結果激戦となり、二次で逆転のしにくい年になる。
逆に、センターが難化して平均点が下がると、みんな目標点がとれないので、敬遠して1ランク下に出願したりする。そういう年ほど、二次の逆転がしやすくなるんですね。
あくまでも一般論で、大学とか学部とか併願関係とかによって、いろいろですから、絶対なんてことはないんですけど、全体傾向としてはそうなんです。
したがって、安全志向であるということは、逆転のチャンスということです。
もちろん、この話は、D判定やE判定の人が無条件で受かるというようなことではありません。D判定やE判定の人が、まずはC判定の実力ぐらいまであげないとどうにもなりません。で、そういう結果を出せる実力がついたときに、強気出願の年、つまり、C判定の人やD判定の人がごっそり残っている年と、弱気出願の年=安全志向の年、つまり、Cとかの人でさえ受験をやめてくれている年では、逆転する可能性があがるということなんですね。
今年は全体として、こういうチャンスの年であるとはいえます。
もちろん、これらは全体的な話であって、本当にどうなるかはその他もろもろの要因もありますから、全部の大学に言える話ではありません。また、そもそも実力がD判定のままだとするなら、受かるためにはその大学がレベルダウンするしかないわけで、おそらくそういうことは起きません。
その程度の話であるとは思ってくださいね。
全体の受験者、志願者は減少傾向にある!定員管理はほとんど落ち着いている!
さて、では、今年の動向について分析していきましょう。
まずは、全体的な受験者数、志願者数です。子どもの数はわかっていても、実際に大学受験をしようとしている生徒がどの程度いるかというのは、模試動向をみないとわかりません。しかも、既卒生がどの程度いるかということも、模試ではじめてわかるわけです。
当然のことですが、少子化の影響が続いていく中、受験生は減少に向かうはずです。大学入試が定員厳格化の影響で「難化」したことは間違いありませんから、それによって、多くの浪人生が出た、という可能性もあるわけです。
さて、実際は…ですが、既卒生含め、志願者は間違いなく減少に向かっています。つまり、高3生は減り、既卒生も減少傾向にあるということです。
ですから、さらなる定員管理や「定員縮小」のような施策をうたない限り、今後も大学入試は易化していく傾向にあると考えられます。
実際に国立と私立にわけて志願者数を見ていくと、次のようになります。
国立大学 推薦の拡大の影響か、志願者は減少傾向に。
まず、国立大学を見ていくと、全体が減少している中、私立に比べて減らしています。おそらく、「推薦入試やAO入試の受験を考えたために模試の志望校に書かなかった」、あるいは「こういう優秀な層が私立の指定校推薦を決めた」、「そもそも安全志向であるために5教科7科目を敬遠して確実に合格を取りにきた」などの理由が考えられると思います。いずれにせよ、国立の志願者は、全体動向より微減にあります。もちろん、ほぼ前年並みということもできますが、そもそもの志願者減の傾向にさらに減っているわけですから、全体としてはだいぶ受かりやすいイメージになると私は思います。
私立大学
一方、私立大学は、全体動向に比べて、微増です。それでも全体の志願者が減っていますから、前年から見れば減少。全体の基準から比べると、国立より私立に集まっているということになります。
安全志向になれば、科目負担などもありますから、より確実に合格をとろうと私立大学にシフトする、ということなのかもしれません。
あくまでも、全体動向を基準とすると、国立より私立に集まったという程度のことなので、前年比志願者微減であることを考えると、難化するというようなことではないと言えます。
定員管理はほぼ落ち着いている!これ以上の絞り込みは考えにくい。
さて、もうひとつの要素の私大の定員厳格化の話です。
