学びの真似び(まねび) 「学び続ける人」になるために(教育と受験と勉強法)

学習の仕方に困ったことはありませんか?ここでは、「真似び=学び」という形で、さまざまな学習方法へのアドバイスをしていきます。学習の仕方に悩んだら、受験勉強で行き詰まったら、ぜひ訪れてみてください。効果的な学習方法を知って、学び続ける人を目指しましょう!

数学の学習方法を検討する!「東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!」を読んで研究。

今日は学習方法について考えていきます。紹介するのは「東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!」という本です。数学の学習について考えます。

3月になりまして、気持ちも新たに学習に向かうところかと思います。今日は書店でみかけた「東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!」を紹介して、数学の学習について考えてみましょう。

 

数学が得意な子と苦手な子の基本的な性格分析

まずは、この本の紹介に行く前に、数学が得意になる子と苦手になる子の性格分析みたいなところから入ってみたいと思います。

頭のいい悪いではなく、性格的な部分がどうも文系に行くか、理系に行くかを決めているんじゃないかと思っています。もちろん、「褒められた」とか「みんなよりできる」とか「みんなよりできない」といった部分での好き嫌いも大きいと思いますが、まずは、こういう部分を分析してみたいと思うんですね。

勉強っていうのは「わかる」ことが大事です。でも、勉強っていう漢字は「勉める」「強いる」ってい漢字で、意味のないかのような強制力を含むわけですね。

正直言って、私はこのあたりに疑問を感じるから、こんな名前のサイトを作るわけですが、世の中には「こういう部分こそが大事なんだ」っていう方もいらっしゃって、私自身も、苦労とか努力こそが貴いとは思いつつも、だからといって、何の目的もない努力とか苦労が必要だとは思えないんですね。

実は経験上、この雰囲気が文理をわける性格のように感じています。

文系に行きやすい性格というのは、

  • 目的をもって進みたい。だから「意味」が知りたい。
  • できるだけ無駄な努力はしたくない。効率よくやりたい。
  • だから、「わかった」としたら、もうやらなくてもいい。
  • できるだけ新しいことにチャレンジしたい。

一方、理系に傾きやすい性格というのは、

  • 目的がわからなくても、課題に取り組める。だから「意味」が説明されなくてもできる。
  • 努力すること、積み重ねることが好き。
  • わからないことはやりたくない。むしろ、わかったら、それを何度でもやりたい。
  • まずは教えてもらって使うのが好き。

こんな感じです。もちろん、それ以外の興味・関心とか、それこそ成績とかもからみますから、一概に言えないですけどね。

記憶の話を書きました。

www.manebi.tokyo

たとえば、歴史はどちらかといえば、陳述記憶系。わかれば終わり。

それに対して、数学は手続き記憶系。わかっても、何度も繰り返し解いて、解き方を身につけていく。その覚えこんだ感じで、まだ見たことのない問題もひらめくわけです。

文系型だと、数学の公式とか、解き方とかを数パターン、陳述記憶的に覚えてしまう。そうすると、似たような問題が出る限り解けますから、「もういいや」となる。その結果、頭で覚えているだけで、身についているわけではない。だから、どこかでひねられると苦しくなるわけですね。

ところが、できるようになったものを繰り返しやるのが苦でない子、むしろそういうことじゃないとできない子っていうのがいまして、こういう子は、「もういいや」ではなくて、楽しく解けるわけですね。結果として身につく…。

こんなちょっとした性格も、文理を決める可能性があるわけです。 

で、そうなってきたときに、数学のできない文系がいうのは、

「何のためにやるのかわからない」

みたいな発言です。たいてい物理なんかでひっかかるんですけど、摩擦はないものとする、とか、ひもの重さは考えない、とか、ありえない設定のひとつひとつでつまずくんですよね。こういうのをすっと、「そういうもんだから」とよくいえば抽象化、わるくいうと何も考えないでできちゃうのが理系の人たちともいえるわけですが。

 

「東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!」のいいところ

というわけで、「東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!」です。

この本の特徴は、できるだけ目的を教えて、体系づけて整理してくれているところ。何のためにこれを学ぶのか?最終的な目的は何なのか?

