2020年2月18日現在の国公立大の倍率速報から見えることを考えます。国公立前期入試直前の2020年度入試の志願状況の分析です。
私立大学の入試も中盤に入ってきましたが、国公立の出願も終了し、倍率が見えてきたことだと思います。
全体状況の分析もされはじめました。
なお、国公立の成績な倍率は20日に発表とのことです。このページの各大学のデータは、上記の週刊朝日と現時点の東進の倍率速報にあがっているデータですので、もしかしたら、今後更新されることがあるかもしれませんのでご了承ください。
全体動向は倍率減に~安全志向と平均点低下
まずは全体傾向です。
週刊朝日の数字によると、
- 国立前期…前年比95
- 国立後期…前年比94
- 公立前期…前年比94
- 公立後期…前年比92
- 公立中期…前年比100
です。
やはり、もともとの安全志向に加え、センターの平均点低下が拍車をかけた感じでしょうか。やはり全体的な敬遠傾向が見てとれます。もともとのセンター試験の受験者数も減少ではありますし、そもそもセンター試験の受験者数がそのまま国立の志望者数ではありませんから、どの程度が受験後に受け控えたかはわかりませんが、数字だけ見れば、「そもそも安全志向から科目を減らして私大志向になっていた」か、「センターで失敗して希望の大学に出願しないという選択をした」か、のどちらかだろうと思います。
公立の中でも中期日程が昨年同様の数字です。昨年はこの日程が増やしていましたので、そこの維持。この日程に参加している公立大は、地方の私大が公立化した大学が多いのですが、前期、後期に加えて受験できますから、「安全」にこうしたやや合格最低の低い、しかも国立と併願できる日程には人が集まっているようです。
こういったあたりからも全体的な安全志向を見てとることができます。
もちろん、こうした数字の中には、指定校推薦やAO・公募などの影響もあるでしょうから、実際の私大や国公立の合格数がどう影響してくるのかはやや怖いところです。たとえば、東大も定員はとれなかったとはいえ、推薦での合格をやや増やしました。「やや」であってもその分は、一般入試で減らされるわけですね。
こうした推薦での合格者数の把握は現段階、私はできていないので、一般にどう影響を与えるのかは怖いところです。
系統別では、理工系の前年比99以外は文系や教員養成系、農学系など軒並み減少しています。
今年一年間、というより、昨年あたりもこの傾向は顕著でしたが、受験生が安全志向の中、受かりやすい系統を求めた、というような気がします。
私大の定員厳格化の中、特に難化したのが私大文系でした。明らかに「文高理低」であったわけです。これが昨年あたりから落ち着き出し、今年の動向では、受かりやすいところを受験生が探しているかのような動向を見せていました。
たとえば、理学部と工学部では、不人気であった理学部がより前年から増える、というような傾向です。農学部とか教育学部とかの不人気は継続しているような印象ですが、今年は特にそうした傾向が目立ったような気がします。
難関大学も倍率低下傾向~主要大学の状況
さて、難関大学です。
安全志向ということになれば、当然、倍率は低下傾向ということになるはず…という見込みではありますが、過去も「東大は別格」みたいなことがありましたので、果たしてどうなるか…ということではありました。
実際に入試のメインとなる前期日程を見てみると、
- 東大・京大…前年比96
- 東工大 90 一橋 93
- 北海道 101 東北 91 名古屋 94 大阪 99 九州 96 神戸 97
となっています。
やはり、東大、京大がそんなに減るような状況ではありませんが、しかし、それでも減少は減少です。最難関で受け控えが起こりました。
普通は代償で、東工大や一橋大などがあがるはずなんですが、それも起こらない。この2大学は今年1年間を通じて動向が振るわず、アナウンス効果が起きても不思議ではない状況だったんですが、最後まで低調なままでした。もしかしたら、このあたりの層こそ、私大とか指定校とかに逃げたのかもしれません。
