学びの真似び(まねび) 「学び続ける人」になるために(教育と受験と勉強法)

学習の仕方に困ったことはありませんか?ここでは、「真似び=学び」という形で、さまざまな学習方法へのアドバイスをしていきます。学習の仕方に悩んだら、受験勉強で行き詰まったら、ぜひ訪れてみてください。効果的な学習方法を知って、学び続ける人を目指しましょう!

高3になって受験勉強をはじめる君と保護者の方へ。解いておきたい5つの大学受験の誤解。

大学受験を意識して、これからスタートするにあたり、まず、大学受験とは何かを知らなければいけません。高校受験の雰囲気で行くことが最大の失敗になります。何が高校受験と違うか考えましょう。

大学受験を意識して、これから計画を立てる時に、意外と大学入試を「なめている」というような印象を抱くことがあります。

しかし、これは非常に酷な話で、こっちはずいぶん大学受験をやっているのに対し、たいていの保護者、そして生徒本人ははじめてですからね。

自分が大学受験をしていたとしても、特にうまくいった保護者の方は、その難しさが、どっかに消えてしまう。

だから、このあたりを如何に説明できるかにかかっているんです。

まあ、正直なことを言うと、高2の冬とか高3の4月でさえ、もう手遅れに近い。絶対無理ということではありませんが、かなり厳しい残り時間にさしかかっています。

でも、こんな時期でさえ、「夏から本気になれば…」みたいなことを本人も保護者も考えています。

結果として、高3の夏を迎えるまでに、どこまで到達しているか、というそこまでやってきたことで自動的に決まってしまうような状況になるわけです。

合格ラインより上にいればいいですが、そうでない場合…。

というわけで、みなさんが無意識に抱いている、大学受験に対する勘違い、誤解を解消しておきたいと思います。

私としては、高1あたりで本当は理解してほしいんですけどね…。

高1のクラスでこんな話をし続けていますが、完全に「うるさいおじさん」扱いですからね。まあ、仕方ないし、聞いてくれる人だけ聞いてくれればいいんですけどね…。

でも、高3になる方は、しっかり理解してください。

 

その1 高校に入る偏差値と大学受験の偏差値は意味が違う

まず、決定的にこの前提がわかっていない人が多いようです。

「偏差値というのは、頭の良さを示す絶対的な数値だと思っている」

ということです。

たとえば、公立高校を受験する場合、各都道府県のトップ校になれば、偏差値は70オーバーが当たり前。偏差値60っていったら、2番手どころかもっと下かもしれませんね。

それが自分の、頭の良さを示す指標だと思ってしまっているわけです。

だから、そこそこの進学校にいった以上、偏差値は60とか65ぐらいはとっている。

それを大学入試にあてはめると、

「MARCHは最低限、できれば早慶に」

というような意識ができあがるわけです。子どもが勉強していなくて、偏差値が50を切っていたとしても、「実力は65」なんだから、「やればできる」というわけですね。

もうわかると思いますが、偏差値というのは、母集団の中での位置を示す相対的なものです。平均点が50、正規分布しているなら、25から75の間にふりわけるわけですね。

高校受験の偏差値というのは、世の中学3年生の全てをカバーしています。その平均が50。なんなら、本当に勉強ができたはずの、中高一貫国公私立に進学した人は、高校受験の模試を受けていませんから、最上位が抜けた上での平均が50なわけですね。

ところが大学受験では、進学率がせいぜい50%ですから、すごく乱暴なまとめ方をすれば、高校受験で偏差値50以下の生徒が全部消えた上で、上の50~75の平均が偏差値50になるわけです。

だから、高校受験の偏差値と同じ偏差値の大学に入るというのは、よほど成績を伸ばした人、ということになります。

都道府県にもよりますが、高校受験の偏差値65ぐらいの学校で、ようやく大学受験・河合模試でいいところ、50オーバーぐらいではないでしょうか。

この辺は地域とか、そもそもの模試の偏差値の母集団の違いとかもありますから、なんともいえません。そもそも河合模試なんて、高2から高3になるだけで、特に数Ⅲまで入る理系は母集団がどんと変わるので、偏差値が落ちることになりますし。

いずれにせよ、「高校受験の偏差値が実力」というのは大きな間違いです。

 

その2 やってなかったから、やれば成績はすぐに上がる

続いて、起こるのがこれ。

そもそも、高校受験で、部活を引退したあとに、下手をすれば2~3ヶ月で、範囲を全部学習し終わったはずです。特に公立高校受験だと、ほぼ満点を狙うような状況までもっていき、ケアレスミスをするかどうかの勝負だったはず。

逆にちょっと難しい問題が出たとしても、「これはみんなできないから大丈夫」とばかりに、自分の行きたい高校に合わせて、難しい問題は捨てるようなケースもあったと思います。

