国公立の前期が終わり、予想通り私大の補欠がどんどん繰り上がっているようですが、難化していく私大入試の中で、どのような学習習慣が必要なのかを考えてみたいと思います。
私立大学定員厳格化の中、私大一般入試の難易度が様々な動きの中で非常に厳しいものになっているように感じます。
こういう状況の中、どのような学習習慣をつけることが求められるのでしょうか。今日は、そのあたりを考えてみたいと思います。
- 大学受験は、高校2年生秋・冬に80%決まっている~理系はほぼ逆転はなかったが、文系もそれに近づいているのか?
- 国公立大学の難易度はさほど変わっているようには見えない~GMARCH文系が滑り止めになるのは、旧帝大クラスだけ。~センターレベルを1年次から完成させる重要性=Cからの逆転は厳しい?
- 私立大学レベル別、各科目の完成イメージ
- 高校1・2年次に必要な学習習慣のイメージ
- 高校入学後の学習時間と合格の関係
大学受験は、高校2年生秋・冬に80%決まっている~理系はほぼ逆転はなかったが、文系もそれに近づいているのか?
ベネッセのデータをもとにすると、高校2年生の秋、冬で現役合格の可能性はほぼ決まっています。
これは数年前のデータをもとにしていますので、この厳しい私大入試においてはまったく違うものになっている可能性もありますが、合格者・不合格者の高2秋、あるいは冬時点の科目ごとの平均偏差値をもとに具体的にどのような差があるのかを追っているデータです。
高2秋・冬段階で、合格ラインよりちょっと下にいる同じ成績の生徒を見た場合、合格者と不合格者を比べると、どのような科目特性があるか、という差を見ている資料です。だから、本来は差がないんですが、実際には科目ごとに差ができてくるわけですね。
あくまでも平均を見ているわけですから、細かい例外はあると思います。「俺は逆転できたぜ」みたいなことですが、全体的にまとめれば、結構この事実は重く、うちの学校で検証する限り、このデータを越えて逆転した生徒は、ほとんど出ていません。仮に出たとしても、傾向としては限りなくこのデータに近い中での逆転ということになります。
本来は、偏差値ベースでかなり具体的な資料なのですが、偏差値は当然、どの模試かによって意味が違いますから、こういうところで変な数字が動くのが怖いことと、この厳しい入試の中で、数字が変わっていることは容易に予想できますので、あげないことにします。
なので、あえて具体的な数字は伏せますが、参考にしてください。
文系~英語の完成が最大のポイント
文系の場合、英語の完成が早慶上GMARCHまでに共通するポイントです。つまり、英語がそれぞれのレベルで、一定の成績に行っていないと、逆転は難しいということです。ちなみに、基本的には、合格者と不合格者に分けている高2段階の成績は、基本的には同じ生徒です。つまり、その分、社会あたりで逆に不合格者の方が成績的にはよくなります。3科の成績は同じだからです。
- 早慶上智…英語が高いレベルにあること。社会とくらべると偏差値が10程度上。英語の完成度に大きな差がある。国語は合格者の方がやや高い。その分、歴史(模試の成績です)は遅れていても大丈夫。不合格者の方がむしろ高い。=3科にすると同じ成績であるため。
- GMARCH…レベルは違うが、合格する層はそのレベルなりに、英語が一定の成績に達している。他科目より英語の偏差が5ぐらい上。国語も不合格者よりやや上。その分、当然、歴史は不合格者の方ができている。
- 日東駒専…成績を見る以上、大きな差が合格者・不合格者では存在しない。つまり、3年生から受験勉強をはじめても届く可能性がある。ただし、今年の厳しい入試状況から考えると、徐々に英語の一定成績が求められるようになるだろう。
というわけで、とにかく英語です。まずは英語だけでも、志望校の偏差値を越えていないと厳しいというのが、文系のデータです。
理系~最上位は全科目の完成、次のレベルで数学の完成がポイント
理系の場合、もう少し、怖い形になっています。繰り返し書きますが、合格ラインのちょっと下の同じ成績の生徒を対象に、合格者・不合格者でわけたときの分析です。
- 早慶…科目ごとの差はないが、英語・数学・理科、すべてにおいて、若干ずつ合格者の方が不合格者より高い。同じ成績の生徒とはいえ、少しでも上にいないと合格はできないという厳しいデータともいえる。数学と英語の偏差値はほぼ同じ。理科より5ポイント程度上になる。
- GMARCH…数学で多少合格者が上回る。ただし、全科目とも合格者が不合格者を上回っている。偏差値の高い順に、数学、英語、理科となる。
- 日東駒専…合格者と不合格者に数字上の大きな差は見られない。文系と同様、3年次以降の挽回が可能ともいえる。英語と数学は理科よりも平均が高い。
厳しい私大入試の中で予測されること~日東駒専でも完成が求められる?私立文系も理系のように全科目の相関に?
