今年の入試がそろそろ終わりを迎えることになりました。次年度以降の入試に向けての情報提供を前に、現段階での国公立、私立の2021年度入試(2020年入試改革)について、現状どのようになっているのか、考えてみたいと思います。
2020年度、今年の動向はこちら。
- 2020年入試改革~2021年度入試は何が変わるのか?
- 主体性入試の動向
- 共通テストと英語4技能外部検定
- 実際の入試動向~国公立
- 実際の入試動向~私立
- 私大入試は「今まで通り」と「論文型1・2科目」の2極化~もしかして中学入試のように午前・午後併願なんて形も?
- 2021年度入試改革については以下でまとめ直しました。
- その他の私立大学(立教・中央・明治)の動向は現時点でこちら
2020年入試改革~2021年度入試は何が変わるのか?
いよいよセンター試験も来年が最後となり、新高3生も、浪人した場合の「入試改革」を念頭に入れながら、受験生活をスタートさせることになるでしょう。
漠然とした「変わる」という不安は、全体として空前の「安全志向」へとつながる可能性が高いと思われますが、その中で正しい情報をつかみながら、自分自身が安全に行くべきなのか、安全に行くということはどういうことなのかをしっかり考える必要があります。
まずはこちらに一度まとめました。
今年もさらに大変、難化する入試‥2020年入試、私立大学の定員厳格化‥現高校生へ学年別アドバイス! - 学びの真似び(まねび) 「学び続ける人」になるために(教育と受験と勉強法)
- センター試験が共通テストに。国語と数学①に記述が出題されていく。また、複数解選択など、今までとは異なる問題形式も出題される。
- 国立大学が一律、英語四技能外部検定を義務化。とはいえ、どのように入れていくかは不透明。ちなみに方式は、高3になってからのみ、2回チャンスがある。発表はされていないが、結果を使うのではなく、「受験として受ける」と宣言して検定を受検。だから、高2までの成績は使えない。
- 学力の3要素(知識技能・思考力判断力表現力・主体性をもって他者と協働する力)を、どの入試形態であっても問う それにともない、調査書の形式を変更。学年ごとに6項目にわたる記載。調査書の上限がなくなり、いくらでも書けるように。大学はアドミッションポリシーに応じた生徒であるかの記載を求めてよい。
- 多様化した推薦、AOなどをまとめていく。学校選抜と総合選抜の2本立て。ただし、内容の統一ではないので、名称を2本にして、中身は現行とそうは変わらない。
- ePOATFOLIOが本格化。ただし、この運用は今年から始まっており、また、2020年に義務化されるわけでもない。
こんな感じです。ちなみに最後のe-Poatfolioはどうもうまくいっていないみたいです。そもそも、調査書がデジタル化されないかぎり入るわけがないし、一方で、主体性評価は「やる」って言っちゃってますから、これが運用されようがされまいが関係ないんですけどね。
なんだか、変わる、変わると言われてはいますが、実際どうなのか、というのを現時点でざっくりと、とはいえ、具体的にまとめてみたいと思います。
主体性入試の動向
知識技能、主体性、思考力といった学力の3要素をすべての入試形態、つまり、推薦もふくめてはかることになっています。
推薦でも学力試験が必須、ということですが、この学力試験というのは、英語の外部検定や小論文でもいいので、別に今までと変わらないよね、ということでもあります。むしろ、大学のトレンドとして、学力試験を課している方向です。指定校でも、英語外部検定を要求したり、形式上の学力試験や小論文試験が課されたりすることは必ず起こります。
それよりも、問題は一般入試に「主体性」が入るのか、ということです。大学の逃げ方は次の中のどれかになります。
- 一般入試でも、主体性評価をします!(どうやってやるの?)
- 推薦とかでやってます!(一般でやらないといけないんじゃないんでしたっけ?)
- とりあえず、書類提出はしてもらいますが、入試では使いません!(使わないといけないんじゃないでしたっけ?)