その成功体験のおかげだと思うんですが、とにかく、「どこかで受験生になってやれば一気に終わる」というイメージを持っているようです。

うちの学校の生徒の場合、当然1年生では、この言葉が通じませんが、2年生の冬ぐらいでは、なんとか取り組みはじめてくれます。まさに、この時期、春休みぐらいで、「ちょっとやってみる」生徒が加わるんですね。そうすると、実はやって2週間も経ってみると、あっという間に、「無理なんで、科目絞ります!」みたいな生徒が出て来ます。

逆に言えば、どこかで大学受験を甘く見て2年生のうちはいて、実際にやって「やばい」ということに気づくんです。

大学受験の場合、実は、成績上位者も成績下位者も、1年を通じて成績の上昇率は変わりません。共通テストだったら、200点満点でせいぜい20点ぐらいです。要するに10%。

東大を受験するような生徒でも、東大を落ちたばかりの、既卒生と比べて、数学や理科は現役生は、最後の最後まで追いつきません。ちなみに英語は、現役生の方が平均はずっと上ですが。

つまり、東大受験者でさえ、最後の最後まで伸びていく。センターレベルの英語であるとするなら、たぶん2年生で完成して、あとは東大レベルの英語や他教科には確かに行くんですけど、逆に言えば、英語がある程度完成している分、数学とか理科とか歴史とか、あるいは現代文にまで回せるわけです。共通テストになれば、英語が高止まるかはわかりませんけど。平均点10%下げる気っぽいから。

成績が低迷していた私立文系が、「英語で必死になって、なんとか歴史やって、古典に手は出すけど、現代文はまあ、なんとかなるから…」なんて言っているとすれば、上位者の現代文まで仕上げに行く感じと比べれば、結局は、同じなんですよね。

大学受験の範囲は膨大です。決して2~3ヶ月で終わるような量ではありません。だから、学習計画も大事になってくるわけです。

「夏休みがんばれば…」なんていうのは、まったく通じません。

もし、あなたが高1、高2の分が入っていないなら、事態は深刻です。一刻も早く取り組まないと、たぶん範囲なんて終わらないですよ。

 

その3 塾に入って勉強すればなんとかなる・宿題や正しい問題集が必要

さて、3つ目ですが、「塾に入ればなんとかなる」というものです。保護者からすると、「塾に入れた時点でほっとする」ということかもしれません。

大学受験の場合、とにかく重要なのは、「自分でやる」ということです。

特に、国公立、私立、含めて最難関は、「自分でやる」という生徒でなければ入りません。塾を否定するわけではなく、すごくわかりやすい授業や入試で必要なレベルやテクニック、学習方法がそこにはあるに違いありません。

しかし、どんなにそれを与えられても、自分でそれを実行しない限り、最難関にはいかないんですね。

  1. 「問題を解く」「自力で文章を読む」
  2. わからなかったところの解説を読む
  3. その解説にあたる参考書をもってきて、頭に入れ直す

というこのローテーションで、学力は上がります。

このローテーションが回せない人は、大学受験では苦戦します。

  1. 問題を自力で解いていから解説を聞く
  2. 解説を自分で読んで、できなかったところ全体を自分で探して復習する

ということが欠ける人は、

  1. 解説を聞いてわかったような気がして、実践できない。
  2. 塾で先生が解説したことをインプットするだけでアウトプットできない。

というようなことにつながっています。

  1. 問題解かずに解説(塾の授業を)聞く(読む・見る)
  2. 解説だけ聞いて他のことをやらない

という生徒が実に多い。

私が持っているデータでいうと、

  • 早慶合格者は、やったところ、わからないところだけでなく、違う用法や違う意味まで、数学なら別解なども自分で理解するようにしている。全科目予習+復習。
  • MARCH合格者は、わからないところを自分で解決しようとする。英語は予習型、数学は復習型、国語は古典まではやる。
  • 日東駒専合格者は、言われたことはきちんとやるが、言われていないことはやらない。宿題はやるが、そうでないとやらない。

という感じです。したがって、「宿題で追ってほしい」というリクエストは、日東駒専合格者まで。

もちろん、人間はさぼりがちですから、「勉強する」という意味での管理はどのレベルでも必要かもしれませんが、勉強する中身まで、「指示したことだけしかやらない」だとすると、かなり大学入試では苦戦します。

だから、「塾に行くな」ということではなく、自分でやらないとだめ、ということなんです。

たとえば、学校の先生からすると、大学受験で成功するやつは、「学校の授業に対応する人」に限られます。しかし、これは勘違いで、話を聞いてみると「学校の授業はダメで、塾がすごくよかったんです」ということが多々あります。でも、重要なのは、それでも学校の先生には「授業に対応している生徒」に見えている、ということ。

だって、よほど学校の先生が受験に関係のないことばかりやらない限り、それが受験勉強になることを成功する生徒は知っています。だとすれば、そこは対応するに決まっている。