繰り返しますが、上記は、数年前の、つまり私大定員厳格化が始まる前のデータです。したがって、現状はもっと厳しくなっている可能性があります。
その1 日東駒専も同じような相関が出始めているのではないか?
シンプルに考えれば、難化してくればくるほど、付け焼刃で逆転はしにくくなっているといえるはずです。となると、このレベルであっても、2年生までの、文系英語、理系数学あたりを中心に、どこまで仕上がっているかが、合否に相関している可能性があるのではないかと思います。
これらの中心科目ぐらいは、何とかしておくことが求められているような気がします。
その3 私立文系は、理系のように英語以外も相関が出始めているのではないか?
私立文系は、まだわかりませんが、とても難しくなっているように感じます。
よく学校の生徒に、
「理系で早慶を狙うなら、東大、東工大を狙えるぐらいにしていかないと厳しい。文系は3科目にしぼって死ぬ気でやれば、早慶に受かる可能性が多少ある。」
なんて話していたんですが、文系も最難関希望者と早慶の合格者がリンクしはじめました。もちろん、私立3科目に絞った生徒でも受かるのは理系との違いではあるんですが、絞ったにしても、東大を狙っているような生徒と私立3科目だけでも競っていないと、厳しいような気がします。
こうなってくると、2年生段階で、「とにかく英語が抜けていること」から国語や数学が完成していること、そして社会も進んでいること…とどんどん完成度が求められてくるような気がします。
国公立大学の難易度はさほど変わっているようには見えない~GMARCH文系が滑り止めになるのは、旧帝大クラスだけ。~センターレベルを1年次から完成させる重要性=Cからの逆転は厳しい?
さて、今年の国立大学については、まだ細かいデータはありませんが、感触からすると大きな見込み違いはありません。ただその中でいくつか注意すべきことをあげておきたいと思います。
リサーチ判定のABあたりでないと合格が出にくかった…
今年の結果はまだ自分の学校の生徒を通じた印象でしかないのですが、リサーチで、A判定、B判定ぐらいでないと合格が出なかった印象があります。
これは、ある意味で予想の範疇ではあります。センターの平均点が上がりましたから、そうなると、みんなつっこんでくる。そうなると、ボーダー付近で激戦になるわけです。
ということがメインか、それとも私大を含めた安全志向がメインかわかりませんが、ともかくも、センターからの逆転は厳しかった印象です。
来年のセンターの平均点がどうなるかで、このあたりの評価、予測は変わりますから、一概になんともいえませんが、全般的に安全志向になればなるほど、二次勝負になっていきます。ただ、これも結局はセンターの得点を踏まえるわけですから、まずは、センターで、目標ラインをしっかりとりきる準備が必要になっていくと思われます。
GMARCH文系と国立大学の難易度の関係
次に、もともとの話ではあるんですが、これだけ私大、特に文系が難化してくると、中堅の国立に対して、私大の方が難しいということにどんどんなっていく、ということです。
たとえば、センター利用を考えてみたときに、地方の中位国立大学だと70%ぐらい、千葉大レベルで80%、旧帝大だと85%以上といったのが、ざっくりとしたところ。もちろん、学部で数字は大きく変わる場合もありますから、あくまでも、ざっくり、ですよ。
センター利用は、文系3科目だと、立教ぐらいでおそらく90%程度になっている可能性が高いです。低めに見積もって、85%とすると、
英国社500点満点で、425点
90%なら、450点
になります。ここにあと、数学200点、理科100点、公民100点が足されますが、たとえば、65%平均として、260点、もし70%なら280点です。
さきほどの
425点にそれぞれ足すと、理数公民65%で685点で76%
もし70%とれるなら705点で、78%になります。
もし、90%なら、理数公民65%で、79%
70%なら、730点で81%になるんです。
つまり、私大のMARCHレベルがとれるなら、理数が多少低くても千葉大レベルまではとれそうな数字である、ということがわかります。
逆にいえば、MARCHをセンター利用で取れる生徒というのは、もはや、受かるかどうかは別として旧帝大レベルを狙っている生徒に限られるといってもいいでしょう。
じゃあ、成城、成蹊レベルは?日東駒専は?と下げていったところで、3科目80%を越えてくると、少なくとも地方国立は十分狙える感じになってしまいます。500点の80%で400点、残り400点を60%計算で、240点。計660点は73%ですから、地方国立なら合格圏に入ってきます。ここを55%計算220点で20点減らしても640点は900点の70%をまだ越えているわけです。
