今日は学校推薦型とか総合型入試について考えてみたいと思います。
大学入試は刻一刻と変化し、3年とか6年経つと想像もつかないぐらいの、別のものになっています。
そういう意味では、このブログもだいぶさぼってしまって情報が古くなっている面があるのも否めません。
というわけで、学校推薦型とか総合型入試について考えてみたいと思います。
学校推薦・総合型・一般選抜の3つで、「学力の3要素」を問う
現在の大学入試は、大きく3つに分かれます。
学校推薦型
総合型
一般選抜
以上の3つです。
しかし、大きな方針としては、どの入試型でも「学力の3要素」を問うと決められています。
「学力の3要素」というのは、「知識・技能」「思考力・表現力」「主体性」という3つ。
これらをすべての入試形態で問うことが決まっているのです。
端的に言えば、学校推薦型や総合型でもいわゆる「学力」を問うし、一般選抜でも「主体性」を問う、ということです。
「一般選抜で『主体性』を問う?」と思った人がいるかもしれませんが、これも決まりです。ただ、多くの大学は「選考には用いない」とかしつつ、出願の時にいろいろと書かせたりしますし、そもそも調査書とかを大学に提出するわけですから、生徒会活動とかクラブ活動とか委員会活動とかのデータが一応大学には行っているわけです。Web出願が現在の主流ですが、出願時になんだかいろいろ書かされるのにはこういう事情があるわけです。
で、現在はほとんどの大学がこれらを選考には用いない、としているわけです。
逆にこういうところをちゃんと使おう、というのが学校推薦型とか総合型入試の特徴でもあります。
学校推薦型とか総合型は逆に「知識・技能」とか「思考力・表現力」を入試で問うということになります。自分の受験する大学に、そんな受験科目があったかなあ…と思う人も多いでしょう。まあ、小論文とかがあれば「思考力・表現力」だよね、というのはわかりますが、「知識・技能」はどうなんだろう…とか、「自分が受ける大学には小論文もないけど…」というようなケースもあるでしょう。
これは、みなさんが想像する「知識・技能」「思考力・表現力」の誤解が原因です。
たとえば、英検の資格級であったり、小論文や面接で行われる口頭試問もこうしたものに入ります。また、いわゆる「評定平均」と言われるような制約もこのひとつ。
そもそもですが、共通テストというものは「『知識・技能』中心だったものを『思考力・表現力』もしっかり問う」という方針でできあがったもの。ただのマーク式試験ですが、「思考力・表現力」もカバーしています。
つまり、「知識・技能」「思考力・表現力」というものはいわゆる「学力」であり、小論文でも面接でも確認できるし、英検や評定でも確認できるという理屈になってしまうわけです。まあ、言い訳に近いですけど。
というわけで、多くの大学は、今まで通り入試を行っていますが、いわゆる学力、つまり、ちゃんとした「知識・技能」「思考力・表現力」がないとまずいというのは、受け入れる大学がしっかりわかっていて、だからこそそういう大学は学校推薦型や総合型でもちゃんと確認してきます。
たとえば、
「共通テストの受験を必須にして、入試判定材料とする」
「英語外部検定の取得を義務づけ、一定級を出願資格にする」
「小論文や面接の名称で、学力が測れるような試験内容を入れ込む」
「そもそも入試に基礎学力検査を入れる」
など。
というわけで、いわゆる学力が必要かは、学校推薦型・総合型か一般選抜かで決まるわけではなく、その大学がどうしているかによって決まります。
そして、特に国公立の学校推薦型では、いわゆる学力を必要とする形が圧倒的に多いので、「学校推薦型・総合型は学力が必要ない」あるいは「学力がない方が受かる」というような訳のわからない理屈に巻き込まれないよう注意しましょう。
学校推薦型入試は指定校と公募推薦の2種類
学校推薦型は、指定校推薦と公募推薦に分かれますが、この両方を「学校推薦型」と呼んでいます。
それでは、この二つの入試の違いと内容を説明していきましょう。
公募推薦
学校長の推薦があってはじめて応募でき、そして選考が行われる入試です。合格までの手順は以下の通り。
- 要項に記載されている出願条件を満たすこと。評定平均や出席状況、英語外部検定、場合によっては課外活動などの条件があることもあります。
- 学校長の推薦を得ること。学校での出願人数に制約があることもありますから、その場合、1で基準を満たしても高校で選考が行われることになります。また、多くの場合、高校が推薦書を書かなければならず、1に書かれている出願条件や人物などを高校の先生が推薦書として書くことになります。
- 1と2ではじめて大学に出願できます。大学によってはこの段階で、書類選考が行われます。
- 書類選考を通過して、はじめて受験に向かいます。ここで試験が行われ、ようやく選考が行われます。
- 合格者が決定します。
というわけで、いわゆる公募推薦の場合、「学校から推薦されたからといって受かるとは限らない」というのが大事なポイントです。