とりあえず、1.0倍に移行するというのは、なんとか据え置かれて、元には戻っていないんですが、私学助成がなくなるラインだと学校規模に応じて、1.20とか1.10、学部新設ができないラインだと、1.15、1.10、1.05なんていう感じになっています。
で、さらに、定員を下回った場合には、補助金の増額なんてのがありまして、これがすごいのは、0.95~1.0だと、4%アップ、0.9~0.94だと2%、0.89以下でも、1.0以上でも、0%です。
なんだか、定員をちょっと下回るモチベーションが出てしまいますよね。そもそも、1.10は越えられないし、だから、できるだけ1.0に近づけたい。でも、それだったら、ちょっと下回った方が得かも…みたいな感じです。
事実、チェックしてみると、ほとんどの大学が定員管理に成功しています。早慶は1.0をちょっと越えたところでまとめていますが、MARCH理科大あたりを見ると、むしろ、ちょっと足りないくらい。いろいろな大学を見ていくと、「もしかして、1.0を取る気がないのかな」とか「前年オーバーしてたから絞らざるを得なかったんだな」とか「見えること」が結構あります。
自分の志望する大学や学部が今年、合格者をどうするつもりなのかは案外こんなところからも見えると思います。
さて、東洋大ですが、きれいに「1.0」が並びます。つまり、ほとんどの学部が定員ぴったり、ということです。これを可能にしたのは、悪名高い「繰上げ合格」のシステムですね。昨年、東洋大は正規合格を1000名ぐらい減らして、その分4420名の繰上げ合格を出しました。じゃあ、正規合格減らすなよ、と言いたいですよね。大学からすれば、「リスク管理」なんでしょう。足りない状態を作って、埋めて、1.0にする。これで補助金増額狙いで「0.99」でとめたら、悪意を感じますけど、一人でも多く補欠を繰り上げようというところはせめてもの誠意でしょうか。
まあ、でも、これが今の大学入試だと言えます。
ともかく、数年前に吹き荒れた定員厳格化によって起こる私大難化は、少なくとも継続する状況にはないといえます。あ、安全志向による激化は別の話ですからね。
志願者減少は、推薦の影響?だとすると…推薦入試と一般入試の定員の関係
さて、先ほどから言っている全体の志願者減は、どうして起こっているのでしょうか。
普通に考えて、これは少子化の影響以外はありません。まず、これがベース。受験生の数は、子どもの数と受験率によって決まるわけですから、少子化と大学受験を考える率によって決まるわけです。
そう考えていくと、どんなに定員管理で一時的な入試の難化が起こり、それによって、各大学の競争の激化、そしてレベルアップが図られたとしても、必ずそれは解消していき、数年後、あるいは十年後にはまた元のような状態に戻ると考えられます。
その間に、新指導要領、先延ばしされた4技能の問題である2024年を迎えるわけですが、一時的な入試バブルの中で「どうやって優秀な生徒を確保し、どうやって育てるか」ということを考えない大学は、結局、淘汰されていく気がします。
つまり、まじめな大学は、「少ない受験生の中からどうやって学習意欲の高い受験生を確保するか」というところにいくはずです。今回、期せずして「センターで十分じゃない?」みたいな声があがりましたが、それはあくまでも「基礎学力を見るものとして」です。まして、共通テストから、あの程度の記述や四技能も見なくなるのなら、私立大学であっても、「どう選抜するか」を工夫しないと「いい学生」を確保できなくなるわけです。
慶應は変えないけど、もともと小論文。早稲田も政経は変えたし、上智も論述重視。たぶん青学もこの方向。立教は、どっちかというと「基本的なことだけやってればいいよ」という方向かもしれません。どんどん受験生が減っていく中で、どういう教育をするのか、そのためにはどう選抜するのかが問われるわけですね。
戻ります。
少子化だけが、志願者減少の理由でしょうか。これはあくまでも模試受験者の動向からの割り出しです。どうして、模試を受けなかったのか?
