今日は、教科別の学習方法のアウトラインを書いていきます。最初は英語。英語の具体的な話ではなく、おおよその学習方法の話ですので、細かいところは英語の先生に聞きましょう。
長らくほったらかしにしておいた教科別の学習方法に取り組むことにします。
最初は英語です。
現在の大学入試において、英語の重要性はきわめて高く、英語ができるかどうかが大きく合否を分けています。
もちろん、高3になってから詰め込むこともできなくはないのですが、そのことによって、数学や理科・社会などが遅れ、結果として国語や共通テストのみの科目などに影響が出るというのはよくあるパターンです。
というわけで、英語の学習方法について、簡単にまとめておきます。
すでに英語の苦手な人に向けて一度出していますので、こちらもどうぞ。
- 「方法」と「分野」を重ね合わせて考える。
- 1 学習の手順「話す」「聞く」「読む」「書く」~「日本語」「英語」の順番で。
- 2 英語の分野ごとの目安
- 外部検定をどう利用するか?~まずは「英検」。最終的には…
「方法」と「分野」を重ね合わせて考える。
英語の学習法法が混乱を招くのは、いわゆる「学習の手順」「方法」と学習する「分野」の話が混同されていくからだと思っています。
たとえば、受験的な指導が強いと、「単語と文法しっかりやらないとだめだよ」みたいな話になり、逆に生きた英語の感覚が強いと「まずリスニング。そしてスピーキング。文法なんていらないよ。」みたいな話になります。
これは不幸なすれ違いだと思います。
なぜなら、本来、両方大事で、しかも、両立できる話だからです。
どうも英語の先生の様子を見ていると、「受験英語派」と「生きた英語派」に別れて対立が始まるんですが、それが「単語・文法重視」と「リスニング・スピーキング重視」であるなら、本来、これは対立項でないんですね。
ここに英語教育の不毛なところがあるような気がしています。
「単語・文法」か「長文読解」かなら対立ですし、「リスニング・スピーキング」か「リーディング・ライティング」かならこれも対立なんですが…。
というわけで、まずは、このふたつ、つまり「リスニング・スピーキングを重視する」ということと、「単語・文法・長文・話す、書く、というジャンルごとに整理する」という二つが両立するんだ、という話から書いておきます。
1 学習の手順「話す」「聞く」「読む」「書く」~「日本語」「英語」の順番で。
言語を習得する際に重要なのは、まず「聞く」ことです。
赤ちゃんの言語獲得を考えてみるとわかりやすい。
最初に「聞く」。そのうち、ある言葉がある物を指すことを理解します。
次に「話す」。聞いたことを話して言えるようになります。
そして「読む」。だんだんと字が読めるようになります。大前提は、それを聞いてわかる、ということ。それが文字としても理解できるようになります。
最後に「書く」。こうして、話したいことが書けるようになるわけです。
つまり、「聞く」「話す」「読む」「書く」の順番で、言語を獲得しているわけです。
と、考えてみると、
- いきなり長文を読む
- 単語集を見て覚える
- 文法の問題を書いて答える
とかは無理があるわけです。
たとえば、単語についても、まずは聞いて、話せるようになる。
水曜日が「ウエンズデー」と言えないのに、いきなり「水曜日」を「Wednesday」と書こうとすることに無理がある。
正しい順番は、
- 「水曜日」が「ウエンズデー」である。
- 「ウエンズデー」は「Wednesday」である。
です。
決して、
- 「Wednesday」は「水曜日」
- 「水曜日」は「Wednesday」
ではありません。ちょっとしたことですが、とても大事なことです。
たとえば、具体的な物の名称や身体の動作を表すような単語である場合、私たちは日本語を使っていません。