書類で落ちるかもしれないし、書類が通っても試験を受ける資格を得ただけで、その試験の結果で合否が決まるわけですから、「入試」です。
特に高校入試の経験者は、「そうは言っても、受かりやすいんですよね?」「そうは言っても基本は合格なんですよね?」みたいなことを考えることが多いんですが、まったくそんなことはありません。高校入試では「推薦」というと「合格確約」のような雰囲気がありますが、大学入試では、特に難関大では、そんなことはまったくないです。
たとえば旧帝大クラスの難関国立の場合、「東大に取られる前に、秋にとってしまえ!」という感じですから、むしろ優秀な人をとる、という感覚で、そうでない人をとるメリットはどこにもないわけです。
したがって、「公募推薦=受かりやすい・学校で推薦されれば合格」などということはまったくありません。
多くのケースで「入学を確約できるもの」という条件がついています。高校によっては、ここから「学校推薦は1校のみ」という条件があるケースもあるようですが、実際には「併願可」のこともあります。大学からすれば、「入学を確約できるもの」と書いているのに、入学しないことは困るわけですが、「併願可」であれば入学しなくても問題ありませんから、本来「学校推薦は1校」などということはありません。
また、塾などでは無責任に「入学確約の大学に入学しなくても大きな問題(=ペナルティ)はない」などと言ったりするケースがあるようですが、学校推薦の場合、個人にはペナルティを科せなくても、学校にペナルティを科すことはできる、つまりその高校の受験生を信用しなくなる…という可能性はないわけではありませんし、高校が説明を求められる…というぐらいであれば十分考えられますから、安易に塾の口車にのせられないようにしてほしい…というのが学校の教員の言い分です。
指定校推薦
大学が高校に枠を与えて、一定人数に合格を確約する入試です。
このポイントは「大学が高校の実績(=過去の入学者)を信用して、高校が推薦した生徒に合格を与え、入学させる制度」ということです。
多くの場合、「受験=合格」という制度です。(まれに学力試験などを課し、一定成績がないと落とす…と明記しているケースがありますが)
「受験=合格」というケースでももちろん、落ちることはあります。しかし、ここで落ちるのはよほどの受験生。
当日の試験で白紙に近い答案を作るとか、よほど不適切なことを書くとか。
面接でまったく答えられない、あるいは悪い態度をとるとか。
基本的に大学は合格を出す前提で試験をすすめていて、それこそ面接で「入学までにちゃんと勉強してくれないと、入ってから苦労するよ」とお説教するようなイメージです。
なので、落ちるはずがないし、落ちたら困る。もし、あなたが落ちたら、おそらく翌年、あなたの高校にはその推薦枠がなくなる…という結果になるはずです。だって、その高校は推薦にふさわしくない人物を推薦してきた、つまり、推薦にふさわしい人物がいない…ということですから。
では、指定校推薦で合格を得るためにはどうすればいいでしょうか?
- 希望大学希望学部から推薦が来るとは限らない。そもそも指定校を行わない大学学部もありますし、行っていてもそれが自分の学校にくるとは限りません。また去年自分の高校にあったものが、なくなるケースもあります。
- 要項に書かれている推薦条件を満たすこと。評定平均、出席条件の他、英語外部検定や共通テストの結果開示(つまり、共通テストの受験が条件)などが付されているケースもあります。
- 学校に与えられた枠の人数の中に入ること。つまり、学校から推薦されること。たとえば、1名の枠だとして、いくら基準を越えていても、学校に希望を出した生徒から1名が選抜されます。5名希望すれば倍率5倍の入試です。結構厳しいですね。
- 出願し、受験して、合格。
3が一番の問題点。基準をいくら越えていても、学校の代表に選ばれないと駄目。逆に3をクリアすればほぼ合格、というのが指定校推薦です。
第一に、希望する大学、学部からあなたの学校に指定校が来るかどうか。そして、来たとして、基準を越え、さらにはあなたが代表として選ばれるかが大きな問題です。
総合型選抜は自己推薦・AO型
総合型選抜は、公募推薦と雰囲気はあまり変わりません。つまり、選考のある入試です。
大きな違いは、自己推薦型であること。多くの場合について、学校の許可はいりません。つまり、出願条件を満たしていれば、受験が可能です。たまに、そうは言っても学校長の印鑑が必要だったりするケースはあります。これは、多くの場合、「合格確約型入試」の時に起こる現象です。「合格したら入学することを確認いたしました」みたいなのに校長印を押させるわけですね。学校の先生の立場からすると、校長印もらうって大変なので、余裕を持って出願しましょう。
総合型と学校推薦型の違いは、学校の推薦がいるかどうかにつきるのですが、その他の違いをいくつかあげておきましょう。
一つ目は、時期が早いということ。
あくまでも解禁の時期なので、大学によっては冬に出願や入試が行われるケースもありますが、多くの大学が9月初旬には出願となり、調査書のお願いなどは、夏休み前にお願いしないといけないケースもあると思います。