もしかして、すでに決めているから、なんてことはないでしょうか。つまり、指定校推薦を決めた、とか、付属校であれば、内部推薦に決めた、とかそういうことです。
AOとか公募推薦の場合は、受かるとは限りませんから、たぶん模試をやめる動機にはなりません。でも、指定校とか内部推薦ならきっと模試を受ける必要がなくなります。
もちろん、こんな数字は微々たるもので、受験生全体の数字に比べれば大きく志願者を左右するものではありません。しかし、多少なりともこうした受験生が増えているとすれば、これは必ず一般入試の定員に影響するわけです。
安全志向になれば、指定校推薦は増えます。付属であれば内部推薦を考える率もあがるでしょう。AOや公募推薦であれば、合格者は定員通りで切ることもできますが、指定校はなかなかそうできませんし、内部推薦も学校の規定によっては、ただ増やすしかないところもあるでしょう。
そこで確保されてしまった合格者の分は、結局、一般入試にしわ寄せがいく形になるわけです。定員厳格化がある以上、なかなか一般でもとる、というわけにはいかないんですね。
というわけで、データに見える程度のことではないと思いますが、それでもおそらく模試受験者が減ったところにはこうした生徒がいると考えられ、そしてその合格者分は、数倍の一般入試合格者の減少という形で実をむすんじゃうんですね。
というわけで、全体として受験者減少を歓迎しつつ、でも、目に見えない合格減の可能性も指摘しておきたいと思います。
ちなみに、昨年の入試のまとめはこちら。
AO・公募推薦などについては、
- 国立は、志願増、合格増で倍率は同じ。実質、若干の易化と考える。
- 私立は、志願大幅増、合格微増で、倍率上昇で難化。
です。
国立大学の場合、指定校推薦というのはほとんどないはずです(首都大など公立はあることを知っていますが、国立は聞いたことがありません。不勉強なので制度までは理解していません。すいません。)ので、公募やAOなどをもともとの定員として選抜するわけですね。
しかし、私立大学の場合、まず、先だって指定校があると思われます。(大学や学部によっては実施していないところももちろんあります。)これが曲者。これは、前年までの実績をもとに、各高校にまいているんです。したがって、「このぐらいまいとくと、このぐらいくるはず」というような予測でやっているはずなんです。ところが、こうして安全志向が働くと、「思っている以上に来ちゃった」ということになるわけです。
となると、どこかの定員を圧迫せざるをえない。
受験生の方は、安全志向のつもりで、AOや自己推薦、公募推薦などに出しますが、すでに指定校でオーバー気味だとすると、ここで増やすわけにはいかない。だって、そうしたら一般入試をさらに圧迫するからです。
私大からすれば、
- 指定校は高校との約束だからオーバーしても合格させるしかない。
- 一般入試がどんどんレベルアップしているから、合格はちゃんと出したい。
- となると、AOはよほどいいやつじゃないと、合格を出さなくてもいい。
みたいな図式になりかねません。
もちろん、大学の序列が下になってくると、
- 早めに入学者を確保して、定員確保の不確定要素を少しでも減らして、一般入試を迎えたい
ということもあるかもしれませんが。
昨年の状況だと、女子大がおそらく、推薦でとりすぎて、一般を圧迫しました。それを失敗ととらえているのか、それとも予定通りなのかは、私にはわからないところですが…。
いずれにせよ、「少子化だから大学入試はどんどん簡単になる」というのは全体の話であって、いい学生をとるために大学は入試を早期化し、そうなるとそれが加速するというのは、今後の間違いのない方向だと思います。
そのとき、「センターのままでいいじゃない」というのが本当なのかどうか、私は正直不安です。
系統別の動向~「安全志向」の結果、国際系の他、法学など人気の反動現象が。理系では医療系・農学系が落ち込み、理学の人気回復傾向が見える
さて、前置きが長くなりましたが、徐々に今年度の傾向を分析していきたいと思います。
一言でいうと、安全志向の結果、昨年の人気系統が反動的に落ち込む、というような状況が見て取れます。
たとえば、昨年の同時期の分析がこちら。