たとえてくれているのは、ロールプレイングゲームで、最後にボスキャラを倒すために、アイテムを揃えているんだというようなことです。

これ、ちょっとわかります。

今、やっていることが後で使えるわけですが、それがわからないと「何でこんなことやらないといけないの?」ってなるわけです。

ロールプレイングゲームは、最終的なボスキャラは見えていないまでも、きっと、積み重ねた先に、そういうエンディングがあるんだろうな、と思えるから、今のコツコツができるわけですね。しかも、ボスは何段階かにわかれていて、スモールステップを踏んでいける。お金をあつめたり、敵を意味もなく倒して経験値積んでレベルアップしたり…。それもちょっとしたゴールが見えるから、意識しているからなんですよね。

まあ、性格的にそういう単純作業が苦にならないという人もいて、理系っぽいんですけど、結果としてアイテムを集めまくっているわけです。

でも、文系脳は、できるだけ楽をしたいわけで、そうなるとその作業にどんな意味があるのか見える、ということはとても大事なことなんです。

この本は、そこを意識してまとめてくれているので、目的意識を持つことができて、その意味では非常にわかりやすいです。

 

中学生にこれを使うとしたら…

というわけですごくいい本でおすすめなんですが、難点もいくつかありまして…

読むのに時間がかかった…苦手な子はひとりで読めるのか?先生や親が読んでかみ砕いてやる必要がある。

まず、一点目なんですが、理解しようと思って読むと意外と時間がかかりました。結局数学なので、どこかで式が入ってきて、これを変型していくみたいなことになると、結構集中してわかろうとしないといけないんです。

これを数学苦手な子がひとりで読んで理解するかというと…

たぶん無理でしょう。だから、この本与えて「がんばってごらん」というのはどうも無理。

でも、説明はわかりやすい。だから、これは大人が勉強して、こういう道筋で一緒に勉強してやるというのが、いいのではないでしょうか。

というか、「R16」と書いていますから、そもそも中学生に使うようには作ってない部分がありますね。

道筋を示してくれて、構造がわかるようになる。でも、それを一気に果たしてできるか?高校生の復習用かな。

とはいえ、わかりやすい以上、これで中学生に勉強させたい、という気持ちになります。そういう観点で見たときに、この本の一番いいところは、できるだけ早く一気に説明することで、ゴールを見せながら、そこにたどりつく道筋、という形で作られています。

これ、経験上とても大事なことだと思います。

よく、基礎をきちんと積み上げて、徐々に応用に行く、というように考えていたり、「基礎が大事」ということが強調されたりするんですが、きちんと基礎を定着させるためにも、できるだけ、実践やゴールが大切になるんです。

スポーツでも基礎が重要。でも、基礎ばかり、1年、2年やって、ようやく試合に行く、というような形では、基礎練習に耐えられないし、何のために基礎をやっているかわからないんですね。だから、実践練習とか、ゲームとか、とにかくゴールが大事です。

たとえば、私の科目、古典でいうと、助動詞あたりが全部わかって品詞分解するから、動詞の活用を学習する意味がわかるのであって、そのゴールを見せないで、動詞の活用やってると、「?」ということになりやすいし、助動詞やるころには忘れちゃうんですね。

だから、中学生には無理、ということではなく、いい感じでゴールを見せてくれている気がするんですが、残念ながらこの本を読んで、そのゴールがきちんと見ることができるか、といわれると厳しいかも。もちろん、先生とか親とかがこの本を読んで、ゴールを見せながら、中学生に勉強させることは可能です。

でも、1人でとなると…

ちょうどこのタイミングでいうなら、受験が終わって高校に進学する生徒が、今、ここで入学までに復習するには最高の教材だと思います。

高校に入って、ちょっと苦手意識が出てきた生徒にもすごくいいんじゃないかと思いますね。

わかった気になるけど、数学は結局、根気よく解くことが大事といっている。

 で、そして、最大の問題点は、文系は、この本を読んで一気に数学が理解できることを期待しているんですが、この本の先生は、ある意味でそれを否定していること。中学生にこの本を読ませてはいけない、というのは、ある程度こつこつと努力をさせて、その後で種明かしのように理解させるのがよくて、最初から楽をさせてはいけない、というような書き方をしています。

私なりの解釈でいうと、結局は、最初の「手続き記憶」の話に戻ってきます。数学というのは、何か公式がわかったら、それを覚えて済むわけではないです。実際に何度も何度も解いて、その解き方に必要な頭の動きが繰り返されて、違うパターンにも少しずつ対応できるようになるわけです。

きっと、だからこそ、作者は、

「この本読んで終わらせちゃだめだよ。わかった気になっちゃだめだよ。問題コツコツ解くんだよ。」

と言っているような気がします。

文系としては、この1冊読んで、「だから、数学の授業なんて無駄なんだよ」っていいたいところなんですけど、そうではない、ということをしっかり理解しないといけないと思います。