今日は医学部受験について考えてみたいと思います。
今日は医学部受験について説明します。
でも、私は国語の教員で、メインとなる理数系の科目について詳細な分析はできません。また、この後説明していきますが、私大医学部ということになると学費の問題が生じますので、自分の生徒が山ほど私大医学部に進学していくわけでもありません。つまり、たくさんの経験の中から情報提供できるわけでもないので、ここまで書いてきませんでした。
とはいえ、最近、うちの学校でも医学部受験に本気で挑むケースも多くなり、自分の強みである、小論文指導、面接指導、志望理由書指導、さらには総合型、学校推薦型の指導も含めて、持っているものは提供すべきではないかと考え、まとめてみることになりました。
不十分かもしれませんが、参考にしてください。
- 医師になるとするなら医学部以外の選択肢はない…
- 医学部の学費の問題~受験戦略をどう考えるか?
- 受験戦略~得意科目と苦手科目、科目と配点を考える!
- 志望理由書を作るポイントは「地域医療」がベースになる。
- 小論文と面接の対策は?MMI(マルチ・ミニ・インタビュー)を意識して準備しよう!
医師になるとするなら医学部以外の選択肢はない…
まず、これが一番の問題です。
医師を目指すなら、医学部に入る以外の道がありません。つまり、がんばるしかないのです。
たとえば、弁護士とかの前提になる司法試験の場合、司法試験を突破すればよく、その前提になるのは、法学部、また法科大学院の卒業です。種類も数も多く、法学部に入るだけなら難易度はほぼないに等しい。かつ、他学部に進学しても、その後進路変更をして、法学部、法科大学院にうつればいいわけで、実質大学受験で決まるわけではありません。
しかし、医師の場合、医学部に入学する以外ない。さまざまな補助金なども動いていて、入学者は1名単位でぴったりコントロールされています。2025年の医学部定員は9393人と国が定めています。つまり、他の学部のように、「ちょっとオーバーしてもいいよね…」とか「うちの経営の都合上、今年は増やします!」みたいなことはなく、厳格に管理されているのです。
そして、この医学部に入る以外の道はない。
ぎりぎり、海外大学で医師免許をとる…という手があるくらいで、国内ベースで考えると、まず医学部に入るしかないのです。
この医学部入試というのが難易度からもものすごく大変なのです。
医学部の学費の問題~受験戦略をどう考えるか?
次の問題が、その医学部の学費です。
国公立大は基本的に年間60万円ですが、私大となるとそうはいきません。一番安いという国際医療福祉大で年間2000万円、標準的にみても3000万円から3500万円くらい。高いと4000万円台に突入します。
国公立も含めて、当然安い方に人気は集中し、つまり、安ければ難しい。
あなたの成績が悪ければ、当然学費の高いところしか考えることはできないわけです。
というわけで、「医師になりたい!」と考える場合、あなたが超金持ちで、お金のことを気にしないか、あるいは超頭が良くてどの大学でも入れるのならいいのですが、そうでない場合、お金の問題を避けて通るわけにはいかないのです。
もちろん、奨学金や学資ローンとか使うことはできるでしょうけれど、とはいえかなり厳しいことは間違いありません。というわけで、まずはこの学費を踏まえて話を進めていきましょう。
学費はとても払えない…国公立第一志望。だめだった時は?浪人?それが無理なら…
さて、ケース1は「お金はない!」という場合です。自動的に併願できる私立は限られる、もしくは併願できない、ということになるでしょう。関東で安いところといえば、国際医療福祉、順天堂、慶応というあたり。これでも6年の学費だけでほとんど2000万円以上です。で、これらが私大最難関。早慶ぐらいの偏差値は余裕で必要です。
そもそもこれらの私大でも払えません…となると、とにかく「国公立第一志望」。これも最難関と言ってよく、現状、平均点低めの共通テストで83%ぐらい、平均点がやや高くなると80%後半はほしいところ。
現状、共通テストの平均点と高得点者割合が結構変化してますので、一口に語れませんが、要は東大ほどではないけれど、その次ぐらいの共通テスト得点率が必要になると考えて間違いありません。
「大丈夫!がんばれる」という人はおいておきましょう。
