4月になって新学期となりました。心を新たにして学習に取り組むときに用意するのが、「新しいノート」。今日はノートづくりについて、考えていきます。
このブログは「学び方」を「学ぶ」こと。そして、「学び」とは「真似び」であって、主体的に取り組むことというスタンスでいます。
ですから、一番の目的は、こうした学習方法や学習計画に関わるものを掲載したいわけです。しかし、大学受験が進んでいくと、大学入試情報などのニーズが高まり、情報提供のタイミングを逃すわけにもいかず、どうしてもそんなものを優先して書いてきました。
4月になって、まだ受験情報に踊らされずにすんでいることと、新しい学年になった生徒と対峙して、学校でも基本的なことをもういちど伝える時期になってきたこともあり、学習計画や学習方法をきちんと書いていこうと思っております。
前回のノートの話は次のようなものでした。
このほかにも、マインドマップの項目で、ノートの作り方の説明をしてきましたが、今日からはノートをとる具体的なテクニックの話にうつっていきたいと思います。数が多くなりますので、今日はその第一回です。
- ここまでの復習~ノートは1科目最低3種類。そして、3年間使うノートを作る。
- ノートの工夫1 目次や索引にあたるページを作り、見出しのレベルをコントロールする。
- ノートの工夫2 「写す」のでなく、「整理」する=見出しを意識する。
- ノートの工夫3 覚えてから「まとめて」ノートに書く。
- ノートの工夫4 ノートを再現する=再現用のノートも作る
ここまでの復習~ノートは1科目最低3種類。そして、3年間使うノートを作る。
さてここまでの復習です。まずノートは基本的に3種類あることを書きました。
授業ノート=大事なことをとにかくメモして授業で使う
授業の板書を写したり、先生の話を写したり、予習として、訳を書いておいたり…とにかく授業に合わせて必要になるノートです。一般的にノートを授業で使っているとしたら、きっとこんな感じになっていると思います。
演習ノート=問題を解いたり、答えを書いたりするノート。あとでいらなくなるノート
数学あたりだとイメージしやすいと思いますが、計算用紙のように使うノートです。大学受験が近づけば赤本を解くにしてもノートが必要ですね。先生の発問に対して、自分なりの答えを書く、まとめる、としたら、どの教科もこういう部分が必ずあるはずです。
数学や物理で問題を解くとすれば、これはほとんど演習ノートですね。現代文の記述を書くのは、これも演習ノート。では、英語や古文の長文、本文の訳は?これも、演習ノートですよ。本番では、覚えるのではなく、訳すのですから、これは、自分でやるべき「演習」部分。先生が与える訳は、その正解例、といった感じ。
まとめノート=大切なことをまとめて、あとで大事な部分を確認するために使うノート
社会あたりだとイメージしやすいはずですが、あとで、「これさえ見れば全部あるから大丈夫」というような覚えるもとになる、あるいは確認するためのノートです。英文法とか英単語も、こういうものが必要になるからこそ、単語集のようなものを買いますよね?数学だって、もし、例題を何度も確認するなら、こうしたものが必要になりますし、公式とかだって、最低限のポイントはありますよね。
さっきも書きましたが、英語や古文の訳を、まとめノートのように覚えていると、これは最悪です。たとえていうなら、数学の例題の解き方を意味もわからず丸暗記して再現だけできるようなこと。こんな風に定期試験を迎えていては、英語や古文を読む力はつきませんね。
授業ノートは、演習的な要素とまとめ的な要素が入り混じって定期試験のために使われる。
このような3つのノートがあるわけですが、厳密にいえば、あとの二つの役割を、「授業」というくくりでごっちゃにしているのが、みなさんの授業ノートなんですね。うまくノートを作る人というのは、このノートを作るときに、「まとめ」的な部分をうまく取り出すことができる人といえると思います。
で、こうしたノートを、定期試験の前に、いい点数をとるために使って、そのあとはもう見ない。なぜなら、その試験の範囲はもう終わったものだからですね。だから、学年が終われば、捨ててしまうわけです。
英語や古典をイメージしてみましょう。教科書の本文があります。おそらく、ノートには、その訳のようなものが残されているはずです。全文になるか、部分的になるかは先生の方針やみなさんの個性によりますが。で、試験に出るような文法事項が説明されていたりします。単語とか連語とか、要は覚えなければいけない大事なことも書いてあります。古典でも似ていますね。訳があって、品詞分解した結果とか文法説明があって、単語の意味が書かれています。