だから、学校の授業を平気で捨ててしまって、塾行ってるから大丈夫…なんていう人が失敗する人の典型です。

 

その4 私大にして教科をしぼれば現役で行ける

切羽詰まってくれば、教科、科目をしぼればなんとかなる、という人も出て来るでしょう。もちろん、「英国社は偏差値65でそろうけど、数学だけ偏差値40です。」というなら、捨てればだいぶ楽になります。

しかし、目標大学の偏差値が60で、全科目偏差値50程度の時に、「科目を少なくすればなんとかなる」というのは、完全な誤解です。

ベネッセの偏差値表を見てみると、MARCHは大体偏差値ランクで60以上です。ところが国公立を見ると、もちろん学部のばらつきはありますが、筑波、横浜国立、千葉、東京都立大なども60未満で点在しています。

だから、国公立が難しい、というのは、「科目数が増える」ということであって、実際は、科目数が絞られる私立はその分、偏差値が上がる、というようなことが起こっているわけです。

楽なところには、人がたくさんいる。

レッド・オーシャンなんて言い方をします。

その厳しいところにいながら、目標偏差値に届いていないにも関わらず、「いざとなれば、科目数しぼって集中すれば…」なんて考えているのは甘いというほかありません。

科目数をしぼれば楽になる。でもライバルはたくさんいる。そこで勝つためには、しぼったからといって、1科目あたりの勉強時間が倍になるぐらいの根性がなければ厳しいですよね。

 

その5 総合型選抜や学校推薦型選抜は入りやすい

 最後は、「困ったときの推薦」という発想です。

総合型選抜(AO入試や自己推薦)や学校推薦型(公募推薦)は決してはいりやすいわけではありません。

この誤解は次のようなところから生まれていると思われます。

  • 高校入試では、推薦は確約であり、ほぼ合格できた。
  • 合格が確約されないにしても、一般入試より確実に入りやすかった。
  • 世間では、AO入試で入った人は学力が低い、と言われ、批判されている。
  • 各大学に出願資格があり、だから、資格のある人はとってもらっている。

こんな感じでしょうね。

大学入試では、特に、みなさんが積極的にいきたいと思うような大学では、上記のようなことはありません。

大学によっては、0次入試であるかのように、ちゃんとした記述型、論述型の学力入試を課してきます。特に英語とか、理系では数学や理科などを課すようですね。

国公立では、共通テストで〇%とったらはじめて本当に合格…というようなのも主流になっています。

そこに英語外部検定の資格やら、実績やらがついてくるわけで、結構大変な入試です。

もちろん、学力型の一般入試では入ることができない生徒が、こういう入試でなら合格していることも事実です。しかし、その場合、合格に足るような実績であるとか、小論文の力であるとか、そういうものが必ず、人よりもあるから合格するのです。

だから、すでに合格に値するような能力や実績や学部学科に関わる知識を持っていてくれれば、それを受験に向けて整えるだけですむのですが、そうでない場合は、準備に時間がかかりますし、その結果合格するとは限らない。

そういうリスクがあるんですね。

受けるな、とか、やめとけ、ということではないんです。

「高校入試みたいに入りやすくなるわけじゃないんですよ」というそれだけのこと。

ひどいケースだと、学校推薦型(公募推薦)で、学校から推薦を書いてもらっただけで、合格だと勘違いしている人も出て来るんですね。そこから選抜が始まるのが大学入試です。

人によっては、こういう入試の方が入りやすいっていうことはあるわけで、だから、やめろってことではない。「最後は推薦で決めちゃえ」ってことは大学受験ではできません。

これができるのは、学校推薦型選抜の、指定校推薦だけです。指定校推薦なら、学校の代表に選ばれさえすれば、ほぼ落ちることはないでしょう。これで落ちたらよほどだし、学校にも迷惑がかかる状況ですから。

でも、ただの学校推薦型の、いわゆる公募推薦では、まだ入試が、選抜が、続いていくわけで、準備しなくちゃいけないし、落ちた時のために一般入試も考えないといけないんですね。

 

今日のまとめ

というわけで今日のまとめです。

  1. 高校入試と大学入試の偏差値は意味が違うから、あくまでも模試受けた結果があなたの実力。
  2. あなたの高校の成績がよかったとしても範囲は終わらないぐらい。まして、さぼってきたなら、やることは山積みで、早くしないと範囲は終わらない。
  3. 塾に行っても、自分でやらないといけない。宿題だけをやる生徒は難関大に合格しない。
  4. 私大にしぼればしぼるほど激戦になる。しぼってもいいが、しぼった分完璧に仕上げること。
  5. 推薦入試は別の能力で判定する「入試」。出せば受かる入試は難関大学の入試には存在しない。どうしても受験を回避したいなら、指定校推薦を。

というわけで、「解いておきたい大学受験の5つの誤解」でした。

あなたが、入試まで1年を切っているなら、まずはこの5つを頭にたたきこんでくださいね。