で、実際に東北は減少したものの、地方大自体は首都圏に比べれば持ちこたえているような印象です。これを「地方に優秀な層が残った」と考えるなら地方大はそれほど易化しないことも考えられるでしょう。
やはり、首都圏の方が、「安全志向」の中、私大、指定校、国立他大など、選択肢が多いということかもしれません。
その他、主要大学を見てみます。
- 筑波大 理系では踏みとどまっている学科もあるものの、やはり全体的には減少傾向で、4300名と志願者が600名ぐらい減っています。
- 千葉大 全体では微減ですが、工学部と教育学部を除き、倍率は上昇。もしかしたら、上位者がこのあたりまでは下げてきたのかもしれません。確かに、首都圏で見ると、通える、通ってもいい、というある種のラインを受験生が引いたような気がします。だとすると、かなり厳しい戦いになるような気がします。
- 横浜国立 ほぼ前年並みの状況です。学部によって増減はあるものの、倍率そのものは前年なみです。
- 埼玉大・茨城大 両大学とも減少傾向。このあたりの受験層が指定校推薦などに回ったり、私大で安全に…と考えたりしたのかもしれません。数字だけを見るとチャンスに見えますが…
ざっくりと見ましたが、首都圏では難関でやや減少傾向が見え、その下の大学になってくると、受験者が前年並みとなり、さらに下はまた減少するという傾向のようです。ここだけをつなげてしまうと、難関で若干競争緩和、横国、千葉のランクで激化、その下ではやや易化…というようになるのですが、志願者数と実際の受験者はまた異なりますからなんとも言えません。
たとえば、本来、東大とか旧帝大とかを考えていた層が、センター試験問題の難化を受けて、思った点がとれず、出願を千葉にしたとします。
特に、今年は平均が下がっただけでなく、上位者ほど少なくなるような傾向でしたので、ありがちな話です。
でも、彼らに本来の実力があれば、私大では早慶あたりに入っている可能性もあるわけです。その場合に、実際に千葉に受験に来るのかどうか。
だから、正直言って、倍率だけでは何もわかりません。なので、気になるとは思いますが、あまり考えすぎないようにしましょう。
倍率と難度の関係はわからない…ただし、「逆転」が起きやすい年
倍率が下がったことは、難度、つまり合格ライン、合格最低点にどのような影響を与えるでしょうか。
そもそも、倍率と難度は一緒に考えることができないんですね。
だって、いくら倍率が下がっても、前年の合格ラインよりも上の層の人数が増えていれば、競争は激化します。たとえばセンターリサーチの、A判定、B判定の人がたくさん出していれば、いくら全体の倍率が下がっても、易化するとはいえません。
逆に倍率が上がっていても、上位者が減れば、難易度は下がりますし、国公立の出願が、センター直後に行われている以上、私大の結果で、受験に来るかどうかも変わってしまうわけです。
なので、こうした出願後から受験までの情報というのは、ほとんど役に立ちません。
書いている私が言うのも何ですが…。
ただ経験上、こういう安全志向の年、そしてセンターの問題が難化して平均点が下がった年は、逆転のチャンスなんですね。
要するに、ボーダー付近の人たちが薄くなることが多い。いくら上位が居残っても、その人たちは最初から受かる人なわけです。そこに勝つっていうのは、合格じゃなくて、上位合格ですから。
もし、逆転をしたいなら、「最後のイス」に滑り込むしかない。これが、合格最低点をとるイメージ。
その争いが緩和されるケースが多くて、結果、逆転が起きやすい年になります。
昨年のように、平均点が上昇すると、逆にそのまま突っ込んで、その争いがぶあつく、結局、最初にリードしていた人の中で二次もうまくやった人が受かることになるわけですね。
だとすると、その戦いをしっかり勝ち抜きたい。
今年は、去年より「逆転」という記事をたくさん書きました。
今年がそういう年だからです。