「ぎりぎりだなあ」「1年じゃ無理かも…」という人たち。次善の策を考えなければいけません。
国公立不合格、私立は学費の問題から不可、医師になりたい!だとすると、浪人しかありません。というわけで医学部志望者は他と比べて2浪、3浪という人が多く存在します。
国公立不合格、私立は学費の問題から不可、医師にはなりたいけれど浪人は…ということになると、残念ながら医師をあきらめる併願を考えるしかありません。
医師に近いところだと、薬学部がありますが、国立薬学部は医学部に劣らず難関です。おそらくそう簡単には併願できません。私大薬学部も年間200万近くかかるケースもあるくらいで、そう安くはありません。もしそれもダメなら、看護系か、あるいは工学部の医療系。いわゆる医工学という分野があります。
それも関心がないとなると、文系含めて、広く併願先を考える必要があります。
私大も当然OK!だったら私大を併願に入れよう。
私大も学費にはよるけれど、大丈夫だよ…となったとしましょう。
でも、学費に制限があるとすると、学力によっては上と同じことになります。6年で2000万円ぐらいはなんとかなるけど、3000万は無理…としましょう。となると、国際医療福祉とか日本医科ぐらいまではいいけど、その下はだめ…ということです。(細かい学費は調べてくださいね)
基本的に、学費と難易度は相関していますから、学力があればいいのですが、あるところ以上は払えないとなると、学力が足りない以上合格はとれなくなります。ということは、さっきと同じで、「浪人して医学部を目指す」か「違う学部を併願する」のどちらかが必要になります。
お金は基本的に大丈夫…であったとしても、医学部の合格にはざっくりと偏差値60ぐらいが必要です。
その昔、ウン十年前は、親が医者で、寄付金山ほど払えます…みたいな生徒は偏差値50ぐらいでも合格してく…なんていうのを見た記憶があります。(もちろん、受験勉強がんばったのかもしれませんが…)でも、最近はそういうルートはだいぶ厳しく規制されてるんじゃないかと思います。
なので、勉強がんばろう!としかアドバイスできません。理科大受かるぐらいの学力にならないと、私大でも医学部の道は開けないと考えて間違いないと思います。
受験戦略~得意科目と苦手科目、科目と配点を考える!
続いて、学習計画をどう作っていくかです。併願関係を視野にいれながら、医学部そのものの合格をどうすればとれるか考えなければいけません。
もちろん、他学部志望者同様、まずは学習するしかありませんし、それは学習方法によってくる話で、そのことが何か違いが出てくるわけではありません。
しかし、医学部には大きな特徴がありまして、それは大学ごとに受験科目や配点、あるいは出題方式に大きな違いがある、ということです。
ですので、「大きな違い」を生かして、併願作戦、あるいは受験戦略を考える必要があるのが医学部受験の特徴です。
得意、苦手と科目・配点を検討する
医学部の特徴は、大学ごとに受験科目や配点に違いがあるということです。
たとえば、国語があるかどうか、小論文があるかどうか。国語が得意な受験生はある方がいいし、苦手な受験生はない方がいい。
たとえば、数学の配点。数学の得意な受験生は配点の大きい方がいいし、苦手な受験生は配点が低い方がよい。
たとえば、理科が3科目要求されるのか、2科目要求されるのか。
たとえば、グループ面接があるのか、個人面接だけなのか。
こういうのを自分の向き不向きに応じて検討する必要があるわけです。そして、併願先の私大を考える時にも、できるだけ、科目や配点が似ている方が対策しやすいということになります。
問題の難易度と問題量を検討する
もうひとつの検討軸は、科目の難易度と問題量。つまり、そもそもの問題傾向が似ているかどうかです。
受験科目の基本は、英語、数学、理科2科目のはずです。
これが同じだから、同じ準備…というわけにはいきません。
ざっくり言うと、基本問題を中心に出すところと、難問を出すところ。
そして問題量。スピードが要求される、問題量が多いところと、じっくり取り組む問題量が標準的なところ。
医学部を専門とする予備校などでは、こうした分析を詳細にしてくれていますから、もちろん、最終的には過去問題をやってほしいとはいえ、その前にそうした資料を使って、自分に合う大学、第一志望に近い併願大学、そういうものを見つけることができるのではないかと思いますので、塾ならそこで、学校ならそういう冊子などがないか探すといいでしょう。
