マインドマップについて、説明してきました。本質的にはマインドマップそのものが重要なのでなく、「マインドマップ的な方法論・発想術」を持っているかという話ですが、その最後の、「発想」について、まとめます。
マインドマップについての話をシリーズで進めてきました。今日は一番、ポピュラーなマインドマップの使い方ともいえる、「発想」です。この手の発想術は、さまざまな手法が確立されていますので、ちょっと後回しにしてしまいました。
今日はそのあたりを説明します。
マインドマップの全体像はこちら。
続いて、文章や講義の整理としてのマインドマップ。みなさんのテストのためのノート術にはこれが一番近いと思います。要約の仕方でもありますね。
さらに、マインドマップを使った逆算思考についてです。算数、数学の苦手な人への学習方法でもあります。
そして、今日は「発想」です。
発想を広げるには、いろいろな手法がある!
さて、アイディアや手法、タスクなど必要なことを「発想」する方法は、世の中にあふれています。それこそ、私が書かなくても、世の中にはこういう手法について、論じた本やサイトがたくさんあることでしょう。
大学に進んだ後、社会人になった時も含めて、実際に必要な学習はこういうことが多いからです。
では、アイディアの浮かぶ人と浮かばない人にはどのような「差」があるのでしょうか。私は端的にそれは、「経験」の差だと思っています。
- アイディアを出すような経験をしたかどうか。
- アイディアの元となる知識や経験を積んでいるかどうか。
- アイディアを実現するための方法を考えて来たかどうか。
こんな経験の差ですね。
では、アイディアや実現の手段が浮かぶ人は、高校までの間に何か決定的な体験をしたのでしょうか?
もし、そんなものがあるとするなら、ある先進的な課題解決型の学習ばかりをしている学校の卒業生は、基本的にアイディアが出て、そうでない受験詰め込み型教育をしている学校の卒業生は、まったく社会で使い物にならない、ということが起こるはずです。
すごくいい学校と、すごく悪い学校では、全体統計で多少のそういう傾向が出るかもしれませんが、すくなくとも、全員が優れていたり、全員が劣っていたり、そんなことにはなりません。
それは、同じような体験をしていても、そこにどういう意識で、どう取り組んだか、という差があるからです。
主体性ですね。
アイディアの出る人は、何事においてもそういう発想をしています。「理想を実現するためには何が必要か」「そのためには何をすればいいか」
これから紹介するような様々な方法を知らなくても、そういう思考ができればいいわけです。
逆に言うと、それさえもできないから、「方法論」が必要になってくる。そういう練習をするやり方、練習方法が確立されてきたわけですね。でも、これさえも、練習にどういう気持ちで取り組むか、で決まってくるわけです。
ブレスト=ブレーン・ストーミングとKJ法
大学生や社会人になって一番聞く言葉は「ブレスト」でしょう。言葉の使い方としては、KJ法のところまでふくめて、ブレストという場合と、とにかくアイディアをどんどん出す段階をブレストと読んで、それを整理していく、関連を探ってまとめていく作業をKJ法と分けて呼ぶ場合がありますが、使う私たちからすれば、定義とか名称とかはどうでもいい部分ですので、必要なことをまとめます。
また、本来、両方ともグループワークを前提としているので、ゼミとかでよくやることなんですが、当然、一人で行う場合にも「ブレスト」なんていう言葉が使われることがありますし、「それはブレストじゃない!!」と怒る方もいると思うんですけど、ここでは、目的が同じであれば、あまり細かいことは気にしないことにします。
気になる方は「ブレスト」「KJ法」「発想術」みたいなキーワードで検索すれば、正しいやり方や、ルールとか、教えてくれると思います。
ここでは、とにかく広義にとらえて、大事なことを書きます。
ブレスト=まず発想をカードに書きためる
まず、第一段階のポイントは、とにかく思いついたことを書きとめておくことです。この手法は「発想」、「整理」という段階を踏みますので、とにかく難しいことを考えず、どんどんあげていく。グループでやるときのルールとして「否定しない」というのもそうですし、「ありません」「同じです」が禁止されているのもそう。とにかく、何かを言わなきゃいけない、書かなきゃいけない。違う観点にうつってもいいから、何かを書いていくことが求められます。
もともとは、カードでやって束ねる、というのが主流だったんですが、最近は大きめの付箋を使ってどんどん書いていくということが多いと思います。
また、具体的なことを書くというのも大事。「時間の使い方を見直す」みたいなことだと、それで終わってしまいますから、「どう見直すのか」など具体的に書くように指示されるはずです。そうすれば、いろいろな見直し方があることに気づきます。「改善」とか「検討」とかもそう。どう改善するのか、検討したらどうなるのか、あるいは具体的にどう、どこまで検討するのか書かないとだめですね。
KJ法=そのカードを、似たグループにまとめて、関係性を見て全体に配置する
そこで書きためたことを、見出しのカードを作って、そこにまとめていきます。
「整理」です。
ランダムにさまざまな角度から出てきたことを、分類、整理していく。
それが終わったら、それを並べ替えて、俯瞰できる図にしていく。「=」でつないだり、矢印で変化を書いたり、対立を書いたり…。
そうして、自分たちの考えている問題点を見つけていくわけです。
8×8オープンウインドウ・マンダラート
