ドラマ「ドラゴン桜」が始まりました。生徒からは、感想を求められたりしていますので、今日はちょっとそういうお話をしていきます。
学習方法というか、成績をあげる方法というのは、永遠のテーマで、こういうドラマがなかったとしても、「先生、どうやって勉強すればいいですか?」という質問はひっきりなしにやってくるわけです。
こういう学習方法がからんだ漫画やドラマというものも、定期的にニーズを集めているわけですが、今日は、こういうドラマや漫画の学習方法について、検討していきたいと思います。
- 英単語を分解して覚える~効果的な学習方法について
- 小テストの点数はどっちがとれるのか?「出るところをやる」VS「余計なことまでやる」
- 目標は何か?何のために学習をするのか?
- 自立すること~自分で気づき、考え、行動する
英単語を分解して覚える~効果的な学習方法について
たぶん、ですが、この間、ドラゴン桜で、英単語を分解して、語源的なことを着目する学習が紹介されたようですね。
ただ、覚えるのではなく、意味とかを考えながら周辺情報を含めて理解していく。
このサイトでは、語源図鑑を紹介して、推奨してきました。
だから、当然「ドラゴン桜」というドラマは素晴らしい、という結論にいくのではないかと思うんですが、実はそうではありません。
語源図鑑はとても意味のあることで、大事な、しかも効果のある学習なんですが、現実はあれだけではだめですね。つまり、何らかの英単語集を使いながら、補足的に語源図鑑を使うということになると思います。
それにしたところで、
「要するに、メインとなる英単語集を選んで「ドラゴン桜」のいうように、語源図鑑とかを使っていけば完璧ってことですよね?じゃあ、やっぱり「ドラゴン桜」はすごいってことでいいですよね?」
という意見が出てくるような気がします。
でも、それはそうなんですけど、多くの生徒は、実際はそのすごいことをやれないんですね。
それは、なぜかというと、「大変だから」です。つまり、ここで提示されているのは、
- 大変で、一手間かかって、目先のものからすれば余計だけど意味がある学習方法
- お手軽で、とりあえず目先のものを完璧にする学習方法
のどっちを君たちがとるか、ということなのです。
小テストの点数はどっちがとれるのか?「出るところをやる」VS「余計なことまでやる」
テレビだけ見ていると、
「こんないい学習方法があったのか!やるしかないね。」
なんて、簡単に思います。
ただ、実際にやってみればわかるのですが、ああいう学習方法、それは私が紹介しているような学習方法でもあるんですが、たとえば、英単語だけでもこんなことになります。(詳細はどの単語集使うかで、だいぶ変わるんですけど、おおよそ次のようになります。)
- まず、単語に行く前に文章とか、例文で覚えようね。
- まず、日本語をイメージして、リスニングして、そして、シャドウイングしよう。
- そしたら、日本語を見て、英語で言えるかどうかチェックしてみよう。
- 次は書くよ。語源図鑑とかも使って、同じ語幹、語尾を使った言葉も見てみようね。
- 類義語や対義語も整理しよう。使い方の違いをわかろうね。
- じゃあ、書いてみよう。IMRシートとか使ってみようね。
(IMRシートは以下)
結構、面倒でしょ?
これを、たとえば、英単語の小テストに向けて、やってくれますか?
でね。やっかいなのは実際にやってみた場合なんです。これ、実は生徒で実験済みで、あくまでも「同じ学習時間を与え、直後にテストした場合」なんですけど、もちろん範囲が別になっているので実際は範囲の難易度も影響はしているんですが、実は、さっきの「大変で余計なところまでやる勉強」と「テストで問われるところだけをシンプルにやる勉強」を比べた場合、どっちが成績が上がるかというと、残念ながら、「テストで問われるところだけをシンプルにやる勉強」の方が平均点が高くなっているんです。
意外ですか?
全然意外ではありません。
たとえば、「英単語が単体で出て、日本語訳を書く、選ぶ」問題の場合、そう知っているなら、眺めるだけで、単語集折ってただ覚えるで十分。
仮に、英単語を書いて覚えるなら、英単語を紙に書き続ければ十分なんです。
たとえば、君たちがいつもやる学習方法でやると範囲が5分で終わるとします。余計なことまでやると20分かかるとしましょう。
与えられた時間が30分なら、今までのやり方なら6周、余計なことをやると1周で終わり。
だから、実は今まで通りやった方が点数は高くなるんですね。
それを本能的に、あるいは経験的に知っているから「最善の策」として、あなたは学習方法をそうやって選んできているわけです。つまり、あのやり方は素晴らしいけれど、「余計なことが多くて時間がかかり、実際には点数をとるのに非効率である」ということ。
もちろん、この話には続きがあります。
目標は何か?何のために学習をするのか?