志望理由書を作るポイントは「地域医療」がベースになる。
医学部受験では志望理由書や面接で志望理由を問われることが多くなります。
なので、まずはこれらをどう作るかが問題です。
で、まずやることが二つ。
ひとつはアドミッションポリシーをしっかり読むこと。どのような医療者を求めているかがはっきり書かれています。地方の大学では、「地元の医療の貢献する人材」などの文言があるケースもあります。となると「世界で活躍する…」とかがずれてくるのがわかるはずです。
で、残念なことに…多くの大学は潜在的に、地元に貢献する医療者を欲しているということです。なので「地域医療」というキーワードはまずしっかり考えたい。もちろん、「研究」や「国際貢献」などがいけないわけではありませんが、そういう部分を考えるとしても特に地方国立を受験する場合、その地方の「地域医療」を念頭に置きたいところです。
というわけで二つめ。その地域の、医療の現状をしっかりと把握し、どのような対策が必要か捉えていくことです。この作業なしに、漠然としたイメージ、それこそ「ドクターコトー」みたいな語り口は非常に危険です。まずはその地域の問題をしっかり調べましょう。それこそ、ネットで十分調べられます。
さて、もう少し書いておきましょう。
たとえば、あなたが国際的に活躍したいと考えます。「国境なき医師団」みたいなイメージですね。志望理由書を書くにあたって、大学の「留学制度」などにふれながら、自分が国際的に活躍したいことを書く…。よくあるパターンです。
だからだめ、ということではなく、しっかりここをよく考えてみてほしい、ということです。
たとえば、留学すると、「国境なき医師団」みたいに、医療資源が物資としても人材としても不足している地域で活躍できるのでしょうか。
そもそもそういう地域で学びたいのなら、よほどそういう状況に身をおいておかないと、行っても足手まといになるだけ。何をしに留学するのか、何をしに海外に行くのか。それが意識できれば、行くまでにどんなことをやっておくか、やっておかないといけないか、考えられるのではないでしょうか。むしろ、それなしに海外に行くなどというのはありえないですね。
とはいえ、医師になっていなければ具体的な医療行為ができるわけではありません。医師になってからの話であったとしても海外の医療物資の不足がある状況に事前に身をおく、ということは不可能です。でも、その準備がなければ行っても足手まといになる…。
ということは、たとえば、弱者、つまり医療がよく届かないところ、あるいは医療を軽視している患者、あるいは医療を断念しなければいけない患者がいる状況、場合によっては医師や医療者が不足している地域でどうシステム化するかなどが状況として、似ているということになるわけです。
となると、まず思い浮かぶのが地方を中心とした僻地医療。医師がなんでもやらなければいけない状況、その中で専門的な医療とどう連携するかなどということが問題になりそうです。
こうなるとすぐ「ドクターコトー」の世界に走りそうですね。都市部はどうでしょうか。たとえば、路上生活者、生活保護世帯、あるいは生活保護をぎりぎり受けていない世帯などはどうでしょうか。近くにありながら、同じような学びの状況が生まれているように思います。
そういう人たちと接しているのは、ソーシャルワーカー、行政、介護、そして看護など、様々な職種の人々です。医療がしっかり入り込むには、医師がリーダーシップをとって、チームを組む必要があります。
というわけで、やれること、考えられることもたくさんあるわけです。
もちろん、「研究」が中心になれば、「地域医療」とは無関係になる可能性は高まります。ただそれでさえ、何万人に一人の難病を扱うのか、インフルエンザ、コロナといった誰もがかかる病気を研究の中心にすえるのかで大きな違いがあるはずです。誰もがかかる病気、人数の多い病気、そして医療費の問題も検討せざるを得ないはずです。
そうなるとやはり「地域医療」に目が向いている必要がありますよね?というか、医療を考える時点で「地域医療」に関心がない、つまり、「知らない」「話せない」というのは問題があると思います。なので、しっかり調べて自分の考えを述べられるようにしておきましょう。第一歩です。
小論文と面接の対策は?MMI(マルチ・ミニ・インタビュー)を意識して準備しよう!