で、これが定期試験が終われば、見返されることはほとんどない。
だって、そこは試験に出ないからですね。授業ノートは単元に合わせて作られていて、テスト範囲に対応します。だから、終われば見ない。
しかし、そこで先生が説明した、伝えようとしたことは、その単元でなければ出ないことでしょうか。文法事項、単語の意味…。場合によっては読解のテクニックとか着目すべきポイントとか考える順番とかも話していたかもしれません。
これでは、受験勉強が始まったら1からやり直すしかありません。でも、3年生になってから改めて「まとめノート」を作るとしたら、大変。
ということは、授業を受ける段階から、3年間使う、受験の当日に持っていく最強ノートを作るイメージでまとめていく必要があるわけです。
3年生になって、世界史の全範囲を作るなんてとても無理。3年生になって、古典の文法のポイントを0から始めるなんて遅すぎる。
じゃあ、いつやるか?だったら、授業が終わった後に、授業ノートを家で復習としてまとめノートにすればいい。それも結構大変?(でもなおのこと、3年生からでは無理)だったら、最初から授業ノートをまとめノートと、演習部分とわけて使っていけばいい。まとめノートは授業中から作ってしまおう…。
というのが、前回のお話の要点です。
では、これから、何回かにわたって、具体的なノートづくりの工夫、アイディア、ポイントを、説明していきます。
ノートの工夫1 目次や索引にあたるページを作り、見出しのレベルをコントロールする。
まず、「3年間使う」「まとめノート」を作るという前提で、この工夫が成り立ちます。
目次や索引がないとあとで使いにくいですよね?
でも、目次とかって、本を出版する最後にならないと、何がどこにくるかわからない、という気がしているかもしれません。
ここで必要な「目次」というのは、何も、何が何ページにあるかわからなくてもいいんです。要するに、「見出し」をつけたい。
これが書けないということは、授業を受けていて、今何をやっているかわからないということです。前回の続きなのか、前回の続きで同じところだけど、違うところに入ったのか、まったく違うところに入ったのか。そのぐらい意識できますよね?
でも、それをもっと意図的にやるべきなんです。
手法は簡単。
ノートの最初の数ページを白紙にして、授業のたびに、書き足していけばいいだけですね。
これだけで、全体的な構造を意識することになりますし、「見出し」の意味が重要になります。レベルといったら、わかりますか?大見出しなのか、中見出しなのか、小見出しなのかを意識するだけでも、学習がだいぶ進みますよ。
ノートの工夫2 「写す」のでなく、「整理」する=見出しを意識する。
さて、今、「見出しのレベル」の話をしました。今度はその意識をもとに、しっかりと見出しを作っていくという話です。
まずは、ノートに「段落を作る」こと。見出しのレベルを決めるといってもいいですね。
大見出しはローマ数字
中見出しは数字
小見出しは〇数字
といった感じにしながら、できれば、書き出しは変えた方がわかりやすいですね。
段落の番号は数字をおすすめします。覚えるときに数がわかるからです。アイウエオにしても、アルファベットにしても、数が意識できるなら、まったく問題ないですが、そうでないなら、数にしておくとだいたい何本の覚えることがあるかがわかります。
数は「7」までが基本。
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理想的には、マインドマップにしてしまうのがいいと私は思います。文字だけより、はるかに印象に残っていきます。
もうひとつ意識してほしいコツは、たとえば、歴史を勉強するときには
- 時系列という、縦の切れ目というような見出しの分かれ目
- 分野ともいえる、横の切れ目というような見出しの分かれ目
- 地域というような横の切れ目
あたりが考えられるわけですね。
どう整理するかは、その人の工夫、やりやすさだと思いますが、分け方は基本的に同じにした方がいいです。どの範囲に入っても。
つまり、
- 大見出しを、時系列=たとえば 17世紀以降としたら…
- 中見出しを、フランスとして…
- 小見出しを、さらに「時系列」なら…
- 次の見出しで「分野」、たとえば「政治、経済、文化」という感じ