そして、最近の傾向としては最初から「併願」であることを謳うケースが多くなっていること。併願であるとするなら、合格を確保して一般選抜まで戦えるわけですから、考えるべき大学が多くなります。
入試方法としては、
- 学力・共通テスト含む
- 小論文
- 志望理由
- 面接(個人・グループ)
- 実績・論文などの資料
- 大学から課された課題
- プレゼン
などがあり、大学によってこの組み合わせも様々。
なので、自分に合うものを見つけてもらうしかありません。これも学校推薦同様、一律には言えませんので、調べてください。
では、準備の流れを確認しましょう。
- 要項で受験資格を確認する。評定、出席日数、英語外部検定、その他大学が設けた条件を確認すること。
- 夏休み明けすぐの出願の場合、担任の先生に調査書などの依頼方法などを夏休み前に確認すること。ルールは学校ごとに異なるが、調査書を作るのは担任の先生の確率が高く、書いてもらう内容について受験生と連絡をとらないといけないケースが多いので、夏休みに入る前に意思表示をしておくことが大事。
- 出願して、受験。
総合型と学校推薦型で入試そのものに大きな違いはありません。簡潔に言うと「落ちる」入試。
指導してきている感覚で言うと、学力と別のベクトルで合否を出す以上、偏差値では入れない大学に入学できるケースがあることは間違いありませんが、だからといって「青田買い」という印象はまったくないです。
旧帝大あたりの国立大、明治・立教以上の私立大学では、倍率も高く、いい加減でなくても書類で落ちることもままあります。また、プレゼンや実績に重きをおいていても、結局は英語外部検定や英語長文の小論文など学力も一定程度見ていそうだなという雰囲気も漂います。
逆に法政大から下ぐらいになると、一般選抜に比べて入りやすい雰囲気がぐっと強くなります。
また、学校推薦に比べると評定平均を見ている割合が低くなり、あくまでも大学が課した、提出資料、小論文、面接などのみで決まる印象です。
どうやって対策するか?
では、これらの入試にどのように対策すればいいでしょうか?
ここまで読んでわかったと思いますが、どの大学にも通じる対策とか、総合型選抜の対策とか、そういうものはありません。
まず、あなたが受けようとしている大学、学部学科、そして試験方式で、具体的にどんな入試が行われているのかをよく調べましょう。
たとえば、あなたが探究学習をしていて、立派なレポートが手元にあるとします。
「このレポートを使って、総合型とか学校推薦型で合格をとりたいな…」
間違っていません。生かすべきです。
しかし、だからといって、どこでも総合型で合格がとれるかといえば別問題。
たとえば、評定平均は低く、模試の成績は悪く、学力検査の問題はほとんどとれないとします。
だとすると、
- 評定平均が基準になる学校推薦は受験できない。
- 共通テスト合算の大学は、その段階でクリアできない。
- 小論文入試が中心の大学、特に学力を必要とするような小論文を課す大学は合格がとれない。
というようなことが起こります。
つまり、受験の中心に据えるのは、「志望理由を選考の中心におく」あるいは「プレゼン入試」「高校時代の実績としてレポートを添付しアピールできる」大学に限られてくることになるのです。
わかりましたか?
たとえば、その学部学科の研究につながるような探究活動をしていた場合、アピールがしやすくなりますが、生徒会活動とかクラブ活動とか委員会活動のようなものでアピールをしようとすると、志望理由とも乖離が生まれるので、それだけで合格をとるというのはかなり難しいと思います。
端的に言えば、総合型入試を意識して、生徒会活動をする…というのはおすすめしません。まだ、探究活動をまじめにやるとか、今から勝手に論文を書く…という方が、入試の対策としてはありうる。それさえ、今、書いたように、大学の入試方式によっては意味がない…ということもありうるのです。
私が過去指導した例で言うと、筑波大学はAC(総合型)では実績(探究活動やレポート)を見る印象ですが、学校推薦になると、「学校が推薦する」という言葉通り、受験生がアピールすることが難しくなり、なかなかそこを見てもらえません。合否は、まず当日の小論文、そしてその小論文の口頭試問も含む面接、場合によっては出身学校とその評定も見ているのではないか…という印象です。
つまり、同じ大学でも、入試方式で選抜ラインは変わってくるということ。
なので、まず、私がお願いしたいのは、「総合型なら大丈夫」などと思わず、大学ごとに情報を集めること。そして、自分の条件に合う受験方式を探すことです。
また、全員に共通する対策は、「志望をしっかりかためる」ということです。これも固まっていれば何でもよい、ではなく、「合格させたいような志望理由を書く」ということになるのですが、少なくともこれだけやればよい…というようなことではないことは理解しておいてください。
では、次回は志望理由書の書き方についてまとめます。
ですが、今まで書いたものがありますので、読んでおいてください。