たとえば、「文高理低」なんて言葉がここ数年続いていました。私は昨年の段階で「止まった」と書いていたわけですが、全体としては「文高理低」だったわけですね。
しかし、安全志向の今年は予想通り、「低い」理系に集まってくる。
理系は医療系はともかくとして、工学部前年並み、理学部アップ、農学系も私立は前年なみに踏みとどまりました。
理学部は、やはり盛り返してきていたとはいえ、ここ数年工学部におされていて3年前ぐらいだと明らかな狙い目系統でしたから、こういうところに人が集まってくるわけですね。薬学部は昨年に続き不人気系統へ。徐々に薬剤師の実態も受験生に伝わりつつあるのかなとも思います。
文系を見ると、国際系がどんと落ち込みます。さらに法学部。ここ数年法学部は復権していたはずなんですが、こういうところでも受験生が、少しでも不人気系統に動こうという感じが見てとれます。
しかし、特に私立文系に限ってみた場合に、すごく人気系統があるわけではないんですが、人文、語学、経済・経営、社会科学と、全般的に全体動向よりプラスなんですね。
つまり、易化はしない。前年よりは微減ではあるものの、全体が微減でそこと比べるとやや上にいる。そうなってくると、やはり「理高文低だから、文系は狙い目」なんてことはまったくなく、昨年同様、私立文系は厳しい戦いが続くということのようですね。
つまり、人気系統が下がっただけで、横並びの状態に近づいていく。
安全志向の状況で、上を敬遠して下を厚くするのと同様に、学科系統でも人気系統を敬遠して、不人気系統を志望する…結果、均質化して、受かる奴は全部受かって、落ちる奴は全部落ちる、というような入試になっていくようです。
全体的な動向は?~国立は、東工大、一橋大が減少、私立では、早慶上智MARCHで減少。それ以下から徐々に激戦に。
さて、それでは全体動向を見ていきましょう。詳細な分析については、次回にしたいと思いますが、国立、私立に分けて、ざっくりと見たいと思います。
国立大学~東工大、一橋大の受験者が減少気味。チャレンジ層が各大学から消える。ただし、国立受験は、センター後の「アナウンス効果」ですべてが変わる。
まず、国立大学全般ですが、
- 難関10大学で微減
- 横浜国立・筑波・千葉などのブロック大も微減
- そのほかの国公立は微増
ということで、そもそもの傾向が明らかに安全志向です。
難関10大学、旧帝大+東工大、一橋大、神戸大を分析しても、学部による差はあるものの、集まっているのは、東大と九州大ぐらい。
苦戦をしているのが、東工大、一橋大、名古屋大、東北、北海道といったところ。
これを見ても、さすがに東大を受ける層はそのまま行くけれど、その下になると無難に地元大学を受けるということなのでしょうか。
詳細なデータがあるわけではないのでわかりませんが、比較的どの難関10大学にも高偏差値の生徒が前年に比べてとどまっている、というのがこの中身のようです。
つまり、
- 高偏差値の生徒は、東大や東工大を狙わず、地元難関大を狙う。
- 地元難関大のチャレンジ層は、概して減少気味。この層は、地元ブロック大を狙っている。
ということのようです。しかし、地元ブロック大でも、チャレンジ層は減少気味で、地元大学を狙っている…というようにシフトしているようですね。
ただし、国立大の動向は、常に「アナウンス効果」との戦いです。
- センター試験までは東大を志望している。
- ちょっと失敗する。
- こういう情報を見ると、東工大や一橋大が狙い目だと書いている。
- じゃあ、そこに出そうかな。
- 蓋をあけたら、東工大や一橋大が超難化。
なんてことは、本当に起こりそうなのが今年です。そもそも受験生は、受かりやすいところを探し回ってる匂いがプンプンしますからね。
というわけで、国立志望者はこういう情報を持ちつつも、慌てずに志望をしっかり決めて対処することが大事。
特に、センター終わってからが勝負ですから。
私立大学~早慶上理MARCH日東駒専まで、志願者減の傾向強く、チャレンジ層が消えている。ただし、その下になると志願者が集まっていく。センター利用は敬遠傾向。
さて、私立大学です。
昨年の段階で、
- 早慶上理MARCHレベルは、志願者減合格者増
- それ以下になると、志願者増合格者微増