でも、あくまでも「逆転」であること。
つまり、ボーダーが下がるって言うのではなく、ボーダーが同じで、でも、その争う人数が少ない=倍率が低い、と考えるのが大事。
だから、あと1週間ですが、しっかり最後まであがいてほしいなあ、と思うんですね。
千葉とか横国とか、あるいは倍率が上がってしまった大学・学部を受験する人もいるでしょう。
でも、安全志向の年は、上位者ほど受験に来なくなります。だって、安全に出願しているわけだし、あなたの第一志望校だって上位者には安全にすぎないかもしれないわけだから。
だから、実際どうなるかはわからないけれど、最後のイスの争いは「ある」、そして、そこは「楽になる」と信じておきましょう。
でも、それをあなたは「逆転」で勝ち取る。だから、準備が必要ですよね。
もしかしたら、高い倍率を見て、めげて、「もう決まった私大でいいかな…」なんて思っている人もいるかもしれません。
そもそもそういう人だって出るのが、安全志向の年。つまり、あなたと同じように考える人が競争からおりてくれるかもしれません。
たしかに、私が書いたようになるとはかぎりませんよね。当たり前です。でも今は最後まで全力を尽くすこと。仮に結果が悪くて浪人するにしたって、最後まで全力を尽くすことが来年につながるんですよ。
後期入試もしっかり狙うことが重要!
さて、最後に、後期入試についてです。
たとえば、東工大や一橋を見ても、後期の倍率は維持、上昇しています。後期自体はどんどん減っていますから、難関大志望者が受験できるような後期の募集単位は、前期に比べて非常に難しいのは事実です。
千葉大ぐらいで見ても、前期の不合格者が合格するパターンがほとんど見られない(低いパーセンテージ、という意味です)んですね。
しかし、出願したとするなら、そして、その大学に行きたいなら、最後まで狙うべきです。
- 前期でいい大学を受かった人は後期に受験はできません。
- 私大でそこそこの大学を受かった人は、よほど思い入れがないと後期の受験はしません。
- もちろん、前期であなたと同じ大学を受けて、合格をとった人も受験にはきません。
- つまり、後期を受験する人は、前期も私大もふるわなかった人が中心です。
これは、難関大であったとしてもそう。
たとえば東工大とか一橋であっても、東大に落ちたか、前期で同じ東工、一橋に落ちたか、だから後期にくる。
少なくとも東大合格者と前期合格者はいない。
その中でも、早稲田とか、慶応とかとった人は「もういいよ、後期まで受けなくても。どうせだめだし…」なんて可能性もある。
そう考えると、センターの比率とあなたの得点にもよりますが、後期は競争が思ったよりなくなるんです。
まして、地方であるとか、定員が少ない学科なんて何が起こるかわからない。
定員が少ない、というのは、すごい優秀な人で占められて逆転の余地がない可能性もあるんですけど、みんながやめた結果、リサーチの予想を大きく下回る可能性だってあるんですから。
で、もう一度書きますけど、受験をやめる可能性が高いのは優秀な人ですから。
でもね、逆転するためには、あなたが準備をしなければ。たとえ、小論文や面接であったとしても、あなたを取りたいと思わせなければ。
苦しいですけど、最後まで粘って頑張ってください。あなたの近くの、学校の先生や塾の先生は、あなたが苦しくても頑張っていれば、最後まで手伝ってくれるはず。
そして、その経験はあなたを成長させるはず。
もし、これを読んでいるのが保護者の方だとすると「もうこれ以上、苦しませたくない。」とか「がんばって不合格、なんて経験、もうこれ以上いらない」とか思ったりすると思います。わかるんですけど、長い人生、しばらく経ってみると、仮にうまくいかない経験でも、そこに挑んだ記憶がきっと糧になると思います。
保護者の方が、弱気になるのはすごくわかります。でも、それって励ましではない。
「楽にしてあげたい」なんて、書いてみるとよくない言葉ですよ。
あとしばらく、戦っていきましょう!