今日は単語の学習方法について考えます。単語は英語や古典において、もっとも即効性のあるものです。これだけでいいわけではないけど、とにかく重要。その学習方法を考察してみます。
大学受験や高校受験だと、夏休みを前に、「基礎・基本の徹底」なんていう言葉がどんとあふれてきますよね。
「基礎・基本」て何?
なんて私は思います。
単語や文法が基礎で、長文読解や英作文が応用だったら、中学生の間は長文読解や英作文なんていっさいやらずに高校生にならせて、高校3年生になってからはじめて長文を読ませればいいんじゃないか、と私は言いたくなります。
だから、「基礎・基本」の中には、読解もあれば英作文もあるわけです。
ちょっと話はずれているかもしれませんが、だから、夏だからといって、「単語」「文法」に終始してはだめですよ。中心が「単語」「文法」であったとしても、読解や問題演習ふくめて、全体に手をだすべきです。
という前提で今日は、単語の学習を考えてみましょう。
まずは「単語」と「文法」のどちらを優先するかという話です。
「単語」か「文法」か
全部の分野に基本があるよね、読解も同時にやらないとダメだよねということを前提として、それでもどちらかを優先したいとしたら、どっちをとりますか?
わかりにくい?
そうですね。
質問を変えましょう。
どちらを優先したら長文が読めるようになるでしょう?
得点をあげるには、両方それぞれ必要です。
文法をやれば文法がとれる。
単語をやれば単語がとれる。
どっちが多く出るかというような質問になってしまいます。
だから、
長文が読めるようになるには文法か単語か、です。
答えは、圧倒的に単語です。
細かい文法がわからなくても、単語がわかれば意味はだいたいとれます。
逆に文法がわかっても単語がわからなければ、意味がとれるはずがありません。
一文に不明な単語が二個あるとその文の意味がとれなくなる可能性がぐんと上がり、そういう文が二文あると、混乱する可能性がぐんと上がります。
赤ちゃんは文法は知らず、単語を覚えているはずです。文法は経験。積み重ね。最後まで教わらずに身につけます。
私たちは赤ちゃんではないから文法を学んだ方が早いとはいえ、即効性を求めるなら絶対単語優先。
辞書が引ける試験と同じになるわけです。
単語が頭に入るって辞書ありと同じですよね?
ただ、この話は文法をやらなくていい、ってことではありません。結局、単語も文法も長文も全部やらなくちゃいけない…という中での話。
そして、もうわかっていると思いますが、「夏休みには単語だけやれ」なんてことではまったくなく、「即効性を求めるなら単語」というたったそれだけの話でしかありません。
単語集は一冊?そして何を選ぶ?
とりあえず、「即効性」「自信がほしい」となると、単語集がほしくなります。
「単語集なんて邪道!辞書を引くんです!」というまじめなご意見はもっともですが、「覚える」という観点からは単語集は必要です。
だって辞書全部覚えている暇ないし。
リストがなければ覚える作業そのものが始まりません。
だから、辞書の話はおいておいて、単語集です。単語集は大きく分けると二種類あるのです。
それは記憶の仕組みが二種類に分かれるからです。
記憶には「覚える」ことと「思い出す」ことの両方が必要です。
だから、人は単語集を作るにあたり、意識的にか無意識的にか、どちらかを選んでしまっているんです。
つまり、
覚えやすい単語集
思い出すための単語集
です。
わかりにくいかな?
覚えやすい単語集=意味などでまとめて整理している単語集=分類型
思い出すための単語集=出る順などランダムに並べている単語集=チェック確認型
です。
イメージできました?
だから、単語集って厳しくいえば目的にあわせて選ぶべき。
もっといえば、両方必要ってことになりませんか?
とはいえ、限られた時間の中で単語集を2冊使うっていうのは現実的ではありません。では、どちらがいいのか?