という形になっていました。
特に日東駒専以下が非常に厳しく、日大をのぞいて難化したイメージが強いと思います。
志願者動向は、早慶上理MARCH東駒専まで減少傾向
今年ですが、
- 早慶上理…志願者減
- MARCH…志願者減
- 成城政経武蔵明学…志願者減
- 日東駒専…志願者減。ただし、日大は前年並
- 大東亜帝国…昨年並み
という模試の志願状況です。
全体が志願者減ですから、そこと比較したときに厳しくなっているのは、大東亜帝国あたりから、ということになります。日大は昨年同レベルで一人負けの状態でしたが、今年はそのままか微増という形です。
どのレベルでも、チャレンジ層が敬遠傾向。上位者は滑り止めを増やす傾向。
もう少し、全体動向を見ていくと、
各レベルとも、
- おそらく合格するだろう上位者が増加
- 合格するかどうかわからないチャレンジ層が減少
という傾向が見てとれます。これが、いわゆる安全志向というやつですね。最初に説明したことですが、上位者が合格をして、そこで合格ラインが埋まったり、実際にその上位者が進学をするとなれば、それは大学自体のレベルアップになるわけですが、本当にそんなことは起きるでしょうか。
なぜなら、上位大学の志願者数はそもそも減であるとするなら、そもそもの倍率が減っていますから、受かりやすくなるわけですね。
つまり、早稲田を狙っている、順調に行っている上位者は早稲田に結局受かりやすいはずです。だとすると、この安全志向で受けていた、MARCHも日東駒専も結局は進学しない。こういう法則が成り立っていくと、結局、妥当な受験者とチャレンジする受験者で最後のイスを争っていくわけですが、この競争が緩和されることが予想されます。
しかし、この下になってくると、そもそもの倍率が高いわけですから、この最後の競争の倍率も緩和されていない。
というわけで、ある程度力をつければしっかりと上まで狙えるし、力をつけていないとすれば、ひどい目にあうというのが、安全志向の年の入試になります。
センター利用は敬遠傾向に。
今日の最後は、安全志向のもうひとつの面です。センター利用の敬遠傾向が顕著なんですね。
これは上から下まで、というか、慶応や上智はセンター利用がありませんから、中堅以下が中心になっていくわけですが、いずれにせよ共通して見える傾向です。
これは、昨年センターの問題が易化して平均点があがったこと、安全志向の中で「滑り止めをセンター利用でとりたい」という心理が働いたことにも起因していると思います。
結果、
- MARCHは90%
- 日東駒専は80%以上
- 大東亜帝国でも70%越え
となってしまいました。
こうなってくると、センター利用で合格をとるなんていうのは夢物語。「とりたい」という気持ちはわかりますが、「90%なんてとれないよ、とれるならMARCHは滑り止めだよ」ということで、早稲田や慶応を狙わない層にとって、センター利用はかなり厳しいものに見えているんじゃないでしょうか。
たとえば、青山学院なんていうのは、センター利用とか全学部とかの定員の問題もあって、一般勝負の大学だと私は思っているんですが、昨年のような結果が出て、そして、安全志向でなんとか受かりたいと考えはじめると、ようやく「受けても仕方がない」というところに落ち着くんじゃないでしょうか。
でも、これは本来逆です。このまま行けば、間違いなく難易度は昨年より下がります。
だから、例年同様、「センターで第一志望合格」というのは、よほど「一般入試の形式に合わない」とか、「理系で数Ⅲ間に合ってません」とかじゃないと難しいとは思いますが、「滑り止めをセンターで確保」というのは、少なくとも昨年より可能な状況になってきていると思います。
数年前のように、立教の3科目が80%程度、というようなレベルまでは下がらないまでも、異文化コミュとか経営とか社会とかじゃなければ、90%は行かないような気がしています。
もし仮に、ここを昨年のまま渋く出したとすると、全体的な志願動向、つまり志願者減ということを加味すると、最終的に一般入試が緩くなる、というところにつながることになると思うんです。
今日は、この辺で。
次回は、私立を中心にもう少し大学別の状況や2021年に向けてを書いてみたいと思います。
併願校の決め方はこちら。