ですね。この順番はやりやすいように工夫すればいいんですが、その時間、その時間で適当に変えてしまうと後でわかりにくくなります。
というわけで、これを「意識」すること自体がそもそもの勉強になるんですね。
つまり、「意識」して自分なりに「整理」する、ということなんです。
ちなみにですが、もし、あなたに余裕があるなら、後で大見出しから区分けを変えるようなノートを作ると、記憶はさらに定着します。
できあがったノートを、見出しを変えて組み替えるわけですね。
書かれるものは同じですが、たとえば、いきなり大きいレベルで、「政治」とやってしまえば、そこだけで整理することが始まるわけですね。
マインドマップで整理することは、これのもっともわかりやすいやり方です。必ず、見出しのレベル、つまり幹や枝の太さと数が意識されます。ですから、まずはマインドマップで書くことはチャレンジしてみてください。
ノートの工夫3 覚えてから「まとめて」ノートに書く。
つづいて、です。
できるだけ、ノートに書くこと自体を学習にするとするなら、「写す」ことをやめて、「覚えて書く」ようにします。
- 英語の例文なら、自分で覚えて、それから見ないで書く。
- 数学の問題なら、説明を聞く間は、理解することに専念して、説明が終わったら自分でやってみる。
- 歴史だったら、ひとかたまりの説明まで全部聞いて、全部終わったら、自分の頭で言ってみて、それからノートに見ないで書く。
というような一手間をかけます。
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授業をしていると、目の合う生徒と合わない生徒がいるんですが、目の合う生徒の方が、成績がいいことが多い。何もひいきしているわけでなく、目が合うということは、説明している時は聞いているということです。しかし、ノートをとることに集中している生徒は、説明よりも「写す」ことに重点が置かれています。
でも、「写す」ことは、瞬時記憶。時間さえあれば誰でもできます。瞬時記憶でためたものは、ノートの中にしか残りません。だから、試験前に「頭の中」に移す必要があるわけです。
でも、ノートに写すときに、一度「頭の中」を経由してから、ノートに出せば、多少なりとも、 頭の中に残っている可能性があるわけです。多少、写し間違いがあったとしても、英語や古典の訳などの言葉遣いならまったく問題ないどころか、むしろ自分の言葉ですから素晴らしいことです。スペルミスや人名の書き間違いは、覚えていないわけですから、そこで確認できれば大もうけ。数学のミスを「写し間違い」なんていっているのは、時間の無駄。例題を聞いている目的は写すことでなくわかることですから。
一番、簡単なノートの工夫。
ぜひ、自分なりにできるだけ多く聞いて、一気に自分の言葉になってもまとめて書くことをはじめましょう。
もちろん、「ノートの工夫3」の、「自分なりにまとめる」が始まるとするなら、これは当然やっていることになりますね。
ノートの工夫4 ノートを再現する=再現用のノートも作る
さて、今日の最後はノートは一冊でいいのか、という話です。
たとえば、授業ノートが「写す」ノートであったとします。だとすると、いつかそれを「覚える」ことが必要になってきます。
定期試験の前ですね。
私はこれが嫌いなんですが、記憶の仕組みとしては当たり前のことです。
- 授業では「写す」だけ。
- したがって、頭の中に残っていない。
- 試験前に、必死に「覚える」
- 一度ないし、二度しかないので、たいてい忘れる。
- 受験勉強の時に、0からやり直す必要がある。
記憶の定着には、最低でみても理論上3回、研究成果からすれば5回、完璧にするには7回の反復が必要だからです。
だからこそ、今回その1からその3までで、「自分なりにまとめる」ことを推奨しているわけです。
しかし、「なかなか難しい」「やっぱり自分は何度も何度も書いて覚えるタイプ」というようなことを言われるとするなら、すごく簡単なことで、授業中に、2冊、3冊とノートを用意しておく。何度も書くなら、授業中に何度も書けばいい。家に帰って何度も書けばいい。それを試験前にまとめてやる必要がないわけですね。
結局は、「ノート作り」を意識することは、「授業の受け方」を変えること。
あなたが難関大学に行こうと思うなら、
- 授業でノートをとって終わり
- 定期試験前にまとめて覚える
- 忘れてるから、受験勉強で1からやり直す
というサイクルから脱却しなければいけません。
まずは、その「意識改革」に取り組んでみましょう。
次回以降は、さらに具体的なテクニックに入り込みます。