これは難しいです。
人による、とも、使い方による、とも、勉強法による、ともいえるでしょう。
だから、これもどっちが正しいではないんです。
- 勉強の効率を考えると単語集はほしい
- 単語集には種類がある=それぞれメリットデメリットがある
- だから、選んだものによってどう学習するか、どう補強するかが異なる
ということです。
これから種類別に説明していきますが、私は国語の教員です。このことをベースに、英単語と古語単語などをイメージして説明します。
英単語などの場合には、「音読をどうするか」「例文をどうするか」「CDを聞くか」「スペルをどう覚えるか」などなど、そういった意味での使い方にも言及する必要がありますが、山ほどある英単語集をイメージして説明すると複雑になるので、今回はこのあたりの説明は基本的にはなし、で、多少触れるかも…ぐらいにしておきたいと思います。
チェック型単語集
特徴
- 出る順などランダムに並んでいる
- 長所=覚えたものを確認するためには使いやすい
- 毎日のようにチェックできる
- 短所=ひとつずつが独立していて、単語ひとつずつを覚えていく形になる
- したがって、その単語の類義語や対義語など周辺を学習しにくい
- 忘れたときに思い出す手がかりが少ない
といったところでしょうか。
こうした単語集を使うイメージは、「電車の中でながめている」という感じでしょうか。
ひとつずつ覚える→覚えたかどうか確認する→だめだったらその単語を覚えなおす
という感じですね。
古文単語集なんて、ほとんどこっちのタイプだと思いますから、覚えにくいことは間違いありません。
対策
- 語義などをとにかく意識する=思い出す手がかりを作る
- 類義語や対義語に必ず目を通し、できればそこからその単語に飛んだり、類義語をまとめたノートを作ったりする
- 例文を必ず読む。ただでさえ、単語と意味だけになりやすいので、例文は必ず音読する。
- 長文読解を多くして、できるだけ単語に出会う回数をあげ、単語のイメージをつくる
理想的には、覚えるための「分類された単語ノート」を作れてしまうといいんですよね。古文単語は私の科目なので、国語の真似び、のページで、単語を意味別に分類して整理するシリーズをはじめる予定です。
分類型単語集
それに対して、分類型単語集です。
整理して箱にいれてある状態ですね。理にかなっています。
www.manebi.tokyo
特徴
- 意味別に整理されていて、似た単語がまとまっていて理解しやすい。
- 比較的ながめの中文、長文が載っており、単語を覚えるとともに話を覚えるイメージで取組みやすい。
- だいたいどんな類の意味なのかが頭に残りつつ細部の意味をつめていける。
- 短所:覚えているときは類推ができて頭に入りやすいが、確認する時にはそのままでは類推できるが、単独で出てきたときに本当に覚えているか確認しにくい。
こちらは、簡単にいってしまえば、どうやってチェックするか、というのが決定的に不足します。あるジャンルの言葉をまとめて覚えるというのは、記憶の観点からいえばとても覚えやすいのですが、(そもそも箱に入っているわけですから、箱→中身という構造になっています)逆に言えば、箱からそれが出て、ひとつだけぽつんとあるときに気付くか、という問題が起こります。
箱の中にあるときは、ほかの語との関連で理解できるけど、箱から出たとき、わかるのか、ということです。端的にいえば、
覚えているかどうかの確認には不向き
ということです。
対策
- 単語集を使って思い出すときは、白紙からすべて(単語と意味の両方、場合によっては長文全部)を思い出すように意識する。つまり、「単語があって、意味を思い出す」やり方では記憶は定着しにくく、その場だけできることになりやすい。
- 単語カードやアプリなど、ランダムにならべかえたものを独自でつくる。チェック用を別に用意すればよい。
- 単語テストのようなものがあるなら、積極的に使う。
いずれにしても、単語ができれば、いろいろなものの点数が直接あがっていくことにつながるので、自信をつけたい方はまず、これをやることをおすすめします。
夏のタスクのひとつにしてくださいね。
「英単語の語源図鑑」はおそらく一冊では単語集としては不足すると思います。でも、こういう覚え方も必要。やっぱり、単語集も2冊ほしいってことになるのかもしれないですね。
では。