裏を返すと、国立の滑り止めに、GMARCHとか日東駒専とかいえる状況にはない、といえます。
もともと、センター利用は厳しい、一般入試でしっかり受かるということでしたが、今年あたりの厳しさを見ると、そうでもないようです。推薦・AO、センター利用と早め早めに優秀な生徒に合格を出すと、結局一般にしわ寄せがいっているのではないかと考えてしまいます。
私立大学レベル別、各科目の完成イメージ
つづいて、私立大学のレベル別の受験時の完成イメージです。
文系
- 早慶…英語はかなり高いレベル。自由英作文を自分の言葉で書けるイメージ。長文読解は現代文の評論が英語になっても理解できる感じ。社会や古典に穴があることは許されず、現代文での勝負になります。現代文の評論が何を言っているかわからないと受かる可能性は低いと思っていいです。
- MARCH…英語、歴史、古文は同様に穴があるとまずいです。河合模試で1科目1分野でも偏差値55を下回るようだと、バランス配点の学部はかなり厳しい印象です。ここまで、現代文で決まる、ということはないように感じていましたが、ここまで厳しくなってくると、おそらく早慶レベルの現代文で勝負に近づいている印象。ここ以上のイメージは、漢字や文学史、漢文、英作文など、やっていないところを配点が低いからといって放っておくと、それが致命傷になる印象です。
- 日東駒専…基本的なことをしっかりやりきれば受かる印象。英語の単語や文法、古典単語や文法、歴史の一問一答あたりまでしっかりできれば受かる感じ。英語がすごくできれば、多少の苦手は吹き飛ばせることも…というのがこれまででしたが、今年はどうだったのか…不安です。もしかしたら、一昔前のMARCHレベルまで行っている可能性も。こうだとすると、苦手があると終わるという印象になります。
理系
- 早慶…基本的に東大、東工大などの準備をしっかりしていないと受からない。数学や理科のレベルが高く、難関大対策が必須。英語ももちろん、重要。
- 東京理科大…数学のレベルが高く、そこに対応するかが鍵。英語は苦手な受験生が多いようで、致命傷にはならない程度に仕上げておけば、数学、理科勝負に持ち込める。
- MARCH芝浦工大…問題自体が難しいわけではないが、数学、理科、英語をバランス良く仕上げることが重要。難問が少なくなってくる分、とるべきところを落とすと結構痛い。
- 日東駒専レベル…意外と合格最低が高いので、基本問題を全分野きっちりとることが重要。
というような感じだったんです。
つまり、
理系は早慶に入りたければ、英数理だけでも東大、東工大を受けるやつに食らいつけ!文系の場合は3年になっても死ぬ気で睡眠時間を削れば、早慶入れる!
といっていたんです。もっというと、
理系は逆転難しいけど、文系は行ける!
っていうことです。でも、今年の結果を見ると、
文系も早慶行きたいなら、東大、一橋受けるやつに食らいつけ!
っていう感じになってきたような…
ぎりぎり3年で届くのはMARCHあたりなのかもしれません…
高校1・2年次に必要な学習習慣のイメージ
高校1・2年生では、どういう学習習慣が必要なのでしょうか?これもベネッセのデータをもとに、できるだけイメージしやすい形に書いてみたいと思います。これから、書くことは、要は成績層別に、結果に反映されていると思われる「差の大きい」学習習慣です。「差が大きい」だけですから、全員がそういう学習習慣を完璧にもっているわけではありません。
しかし、差が大きいということは、学習習慣を見直すにはわかりやすい要素であるということです。
ですから、「そんなやついねーよ」という否定的な目でなく、自分の学習習慣の反省に使ってみてください。
旧帝大・早慶
- 言われなくても取り組める・発展的なことに自主的に取り組む。
- 学習時間は平日3時間が目安。
- 英数国ともに予習・復習を行う。数学は発展的な問題に取り組む。
- 英語の予習は、本文全体を読んでおく。
- 文法や単語や例文に目を通し、覚える。
- 類義語や対義語、違う用法など、本文で出て来たところ以外も目を通す。
- 数学は別解が知りたい。発展的な問題に取り組む。
- 定期試験は2週間前から準備し、全体を自分なりに復習する。
- 試験の復習は、もとの参考書や教科書にあたり、全体を復習する。
- 授業は全科目とも予習したことを確認する場。
- 授業のノートは自分なりの工夫がある。
横国・首都大・千葉大・MARCH
- わかるまでやる。わからないところをつぶす。
- 学習時間は平日2時間が目安。
- 英語・国語は予習、数学は復習が中心。
- 英語の予習は、本文全体を読んでおく。
- 文法や単語は、本文で出てくるところが中心。ただし覚える。
- 古文は本文を読むというよりわからないことを辞書で引くレベル。
- 数学は指定された解き方が中心で、教わってから解く。ただし応用問題まで取り組む。また次の時間の範囲に目を通すぐらいはする。
