今日、明日と三年目の共通テストが行われます。
受験した生徒に向けて、難易度の分析をしておきます。
共通テストに向けて、受験生は目標点を持っているはずです。不思議なもので、受験をしている間、全ての目標が偏差値で語られるのに、なぜか共通テストだけは「%」で語られます。
この厄介なところは、平均点の上下を無視したところで、つまり、前年ベースで目標の得点率「%」が設定され、平均点がわからないうちに、その点数がとれたかどうかで一喜一憂するということです。
というわけで、ちゃんとした平均点が出る前に、難易度によって受験生の動向がどうなるか説明しておきたいと思います。
共通テスト二年目(昨年)は極端に難化した!
まず、こうしたことをここで書く前提として、共通テスト二年目は「極端に難化」した、ということです。
五教科七科目で、おおむね10%弱平均点が下がり、当然大学の目標得点率も大幅に下がりました。
これは、昨年のボーダーラインが下がったというだけでなく、今年受験する生徒たちの、模試での判定や予想ランキングなどほとんどにこれが反映されている、ということです。
昨年までの受験生の場合、たとえば千葉大あたりを目標にしていると78%ぐらいを目標としていて、実際の試験に臨んだわけです。
昨年に関していえば、
目標78%
実際70%
というようなことになりました。78%を目標に頑張っていた受験生が本番受けてみたら、たとえば72%しかとれなかった。当然受験生は「終わった…」と思っていたわけですが、数日して平均点とボーダーラインが発表されると、実際は70%までボーダーが下がって「よかった!」となったわけです。
これが昨年。
問題は、今年の受験生はこの難化した昨年をもとに目標が作られているわけで、つまりそもそも70%を目標に勉強してきています。
まあ、模試や問題集についてはいいんですが、共通テストやセンターの過去問についていえば、そんなに平均点が下がった問題はほかには一切ないわけで、つまり10%程度簡単な問題を解きながら、目標70%に向かってやってきていた…というようなことになります。
そして、それはどちらが狙いなのか。それが論点。
つまり、昨年は間違いで、本当はもう少し簡単にしなければいけなかったのか?生物、数学、日本史、物理基礎・生物基礎あたりですね。
それとも、その下がった方が狙いで高かったものを下げるのか?リーディング、リスニング、世界史あたりです。
全般的な大学入試センターのコメントを見る限り、「難しくしすぎた」ということのようで、易化に向かうと考えられますが、世界史あたりはいかにも平均点が高すぎますので間違いなく難化すると予想します。
しかし、そういうものがトータルで実際どのくらいに落ち着くのかは、蓋をあけてみなければわかりません。
昨年の難易度が維持された場合
問題はその影響です。仮にトータルの平均点がまったく変わらなかった場合、受験生には混乱はおきません。その目標に向かって学習してきたわけですから、その点数がとれればC判定以上、とれなければD判定以下。
自己採点した瞬間に、だいたい予想がついて、その通りにリサーチがされるわけです。
昨年、難化しましたが、大学入試センターが「これでいいのだ」と思っている場合、科目ごとの上下はあるにしても全体としては大きな変化なく、つまり、混乱のない入試になることが予想されます。
「昨年意図的に難化させた」「思考力を必要とする問題を出した結果、多少平均点が下がるのは仕方がない、傾向は維持するのだ」と考えているなら、今年もこうなるはずで、そうなると、次年度以降の受験生は、このぐらいの難度を覚悟して準備をすすめることになります。
易化した場合~激戦の入試になっていく
しかし、問題は大学入試センターが反省している場合です。
共通テストの場合、原則として得点調整はしませんから、平均点をそろえる必要があるわけです。いくら思考力を問う問題を作るにしても、目標とする平均点から低ければあげなければいけません。国語や英語あたりは代替科目がありませんから、少しぐらい低くてもいい、とか考えることは可能性としてありますが、理科や社会、数学にしても選択ですから、ある程度の調整が必要なのです。
そうなると少し、厄介になります。
たとえば、一昨年が正しく、昨年は間違いだったとします。そうなると、次のようになります。
一昨年ボーダー 78%
昨年ボーダー 70%
今年の目標 70%
今年のボーダー 78%
こんな感じですね。
これで、たとえば、75%をとっていた場合、受験生の心理はどうなるでしょうか。
試験が終わった直後、自己採点の段階ではボーダーを知りません。
つまり「やった!受かる!」と思ってしまうわけです。
ところが、リサーチの結果を見ると、D判定。
つまり、厳しいし、現役志向が強いなら志望校変更です。
しかし、一年間目標としていた点数を上回り、一度「やった」と思ってしまった受験生があきらめられるか?ここが厳しいところで、私の経験では「易化」の年はみんなが突っ込む。
そうなると、ボーダー付近が混雑してしまい、逆転のしにくい受験になるのです。
そして、どうも今年はこうなる可能性が高いような気がしています。
難化した場合~みんなが弱気になり、ボーダー以下がすく=逆転可能な年
今年は逆の可能性は低そうですが、難化した場合も考えておきます。
たとえば、次のようになります。
目標 70%
自分の得点 62%
この自己採点の結果を見て、「終わった…」という感じですね。
しかし実際は難化していたので、
予想ボーダー 66%
だったわけです。しかしD判定に変わりはありません。
「終わった」という意識でD判定がつきつけられると、受験生は志望校変更を比較的受け容れます。
これ、実はさっきの数字と同じボーダー4%下なのです。
受験生はこのように同じ数字のはずなのに、易化か難化かで強きか弱きかがかわります。
弱気になる受験生は決まっていて、ボーダー付近、特にボーダー未満の受験生です。ですから、こうなると椅子取りゲームで最後の椅子を争うときに、ライバルとなる人たちがおりてすいてくる。だから逆転はしやすくなります。もちろん、逆転ですから二次力は必要です。空席になるわけではなく、ライバルと取り合うことはかわりなく、その人数が減るというだけですから。
しかし、今年はこうなる可能性は低そうですね。
というわけで、共通テストが終わって自己採点をするといろんなことを考えると思いますが、まずは平均点が出ないと、予想ボーダーが出ないと何も始まりません。出てからも受験生全体の動きをしっかり分析することが大事です。
書いている時点では、一日目。
余計なことを考えるより、まず二日目に全力をつくしましょう。失敗していたつもりでも、平均がさがれば失敗ではないのですから。