早稲田なんかが早々と3だと宣言しました。でも、使わないといけないんですよね?だから、怒られるか怒られないか、きっと様子をみながら進めるんだと思います。
事実上、私大一般入試でポートフォリオ的なものとか調査書の内容を得点化するのは、無理。調査書がデジタル化されればだいぶ話は変わりますが…。
現段階で得点化できるとすれば、今までの評定平均だけだと思います。まあ、これさえも、怒られないなら使いたくないというのが間違いのない本音でしょう。
今のところ、発表している主要私立大学は、ほぼ、「出願資格で得点化はしない」で統一されています。
つまり、事実上、今までと変わらない可能性が高く、たまにまじめな大学がちゃんとやったり、評定平均が得点化されたりする可能性が少し残っている、というところです。
共通テストと英語4技能外部検定
これについては、センターがなくなって共通テストになったところで、基本的には何も変わりません。
- 名称が変わる。
- 平均点は低くなりそう。
- 得点ははっきりと出る。
- 国語は記述が200点の外に出て、段階評価だが、得点換算は可能。
- 数学の記述は200点の中に入っている。今までと変わらない。
- 科目とかは、指導要領が変わるわけではないので、変わらない。
こんな感じです。
英語の外部検定に関しては、
- 大学入試センターが申告された3年になってから2回までの外部検定を管理して、受験した大学にデータを流す。
- 義務ではない。
- 国大協が必須とぶちあげたが、実質使わないところが多い。
という感じです。
となると、基本的には今までのセンターとあまり変化はないんですね。
実際の入試動向~国公立
以上のことを踏まえて、現状の各大学の動きをまとめます。
国立は、推薦と前期・後期になりますが、基本的に前後期を中心に書きます。
今までは、センター試験+二次試験で決まってきたわけで、その得点配分は大学によって違うわけです。さあ、これがどうなるのか?
主体性評価、共通テスト、国語の記述の扱い、外部検定の4つについて、まとめます。独自試験の情報は変えないかぎり、そのままです。で、このタイミングで変えるという情報を出してる主要大学はないです。
東京大学
主体性評価 ?
共通テスト 当然使う
国語記述 ?
外部検定 A2レベルだが、受けてなくても証明できればいい。
京都大学
主体性評価 ?
共通テスト 当然使う
国語記述 段階別に得点化して加点
外部検定 A2レベル。証明書でも可。
東京工業大学
主体性評価 ?
共通テスト 当然使う
国語記述 段階別に得点化して加点
外部検定 前期ではA2以上と30点の得点化(英語は150点分)
一橋大学
主体性評価 ?
共通テスト 当然使う
国語記述 使う。
外部検定 いる。
北海道大学
主体性評価 ?
共通テスト 当然使う
国語記述 段階別に得点化して加点
外部検定 検討中。共通テストの英語試験を得点化する。
東北大学
主体性評価 やらない。ただし、ボーダーで同点の時は、主体性評価と国語記述の高いものを優先。
共通テスト 当然使う
国語記述 使わない。ボーダーでは高いものを優先。
外部検定 A2レベルがのぞましい。
名古屋大学
主体性評価 ?
共通テスト 当然使う
国語記述 段階別に得点化して加点、ただし国語は200点に換算し直す。
外部検定 A2以上。
大阪大学
主体性評価 ?
共通テスト 当然使う
国語記述 段階別に得点化して加点
外部検定 A2以上。
九州大学
主体性評価 ?
共通テスト 当然使う
国語記述 使う。
外部検定 A2以上。
筑波大学
主体性評価 得点化50点分
共通テスト 当然使う
国語記述 段階別に得点化して加点
外部検定 使う。
千葉大学
主体性評価 ?
共通テスト 当然使う
国語記述 段階別に得点化して加点
外部検定 A2以上。
首都大学東京
主体性評価 使う。調査書を得点化
共通テスト 当然使う
国語記述 段階別に得点化して加点
外部検定 使う。二次の英語は廃止。
広島大学
主体性評価 ?