続いて、小論文と口頭試問的な面接についてです。これは私の専門分野にかなり近づいてきています。
まず第一に言えることは、小論文の書き方、というような一括りの指導や準備は、ほぼ意味がない、ということです。
もうちょっと具体的に書くと、「医学部」と謳われていない、他の学部が一緒にいるような、同じ題材を書くような小論文講座、小論文の塾などはほぼ意味がない、ということです。
つまり、「医学部の小論文」対策をしてほしい、ということです。
緻密に言えば、大学ごとに対策をしてほしいところですが、なかなかそうはいかないのはわかりますので、まずは「医学部の小論文」対策をしっかりしましょう。
で、この「小論文」対策と「面接」対策は一緒に考える方が私はよいと思います。
というのは、医学部の小論文や面接では次のようなことを問うていると考えるからです。
- 医療の現場で具体的に起こる問題をどう考えるか
- そういう問題につながる、大きな社会問題をどう考えるか
- そういった具体的な問題に、現場の人間として具体的にどう行動し、折り合いをつけていくか。
- そういった広い意味での「人間力」
というような面について、小論文や面接で聞いていると考えます。
こうなると、マルチミニインタビュー、MMIという試験スタイルと一般的な小論文指導とのずれを論じないわけにはいきません。
マルチミニインタビューという受験形式は、いくつかの部屋ごとに面接官がいて、決められた問題をその部屋ごとに出してくる、というような面接方式です。試験のようなかなり客観的に採点基準があるようです。
ここでは医療に関わる問題もありますが、たとえば、レポートで不正をした人がいたらどうする?というような(実際にはもっと細かい設定をするケースが多いようですが)問題を出してきたりもします。
さて、医学部に限らない、一般的な小論文の指導では「内容は問わない。意見を決めて、論理的に書くことが重要だ」などということがあります。
個人的にはそもそもこの指導が大きな問題なのですが、この指導がMMIとより相性が悪い。
MMIは、意見や論理性ではなく、そもそも解決不能な問題設定がされていることが多い。そこで、何らかの対応をしなければいけないのが現実です。そこで対応するためには、どのような配慮、検討が必要か、ということが問われているわけです。つまり、意見がぶつかる、利害がぶつかる、本来両方に配慮しなければいけない、でもできない、そこでどういう折り合いをつけていくか、というようなことが大事です。
もっとはっきり書くと、問われているのは、どれだけ配慮が必要なことがあって、みんなが幸せにする対応策をどう考えるか、ということなわけです。
しかし、一般的な小論文指導では、「意見をひとつ決め」「自分が正しいと主張し、相手をねじふせる」というそういう文脈がこの採点基準と合わない。そうやってしまうと、「配慮しない」「自分だけが正しい」「こうする以上、そうじゃない人はがまんしてほしい」というような主張になり、MMIでは低い評価になると思います。
というわけでMMIを見据えては対策として「討論」をおすすめします。
できれば医学部を志望する友人を集めて、出題されている面接や小論文の課題をみんなで討論するのがおすすめです。
そういう中で、自分が気がついている視点、課題、問題点…気がつかなかった視点、課題などを得ながら、どう折り合いをつけるか考えていく。MMIでは、どこまで気づけたか、どこまで配慮できるかが問われます。小論文などでは、さらにその「折り合い」を具体的にどうするか、どんな言葉で、どう行動して、どう感じさせるかまで書かないといけないケースもあります。実際に医師となったら、どっちを選んでも何か問題が起きる中で、配慮した発言、行動をしなければいけないわけですから。
というわけで、余裕ができたら、そういう問題を具体的にどう考えるかなどもこのブログで考えていければな、と思っております。