- 定期試験は2週間前から準備。わからないところを中心にそこをつぶす。
- 試験の復習として、間違ったところは必ず復習する。逆にいうと、間違ったところ以外はやらない。
- 授業では、わからないところは辞書を引いたり、質問をしたりする。
- 授業のノートは先生が示した大事なところなどがメモされる。
地方国立・日東駒専
-
宿題はきちんとやる。言われたことはやる。逆に言えば、怒られないならやらないことが多い。
-
平日1時間程度。
-
英語は予習。数学は復習。国語はほとんどやらない。
-
英語の予習は辞書を引くことがほとんど。
-
数学の復習は、宿題を中心に、やった問題を解き直す。次の予習はまったくやらない。
-
国語は、古文で本文を写す程度。
-
試験勉強は1~2週間前から取り組む。数学は全部の問題、つまり応用問題には取り組まない。英語や古文は本文を覚えることが中心。
-
試験の復習も、必ずしもするとは限らないが、ある程度復習はする。
-
授業の受け方としては、授業で指摘されたところを調べたり、覚えたりする。数学は授業で示されたところまでは取り組むが、解き方の説明が徹底されていない応用問題は取り組まない。
-
授業のノートは板書を写す程度。
こうしたこともできないとすれば…
以上のようなことができないとすれば、このレベルも厳しいということになります。日東駒専のレベルも言葉を換えれば「言われたことはきちんとやる」ですから、決してわるいとはいえないかもしれません。でも、それではもう一段上の大学には行けない、ということです。
これは、まずしっかりと理解した方がいいことです。
確かに、大学入試は難化しています。しかし、高校生が、本人の自覚ややる気、言葉をかえれば目標を持たずに、スパルタ的に学習をすることにはどうも限界があるということ。
要は、親や教員が何をやるか、ということです。
もしかしたら、私大の難化にともない、MARCHレベルでも、一番上の学習習慣、日東駒専でもひとつ上の学習習慣が求められてきているかもしれないのです。
だとすると、学習習慣としては、まずは本人がどういう気持ちで大学受験に向き合うか、ということが一番重要になっている気がします。
私は、とにかく勉強させるということから(そのことが無意味だとは思いませんし、いやでもやらせることは必要だと思いますが)、少しでも、自分が学習計画を立てる、ということをできるように導く、ということが重要だと思っているんですね。
高校入学後の学習時間と合格の関係
今日の最後は、高校入学後の学習時間の調査です。ベネッセのスタディサポートに毎回参加している中高一貫校のデータです。
中学3年の最後の学習時間は平均70分弱なんですが、この生徒達が高校入学後、成績上昇者と下降者で学習時間に徐々に差が出るんです。
高1・4月は両方とも60分程度で同じ。
高1・9月になると、上昇者は80分、下降者は65分
高2・4月で、上昇者は82分とさらに上昇、下降者は62分と中だるみ
高2・9月で、上昇者は95分に達し、下降者は65分
高3以降はベネッセのデータはありませんが、本校のデータでは実はあまり差がなくなってみんながやるようになります。
さて、このデータで恐ろしいのは、上昇者と下降者の学習時間の差ではありません。
恐ろしいのは、下降者の学習時間は下がっていないこと、です。
同じ時間の学習を維持すると成績が維持されるのではなく、下がるということです。
どうして、こんなことが起こるのでしょうか?
この仮説は、
勉強時間が同じ、ということは、言われたことを最低限やっている
ということではないのか、ということです。
中学校だろうが、高校だろうが、1週間の授業時数は変わりません。つまり、必要とする予習や宿題が極端に増えるわけではない、ということです。よほど厳しい先生ならともかく、そうでない限り、1時間の授業で必要とする予習や宿題の量は、みんなができる程度にコントロールされます。
でも、授業は難しいし、早いし、これを同じ学習時間で理解できるわけではありません。高1よりも、高2、そして高3と授業はどんどん難しくなっていきます。
さきほどの学習習慣のチェックではないですが、「わかる」ことを目標にするなら、自然と学習時間は増えます。難しいし、授業も早くなるからです。だから、普通、学習時間は自然と増えるんです。でも、怒られない最低限の学習なら、時間は増えないんですね。わかってようがわかってなかろうが、怒られないことが目標だからです。
これが成績が上昇するか、下降するかの差ではないでしょうか。
というわけで、厳しい大学入試事情だからこそ、もう一度学習習慣を見直してみませんか?
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