共通テスト 当然使う
国語記述 段階別に得点化して加点
外部検定 基準をみたしていれば、共通テストの英語をみなし満点
ざっとこんな感じです。
要は、主体性入試を得点化するのは数少ない大学。
センター+2次だったんだから、今後も共通テスト+2次で決まる。
2次や共通テストから英語をなくす、という判断はほぼない。首都大が二次ではなくしますが…
英語外部検定はほとんどが出願資格…
ということは、いくつかの例外はあるにせよ、一般的には、
- 共通テストの準備
- 今まで通りの、個別、2次の準備
- 英語外部検定はA2をとっておけばOK
といったところでしょう。要は変わらない、ということです。外部検定は必須になりますけどね…。
実際の入試動向~私立
じゃあ、私立はどうなんでしょうか?このことを理解するためには、まず、現状の入試がどうなっているかを知らないといけません。
なぜなら、昔と違って入試が多様化しているので、今の入試を知らない人は、要項見るだけで複雑だあ…と頭を抱えたくなるんですが、実は、今年でも十分複雑なんです。まずは、現在の大学入試を理解してもらいます。
これらは必ずしも見出しの通りにわかれるものではなく、いくかのものにまたがっていたりもしますので、一般的にいうことはできません。
AO・推薦
秋から冬にかけて行われる。小論文・面接などの他、英語外部検定などの力も求められるケースも増える。小論文といっても、英語や理数などの学科試験のような側面もある。
センター利用試験
センター試験の結果を利用して合否判定する。
科目数は3~7科目、また、別途個別試験を要求するケースもある。大学や学部学科によって実施していたり方式が違ったりする。慶応や上智は実施していない。早稲田は学部によって方式が異なる。明治は3~5の複数の方式で実施。立教は今年から3科目方式と6科目方式にしている。東京理科大は、個別試験を足している。
このように、さまざまな方式がある。
全学部統一入試
MARCH以下で多く実施されている方式。2月のはじめに、学部を越えて同じ入試問題、同じ日程で、試験を行う。大学ごとのセンター試験というようなイメージ。MARCH以下は、これと別に個別入試があるイメージ。
学科併願を認めない立教パターンと、複数の学科に出願することを認める明治などのパターンに分かれる。法政のT日程は、2科目入試。
個別入試
いわゆる従来にあった学部ごとにわかれる入試。
複線入試
個別入試を配点を変えたり、科目を変えたりして、複数回設ける入試。國學院などは、バランス型、得意教科重視、特定科目重視などの3日程を用意している。
英語4技能外部検定利用入試
英語4技能外部検定を利用して行う入試。
- 一定の得点で、英語免除
- 一定の得点で受験可能=資格
- 得点に合わせて、加点や換算
などのパターンがあるが、ほかの科目があったり、英語のウエイトが大きかったり、そのあたりは大学によって異なる。
上智は、TEAPに限定した入試を学部ごとに実施して、別日程で個別入試だが、早稲田の文学部・文化構想学部は、一般入試と同一日程で、資格をもっていれば、外部検定型と一般入試と両方に出願でき、両方で判定してもらえる。その他の国語・社会は共通の問題なので。一般入試なら英語も受ける。外部検定型なら英語はキャンセル。受けておけば両方の判定ということ。東洋大だと、点数ごとに得点換算が保障され、一般入試の英語を受けて高い方が採用されたりする。
こんな感じです。複雑ですね。
これをイメージしていただきつつ、変わるのか、変わらないのかを説明していきます。
2021年度入試~早稲田大学
政治経済学部が昨年の段階で発表され、衝撃的でした。
要は、
- 数学含めて共通テストを使う。
- 外部検定を入れる。
- 独自試験は、論文型
という感じ。その後、サンプル問題も発表されまして、だいぶ慶応っぽいイメージがあります。英語+現代文というか論文。内容は明らかに政治経済系、という感じ。
さあ、その他どうするの?と思っていたら、商学部が出ました。
簡単にまとめると、
- センター利用入試の廃止
- 一般入試は、定員をわけて、数学型と社会型に。英国社or英国数だが、定員をわける。
- 外部検定型を新設。英検とTOEFL。一般入試の英国・社or数にさらに加点。ただし、併願不可。
- 定員は同じ535名。
という感じです。
あとは、文学部・文化構想学部がセンター利用入試の廃止を発表しています。ただし、個別をプラスする方式は残るそうです。
というわけで、政治経済が衝撃的な発表をしましたが、その後は、変わるとはいえ、準備が変わるほどのものではなさそうですね。
2021年度入試~慶応大学
センター利用 もともとないので、当然なし
全学部統一入試 もともとなくて、当然なし
一般入試 そのまま
外部検定 今までもないし、導入もしない
わかりやすいですね。THE私学、という感じ。慶応には今回の改革は関係ない。もともとやってるよ、ということでしょう。
2021年度入試~上智大学
TEAP入試 今まで通り。TEAPで英語免除、あとは他の科目で勝負。