たとえば、机そのものをみて「デスク」と聞く中で、「ああ、デスクだな」と理解するのであって、決して「デスク」を「机」と翻訳した上で「机そのもの」がイメージされるわけではないんです。
つまり、あなたが英語ができるようになったときは、たいていにおいて、いちいち日本語がイメージされるわけではなく、「英語を聞けば、そのままわかる」という状態になるわけです。
そう考えると、いかに間違った学習をしてきたかわかると思います。
もちろん、抽象的な語彙になってくると、浮かぶもの、イメージするものがないので、その代わりとして日本語が必要となる局面もあるでしょう。そういうものでさえ、本来、「個人」と「individual」は別の言葉であり、持っているイメージが異なります。「自由」にしたら「liberty」と「freedom」でふたつあるわけだから、訳せば訳すほど困ってしまいます。逆もありますね。「love」を「愛している」「好き」「大切にする」、どう訳すかで困ります。「brother」程度だって、「兄」か「弟」か困ってしまいます。
というわけで、みなさんが思っている以上に、リスニングは重要です。そして、それをシャドウイングとか、ディクテイションなどと言うように、繰り返して言えるようにすることが重要です。
そして、その上で、「読む」とか「書く」とかに入る。
つまり、学校の授業が「教科書」、「読むこと」があるとしても、その前提として、「聞く」「話す」をやりましたか?という話になるんです。
思っている以上にやることは多い、ということかもしれません。
それでは、この根本的なことをベースに、それぞれの分野をどう学習するか考えていきましょう。
2 英語の分野ごとの目安
英語の分野というのは、簡単に言えば、どういう参考書を使うか、ということです。
ざっくりいえば、
- 単語集
- 文法書
- 読解=過去問題集や読解型問題集
ということです。もちろん、「海外のラジオ番組を聴く」とか「英語で映画を見る」とか「英字新聞や海外のネットニュースを読む」などもあるでしょうが、これは、この区分けでいえば、最後の「読解」にあたります。英語を使って、何かを得るわけですから、大きくわければここです。
もちろん、国語のように分解すれば「評論」「随想」「小説」「詩歌」などとなるわけです。これだって、国語というと当たり前に感じるかもしれないけれど、「古典」では平気でこういう区分けを無視するし、「評論」とくくってるけど、本当はもっと「~論」というようにわけることだって必要です。
特に英語は、現代文との相関が強いので、現代文の、さらにもって細かい区分けでやるぐらいでちょうどいいんですが、まあ、とにかく第一段階としては、こうした3つに分けられますね。
では、ひとつずつ見ていきましょう。
単語~整理して覚えることとチェックしていくこと・「言える」から「書ける」へ
単語集については、一度まとめています。
まずは、結構大事なこととして、単語集は本来、2つ持ってもいいということです。
ひとつは整理して覚える、ということ。要するに類義語や対義語、あるいはそのテーマに沿って文章ごと単語を覚えた方が効率はいい。
これは、たとえば「速読英単語」、あくまでもちゃんと文章部分を使う場合ですが、こういう思想になっています。
整理する型なら語源図鑑。
もうひとつがチェックすること。この場合は、連想でなんとなくわかると困るので、ランダムにならんでいる必要があります。たとえば「ターゲット」なんていうのがこういうのの筆頭です。
簡単にチェックすると、たとえば「品詞別」とかそんな感じでも整理されているのは、前者、出る順、難易度順みたいな感じが後者です。一概に分類できないかもしれないけれど。
いずれにしても、「覚える」「チェックする」という二つのタイプがある、ということは意識しておいた方がいいと思います。
単語も「聞く」から「話す」、そして「読む」から「書く」