これ、あくまでも直後に試験をした場合の話です。
すでに実際に試しているのですが、まったく同じ範囲を翌日、あるいは数日後に抜き打ちで試験した場合、結果はまったく逆になるのです。
さっきの話は、条件として
- 直後に試験をする
- 範囲が確定している=出るところがわかっている
- どんな形で問われるかわかっている
- 同じ時間しか学習時間を与えない
というものでした。たとえば、上の3つを同じ条件にして、最後だけ「3周しかやっちゃいけない」と変えれば、結果は逆転しただろうと思います。
しかし、その場合でも「15分」VS「1時間」です。
だから、君たちは15分を選択するわけです。結果が出るなら、それでいい。
しかし、その「結果」はあくまでも「小テストの結果」であって「入試」とか「受験」ではないわけです。
ここで重要なのが、「目標」意識ということになります。つまり、小テストなんかどうでもいいわけで、何のために勉強しているかが大事。
たとえば、小テストを完全に消してしまいます。
- 10分後に覚えていられるけど、次の日に忘れる学習方法
- 時間はかかるけれど、数日後でもちゃんと覚えている学習方法
と書けば、どちらを選択すべきか、はっきりわかってくるわけですね。
でも、実際には、人間はどうしても「目先のどうでもいいこと」が「ずっと先の大事なこと」に勝ってしまうんです。
ここを改善できるかどうかがとても大事なんです。
こう書いていくとわかると思いますが、「ドラゴン桜」を便利な学習方法を教えてくれるドラマとしてとらえて、「楽に成績をあげる」と考えていると痛い目にあいます。
なぜなら、やってみるとわかりますが、面倒なんです。
でも、成果はあがるんです。
一手間、二手間かけてあげることで、より効果的になるんです。
だから、実は、何も考えず「どうやれば成績はあがるのか」ばかり考えていると、結局成績はあがりません。
あのドラマは、すでに東大に入ると決意した人が、「東大に入る」ために、必要なことをこなしていく、という前提が作られているわけで、
「何をやればいいですか?」と全部聞いてくる人とは意識が違うのです。
自立すること~自分で気づき、考え、行動する
これは教育ドラマ、教育漫画全般の問題点なのですが、登場する生徒たちは、たいていの場合、目標があり、あるいは話を聞きます。
古い世代なので、「金八先生」がまさにそうなのですが、どんなに荒れている生徒でも、金八先生が話すと真剣に聞く。なんなら、先生の目を見て、真剣に聞く。
現実の教室はそうではなくて、かなりいい子でも、下を向いていたり、上の空だったり、聞いているつもりでも、何かをしながら聞いていたりします。
というか、大人の常識を含めて、「先生の話は長くて、つまらなくて、うるさい」ですよね。校長先生の朝礼の話なんていうのが、その典型として扱われます。
しかし、あなたが自立しているならば、まずは「聞く」必要があります。聞いた上でつまらなければ捨てればよい。つまらないと切り捨てればいい。
でも、現実は「つまらないに決まっているから聞かない」。だから、どんなにいい話をしていても生徒には入っていかないわけです。
もちろん、それは先生自体の信頼に関わるものであるという意見は、当然受け入れます。教員としては。
でも、学ぶ側にそれでもなお、アドバイスするなら、「まず聞きなさい」ということです。
ドラゴン桜に戻りましょう。
あの生徒たちは
- 目標が明確である。
- そこにたどり着く効果的な方法を探している。
- いいコーチがくる。当然話を聞く
- 試行錯誤をしている。
というこれらを生徒がすでにやってるわけですから、成績が上がるのは自明です。 この4つが難しいんですよ。
実際の生徒は、
- そもそも目標を絶対にしない。「できたらここ」とか「ここでもいい」とかにしてしまう。
- 方法は探していても、『何やれば成績あがりますか』みたいな、唯一絶対の方法を探しているし、自分なりに試してみる気がない。
- 塾が言えば、素晴らしくて、そうでないものはダメ。あるいは、先生であれば、全部素晴らしい方法。つまり、最初から話を聞かない。あるいは聞いたらそのままで自分なりに考えない。
- とにかくチェックしない。言われた通りにただ突っ走る。だから、年間計画を平気で作れて、うまくいこうがいくまいが、途中で見直さない。あるいは、どうせ計画は作れないから、ただ考えずにやる。
みたいなことが多い。
これは悪口でも批判でもないです。スタートはみんなそうだから。そこから、自分で考えて、試して、やって、やり直して…とやれるようにするわけですよね。
でも、あの漫画やドラマは、そこが最初から出来てるんだから、そりゃ成果は上がります。 自分自身としては、教員の仕事なんて、その状態に導くことにつきると思うので。自分の教えた通りにやる必要はないし、逆にいえば、それじゃだめですよね。そうじゃなくて、自分で考えて、自分で探して、自分でやれるように導くのが仕事のほぼほぼ全部ですから。
ある意味では、自分自身が「気づき」「考え」「行動する」ということができるなら、おそらく漫画やドラマが気づきをもたらり、行動の変容につながるでしょう。
しかし、「これやれば受かるんですよね?」的に真似をすると、意外と成果があがらなくて、いやになるでしょう。
だって、英単語の小テストの直前に、関係ない語源図鑑見てくれる?って話ですから。
でもね、こういうドラマをきっかけに、こういう話を書けて、あなたが自分の目標意識から考え直してくれるなら、それは当然素晴らしいことですね。