一般入試 今までは独自試験だったが、「共通テスト+外部検定+独自試験」で決定。独自試験は、4日間の午前・午後で8学科を行うとのことですから、おそらく早稲田の政経のようなイメージでしょう。論述型というのは明記されています。政経のように、文系でも数学を課すのか…というのはわかりませんが、たぶんそこまではしないんじゃないかと思います。でも、経済とかならやりそうですね。TEAPで数Ⅲ型があるくらいだから。
センター利用 今までやっていませんでしたが、共通テストから導入。「共通テスト」利用、ってことですね。「共通テスト+外部検定」で判定です。
2021年度入試~東京理科大
従来と大きな変更点はないようです。
A方式 センターAと呼んでいたセンター利用型。共通テストになってもA方式。外部検定は使いません。
B方式 いわゆる一般入試。そのままです。
C方式 センター試験+数学・英語のセンターCです。センターがそのまま共通テストになるだけ。外部検定はなし。
グローバル方式 センターCとの併願が認められないこの方式。外部検定+独自試験です。ここだけが、外部検定が要求されます。
こうしてみると、理科大は変えないぞ、って感じです。
2021年度~青山学院大学
青山学院は、共通テストを入れる側です。
大きく、
- 個別入試(学科によっては複線で実施)
- 全学部入試
- センター利用
という3つの方式で実施してきたわけですが、
センター利用は、共通テスト型実施。今まで通り。
全学部日程は、独自試験型として実施。今まで通り。
なんですが、
一般入試は、原則として、「共通テストを入れる」ということで決定したようです。
とはいえ、7科目が必要なわけではなく、このあたりは、学部、学科、そして方式ごとに、細かく、「英語は共通テストであとは論文ね」みたいな感じで細かく出ていますので、確認しましょう。
※2019年6月現在では、外部検定は成績提供システムにのるものだけのようです。
全体的な印象としては、
- 必要なのは原則主要3科目。
- 基礎知識を共通テストでみて、独自試験では論文型、論述型で学科で必要とする科目の力を見る。
- 日本文学科をのぞいて、総じて独自試験は、現代文を中心としたものに偏る。このあたりは早稲田政経に似ているかも。
ここの例外として「経済学部」があります。(正確にいうと、文学部の中でも、独自試験だけの方式を持つ学科もあります)ただし、中身を見てみると、国語が消えています。英・社、英・数の入試になるようで、試験の中身が論述型になっていくんじゃないか…という読みはできます。
あ、ちなみに、この一般方式のみ、外部検定は加点です。経済はやらないようですが。
私大入試は「今まで通り」と「論文型1・2科目」の2極化~もしかして中学入試のように午前・午後併願なんて形も?
というわけでここまで見て来ると、大きく対応が分かれていることがわかります。
- 基本的に今まで通り。変えませんよ。~慶応大学、東京理科大、早稲田商
- 共通テスト、おもいっきり利用して独自試験は簡略化しますよ~上智、早稲田政経、青山学院
こんな感じです。
おそらくですが、変えるところほど、早く発表しなきゃと思うはずなので、今後、後者の動きが強まるとは、実は思いませんが、2022年度以降も見据えていくと、徐々に後者のような動きになる可能性は十分あると思います。
で、おそろしいのは、独自試験で、上智が午後入試を発表しているわけですが、こういうのを意図的に組んでいくと、午前、午後併願なんていうことができてくるわけです。
なんだか首都圏の中学入試みたい。
少なくとも、上智に行きたい人は、午前ここ、午後ここという受け方ができるし、たぶん、そんなことも狙っているはずだし。
そう考えていくと併願のパターンがもっともっと広がって、それはつまり激戦になる可能性を高めていくわけですね。
調べ始めたら、思ったより面倒だなと思いました。
入試の準備からすれば、今までだって、センター利用+一般入試だったわけだから、たいして変わりはしないんだけど、でも、頭は使うな、と。
それから、こういう論文型独自試験が増えると、国語の自分としては、古典より現代文、あるいは論文指導にウエイトを置き換えないといけない。
しかも、早稲田とか慶応の現代文のような、国語というよりは学部に関わる知識だよねっていう形の現代文力ですね。
国語と英語と社会の、つまり文系の先生は、結構困る人多いんじゃないかな、と思います。
最後に主体性入試ですが、ここであげた大学はすべて「出願要件」です。早稲田のようにWEBなのか、それとも書面なのかはともかく、全員がこういう報告書を入試のためにとりあえず書き上げる、ということは常識になるわけですね。
ポートフォリオ、ちゃんとやっておこうね。いくら、入試で使わないといっても、筑波のように使う大学もあるわけだし。
というところで、書き出したら、意外と勉強になった今回でした。
2021年度入試改革については以下でまとめ直しました。
その他の私立大学(立教・中央・明治)の動向は現時点でこちら
立教は、英語入試を外部検定に!
中央は、大学ごとで外部検定が全然違うので、要注意!
明治大学は明らかにならないことが明らかに。www.manebi.tokyo
法政大学もまだ発表ありません。