さて、これを前提としてさきほどの「聞く」「話す」が優先であるということを意識します。
これはたとえば、よくやりがちな、英単語集を使って「英語を見ながら、訳をかくして言えるようにする」というものが形としてはあまりよくないということになります。
この順番を意識した場合、
- 日本語を意識して、訳をイメージしながら、英語で聞いて、話す。
- 訳を見て、英語を言えるか確認する。
- 言えるようになったら、書けるようにしていく。
こうなるはずです。
これを見ていると、「英単語を見て訳を言う」という順番が欠落していますが、まずは、この3つが重要で、「英単語を見て訳を言う」というのは、その後の作業であると思うんです。
おすすめしたりするわけではなく、これが意識されている単語集といえば、「ユメタン」です。そして、たとえば「速単」を使うとするなら、まず、「日本語訳をカンニングしてそれから英語を聞く、あるいは音読する」という感じ。その上で、「日本を見て英語を言えるようにする。そして書けるようにする」。
そもそも、英語を見て訳を言えるかというのは、長文とかで出た時に確認できますから、長文を同時に勉強していればあまり意識しなくてもいい部分だったりします。
文法~白紙から例文を「言える」。2年生終わりまでに2~3周を。
続いて、文法です。
まず、文法書をしっかり持っているでしょうか。
「チャート式」とか「vintage」とかです。「NextStage」とか「頻出」とか「レベル別」とかそれこそいろいろあるでしょう。
これを時期としては、2年の終わりぐらいまでに2~3周ぐらいして、ほぼ理解しているところまできてほしいわけです。
で、これなんですが、参考書によっては、「説明、解説がわかりやすい」とか「問題を解いていく」とかいろいろ癖があるんですね。
それはどれがいいかというのはそれこそ好みになるんですけど、大事なことは、
- まず、目次とか見出しが言える。
- 代表的な例文を白紙から言えるようにする。
という二つです。極論を言えば、代表的な例文というのはせいぜい300ぐらいの基準です。まあ確かに、細かいところまで知りたいんですが、それはたいてい語彙のレベルまでいくもので、骨格にあたるものは、300もないぐらい。
というわけで、それを何にもない、つまり、見出しもない状態から、頭の中で展開できるようにします。つまり、
- 日本語で見出しが言える。
- その例文が言える。
- その例文が書ける。
というところが重要です。逆に言えば、どんなに何周もしても、あるいはどんなにその問題集の正解、たとえば( )に入るものが選べても、例文が言えないと仕方がないんです。
そのためには、
「日本語訳を頭にイメージしながら、ひたすら音読」
というのが大事。もし、音源があるなら、聞いて、シャドウイング。というのがいいと思います。
リスニングと読解・スピーキングと英作文
続いて、リスニング、それは読解なんですが、リスニング・読解についてです。
これ、実は低学年ほど、しつこくやってください。
テストの点を速効であげるには、「単語」と「文法」ですが、英語力をきちんとあげるためにはなんといっても「リスニングと読解」です。
というのは、読解は手続き記憶、単語や文法は陳述記憶だからです。
つまり、3年生になって、慌てて「聞く」「読む」「書く」をやろうとしても間に合わない。
逆に言えば、「生きた英語」「使える英語」で指導してもらった場合、受験を意識した時に、単語や文法を3年になってからやり直す…でも、間に合う可能性があるんですね。
というわけで、現段階から、「聞く」「読む」ことは徹底して、ルーティンにした方がいい。Youtubeとか、すごいのがいっぱいあるので、使うべきだと思います。
で、「読む」というベースで考えた場合、難しい内容になると、なかなか頭に入らないですよね?