こういう手法に対して、最初から発想の種類を軸に深めていくのが、8×8オープンウインドウの手法です。これをマンダラートと呼ぶこともあるようですね。オープンウインドウというのは、前回も紹介した原田先生の本に出てきます。
要は同じことです。3×3の9つのマス目を作り、それを同じように3×3で9個配置する。
まず中心の9つのマスの中心に、目標や実現したいことを書く。そうしたら、その周りの8つのマスに、そのために必要なことを書く。これで8つの必要なことが見える。
そうしたら、その周りの8つのマスの中心に、その8つを書き、そのために必要なことをもう一段深めて8つ書く。
これで、8×8の64の必要なことが生まれてくるわけです。
ブレスト、KJ法とは逆の、発想を広げていくやり方です。
5回のさかのぼりとマンダラート
この方法だと、ひとつについて8の関連を導き出すものの、実際には、さかのぼりは2段階です。これだと浅い可能性があります。本当は5段階ぐらい原因をさかのぼったり、やることを深めていくと一歩目が具体的になりますね。
私が見つけたマンダラートシートはこちら。
このプリント自体は私が作ったものですが、蜂の巣のような形にすることで隣接するマスは6つになりましたが、その分、深めたいことは隣接するマスに書くことで、どんどん深めることができます。
個人的な考えでいうと、たとえば、学校とか、全員にやらせなくちゃいけない、誤解を恐れずに書くと、やる気がないけどやれば形になるとするなら前者の8×8がいいと思います。
でも、もっと具体的に深めていけるなら、こちらの方が、より深める形になると思います。
作るのは簡単で、パワポでも、ワードでも、エクセルでも、要は6角形の図形を作ったら、あとはコピペしていくだけ。
すぐできますよ。
そして、それがマインドマップ
そして、それをマス目もなくして、白紙にして、ひとつの目標から思いつくことを連想ゲームのように幹を書き、枝を書き、さらに細かい枝を書き…というのがマインドマップ。
8×8にしても、マンダラートにしても、結局、形が与えられることでやりやすくはなるし、やらざるを得なくなるんですが、悪くいえば、数が決まってしまう。
だから、本当にやる気があるなら、自由に白紙から書いていく方が、何の制限もなくていいわけです。
ここまで、紹介したどの方法も、本質的には同じことを狙っています。やり方や形が違うことで、コツが変わってくるし、向き不向きも出ますが、要は、
- 無制限に発想して、後で整理して深める
- 多きな見出しを発想して、それぞれをさらに深めていくことで具体化する
という手法なわけです。
では、実際にこういう手法を使うのは、どういう場面なのでしょうか?
実現するアイディアや研究テーマを考える
まず、一つ目に浮かぶのは、課題研究のための「テーマ設定」などです。あるいは、課題を解決する「アイディア」を練り上げる作業。つまり、課題そのものを見つけたり、課題自体が見えたときに、具体的な方策を考えたりする作業です。
高校で考えるなら、自由研究のテーマを決めたり、課題研究のテーマや切り口を決める作業ですし、小論文でもたまにありますが、アイディアや政策を提示しないといけないような作業で、これが必要になります。
目標を達成するために必要なことを考える
二つ目は、実際にテーマが決まったり、作り上げるべきアイディアや製品、政策のイメージが決まったときに、それを実現するために、何をすればいいか、スモールステップに分解する作業に、こうしたプロセスが向きます。
特に8×8オープンウインドウ=マンダラートなどは、書くことによって64個の「やるべきこと」「タスク」にしていくわけですね。
実現すべきためにやるべきタスク64個が明確になれば、あとはやるだけ。
やって、だめなら、そのことを踏まえて、もう一度タスクを見直していく。
ある意味で非常にシンプルにタスクを見つけることができる手法です。
情報が少ないものを、形を変えて、広げていく~数学の応用問題など
最後はアイディアの実現に近いものなんですが、非常に抽象的で、漠然としているものを、さまざまな言い換えをしたり、形を変えたりして、発想を広げ、見方を変えるような作業です。
具体的なものとして、数学の、応用問題の一例をあげましょう。
数学が得意になりきらない人の場合、与えられたものから、解法が思いつかない、というようなケースが出て来るんですね。
こういう時に、自分のしっている公式と、与えられた式を見比べて、さまざまな形で改変していく。理想的には、出題されているゴールに近い公式や最後の手順、つまり「こうなったら、求められるんだけど…」が浮かんでいるといいんですが、こうなるためには、手元にあるものをとりあえず、いじって変えてみる、というようなことをやるんですね。
これも、非常にマインドマップ的です。
やってみたところで、展開しないものは捨てる。よさそうなものはとっておく。そうしているうちに、「これとこれを使えばいいんじゃないの?」みたいなものが見えると、展開の可能性がだいぶ見えてくるわけですね。
こういうのが、マインドマップの可能性なわけです。
繰り返しになりますが、マインドマップを含め、ここで紹介したものが絶対に欠かせないとか、できる人がみんなやっている、ということではありません。
でも、実際の形は違っても、実際に書いていなくても、これと似たようなステップで発想していることはほぼ間違いないはずです。
ですから、発想できない人は、こういう型に合わせて、「思考の訓練」をしないといけません。
ぜひ、チャレンジしてみましょう!