それこそ、フランス語とかドイツ語とかをわからないからって聞いても何にもならないですよね?目の前に物とか動作とかあればともかく、わけもわからずフランス語の文章ながめても何も起こらない。
なので、まずは「日本語訳」を読みます。そして、日本語だけで、だいたいの話の中身、話の順番を覚えます。
そしたら、それをイメージしながら、音源があるなら「聞いてシャドウイング」。音源がないならがんばって「音読」。
これだけでいいと思います。
たとえていうと、英語の映画を、まず日本語翻訳バージョンでみて、内容理解して、そしたらひたすら、英語版で聞いて、真似して言う。日本語がわからなくなったとき、内容がわからなくなったときだけ、日本語訳にわかる。
なんて言ったかわからないという段階があるなら、
- 日本語で映画を見る。
- 英語字幕で映画を見る。
- できるだけシャドウイングする。
- 最後は英語字幕を消して聞いて、シャドウイング。
こんな感じです。
長文読解なら、「映画」の部分を「日本語訳」に変えればいいわけですね。
問題集も紹介しておきます。
おすすめバージョン。
続いて、そうすると「言うこと」「書くこと」が求められます。
初期段階は、
- 日記
- その日に習った文法の例文を単語を変えて書く
というレベルでいいと思います。
これは究極を言えば、「文法」です。しっかり構文を暗記して使えるようにするわけですね。
続いて、長文読解をしたら要約をするといいでしょう。この際、できるだけ本文を写さない。
だって、音読して言えるようにしたわけだから、まずは暗唱のように言えないといけない。それを利用して、「言う」そして「書く」。
要約は、本文の表現や語彙を活用できるので、ハードルが低い。
それができたら、次は、自分の意見を言う、ですね。
絶対にだめなことは「スピーキングやライティングはレベルが高いから、3年になったら」あるいは「文法が完璧になったら」です。
中学生には中学生の習った範囲で、
- 文法を言えるようにして、単語を変えて使うようにする。
- 長文の内容を言えるようにする。
ということができるはずです。
「自分の意見」というのは、ちょっと難しいところがありますが、要約までは必ずできますので、高1でも高2でも、落ちこぼれていても、自分のレベルで、しっかりスピーキングをしましょう。
スピーキングっていうのは、シャドウイングです。
それをちょっと単語を変えて構文を使う。それが文法の理解、ですね。
しっかりやりましょう。
意外と大切なのは「現代文」力。日常会話から専門的な内容へ
さて、もうひとつ忘れられがちで、語られない部分が文章のレベルです。
あなたが、早稲田とか慶応とかを目指すなら、
「英語ができるかどうか」
だけではないんです。
つまり、
「どんなに日本語に訳しても書いてある内容がわからない」
という状態が起こるんです。
しかも、難関大学ほど、内容把握に重きがおかれる傾向があります。
つまり、どんなに英語がわかって日本語に置き換えることができても、「書かれている内容がわからないのでできない」という事態が起こります。
私は国語の教員ですが、むしろ賢ければ賢いほど、英語の長文の質問を持ってきます。それは「内容がわからない」という自覚があるから、日本語訳を見せて私に解説させるわけです。
これは何を言っているか
外部検定をどう利用するか?~まずは「英検」。最終的には…
こう考えていくと、四技能に特化した英語外部検定はすごく重要です。
初期段階は英検がとっつきやすいと思いますので、高2の早い時期に2級合格できるように取り組むといいでしょう。
英検は大学入試でもしっかり使えるんですが、難しいのは、ラストです。大学入試は、準1級目標ではあるんですが、準1級に受からなくてもそこそこ成果が出せるんですね。つまり「2級の上位合格、準1級にとどかなくてもなんとかなる」という感じ。
となると、ラストは、英検だと、
- 2級受かったけど、スコアをあげるために、2級レベルの問題で高得点をとるか。
- 準1級にチャレンジして、不合格でもその難しいレベルでスコアを狙うか。
というのが迷うんですね。
英検以外のすべての試験は級ではないので、同じ試験でスコア判定をする。つまり、簡単な問題から難しい問題までなだらかな問題で、スコアが判定できます。
で、そういう中で選ぶと、「GTEC」「ケンブリッジ英検」「TEAP」がおすすめ。この3つが高校の教科書の語彙との相関が高いからです。留学するなら「IELTS」とかなんですけど、帰国子女とかじゃないかぎり、語彙がずれます。
GTECは受けやすくて値段も低くていいんですが、入試では認めてないケースが多い。というわけでだめです。学校で課されているなら、四技能対策としてはいいんですが、最後は違うのにうつるってことです。
残りはケンブリッジ英検かTEAPになります。上智を志望に入れるとTEAP一択になります。他の大学でも使えるし。
これらと英検との選択になるはずです。
まずは学校でGTECがあるなら高1高2はそれでがんばって、英検も並行し、そして高3になったら志望で、地域も含めて検討するということになると思います。
というわけで英語の話でした。