学びの真似び(まねび) 「学び続ける人」になるために(教育と受験と勉強法)

学習の仕方に困ったことはありませんか?ここでは、「真似び=学び」という形で、さまざまな学習方法へのアドバイスをしていきます。学習の仕方に悩んだら、受験勉強で行き詰まったら、ぜひ訪れてみてください。効果的な学習方法を知って、学び続ける人を目指しましょう!

第一志望突破への正しい目標設定のためには、「3段階」と「長期設定グラフ」と「短期設定グラフ」 学習計画その3

学習計画作りの第一歩「正しい目標設定のためにすること」をまとめています。今日は志望校を決めるところから、「3段階」と「長期」「短期」のふたつのグラフから目標を具体化していきます。

今日は、目標設定編の最後です。具体的にどのように、どの程度の目標を設定するのかを考えていきます。まずは、前回までの確認です。

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実際に一緒に目標を設定してみましょう。

 

まずは、しっかりと長期目標を立てる~目標大学を決め、科目と偏差値、目標得点を把握する

今回の話に行く前に、前回の話から進めていきます。学年が低ければ低いほど、目標大学や学部、学科、場合によっては文系理系も決めていないことでしょう。

そうであったとしても、目標大学や目標とする分野は決めなければいけません。

分析が始まらないからです。

たとえば、一般論で考えます。

国立の場合、

「5教科7科目」+二次試験の科目です。

私立の場合、

3科目or4科目、センター利用では7科目の可能性もあります。

文系の場合、

センターでは、英国数社2科目、理基礎2科目、2次私大では、英国社or英国数or英国数社

理系の場合、

センターでは、英国数理基礎なし2科目、社会1、二次私大では、英数理or英数理2科

です。

東大では、理系でも2次で国語が必要ですし、文系では二次で社会が2科目必要になります。

理系では、

センターはⅡBまで。看護や私立薬や農学部系もⅡBまでが主流。理学、工学、国立薬や国立農はⅢまでが主流です。

つまり、目標が決まらないまでも、あるいは、決まらないということは、すべてに対応できる準備、それは「全部」ということではだめ。書き出してみましょう。

つまり、

センターの科目が、

英語、国語、数学①②、地歴1+地歴or公民、理科基礎なし2科目+基礎あり2科目

私大、二次用科目が

英語、国語、数学Ⅲ、理科(物理、化学、生物)2科目、日本史or世界史、東大考えるならさら地歴1、

です。

たとえば、私立文系と決めれば、

英語、国語、日本史or世界史or数学

とか、

私立薬と決めれば、

英語、数学ⅡBまで、化学

となることを考えると、決めないことがどれほどの事態をひきおこしているかわかるでしょう。もちろん、決めて絞ってしまえば取り返しはつきませんから、安易に決めるのはだめですが、たとえば、「さすがに東大はないな…」と考えた瞬間に、文系の2次での地歴2科目目はカットできます。

逆の発想もできますね。「数学が苦手」というところから考えるなら、

  • 文系に行けば負担が減る。
  • でも、文系でも国立の法、経済系を狙うと、2次で数学が必要となる。
  • いやなら、文学部系が中心か…それでもセンターはあるな。
  • 本当にいやなら私立…
  • でも、国立行きたいから、数学はやるしかないか…
  • どうせやるしかないなら、ちゃんとやって国立二次でも使えるようにする…
  • だったら、本当は理系に行きたいんだから、数学ちゃんとやった方が…

なんていうことを考えることにつながります。

先送りしてはだめです。「まだわからないからあとで考えよう」ではなくて、「わからないなりに調べて書こう」が正解です。

私が今、書いたような一般論でさえ、知らずに授業を受けていて、まじめにやっているならいいのですが、「なんとなくさぼっている」とか「なんとなく苦手を受け入れている」というのは危険ですよ。

もちろん、ここで大事なのは、「一般論」を自分なりに理解することです。

たとえば、自分の志望があるひとつの大学だとします。そこを調べたら、試験科目がわかります。でも、その一般論にあたる大学だけをあなたが受けるわけではありません。

東工大は、センターの得点を使わない入試を展開しています。つまり、国語と社会は最終的に得点加算されません。だから「国語はいらない」とした場合、東工大に届く学力にまったくならなかった場合、当然、早慶もかなり厳しくなるでしょう。そうなると、次善の策は、地方国立か理科大以下ということになりますが、国語を捨てた以上、事実上、私立で入るところを探すだけになるでしょう。

つまり、最終的には併願もあるし、志望校変更もせざるを得ないわけで、「一般論」を理解しておくことも大事なのです。

決められない人は、要は、

  • できれば、このレベルまで行きたい
  • 最低、このレベルに行きたい
  • この学科は、原則興味がない
  • こういうところに行きたい

程度が見えてくればいいし、この程度の中で「一般論」を理解することが大事です。

そうすると、自分の重点科目が見えてきます。つまり、目標とする大学のレベルで必要な偏差値が見えてきたとして、その偏差値をどの科目でとるか、というのがわからないと目標にならないのです。

そのためにも、これが大事。そして、それは「一般論」だけでなく、「個別」の目標も大事で、それはなぜかといえば、傾斜配点とか、大学によって配点が異なるからです。

この矛盾するふたつのことを見据えながら、準備を始めます。

大変に思うかもしれませんが、

  • 目標は明確でないけど、とりあえず全国大会に絶対出るために、県大会優勝を基準に練習を始めよう
  • 目標が明確でないから、とりあえず一生懸命練習して、うまくなったら目標をきめよう。県大会優勝とか全国大会出場とかは、今は考えず、うまくなってから考えよう

という人では、どちらがうまくなるかは、明らかです。そして、もし、前者が次のふたつになるとしたら、

  • 目標は明確でないけれど、県大会で優勝することが目標だから、昨年の優勝チームのレベルを知って、自分とどのぐらい差があるかを知って、そのレベルまで上がろう。
  • 県大会で優勝するという目標を決めたけど、まだ自分には県大会で優勝する実力があるわけがないから、自分の実力にあったチームとだけ一緒に練習しよう。県大会優勝チームの試合を今見ても参考にならないから。

という人がいるとすれば、どちらがうまくなるかは明らかですね。まず、もう一度、目標意識をはっきりと持ちましょう。

 

目標は3段階に。最高の目標、最低の目標、中間の目標

ここで目標を3段階にすることをお勧めします。

これは原田隆史先生の手法です。

実際に生徒と接していても、この目標設定の仕方には生徒の個性が出てきます。性格といってもいいですね。

ひとつは、とにかく夢物語のような高い目標を設定する生徒。甲子園であるとか花園であるとか、東大であるとか。本気で狙っているなら、どんなに高くても問題はないわけですが、実際は、練習試合で負けようが、模試でどんな点をとろうがいっさい気にしていないとなると、これでは目標にそもそもなっていません。

もうひとつは、謙虚に、現実にあった目標を口にする生徒。「現状維持」のような目標を平気で書く生徒ですね。これも、本当に今の学力で入れるところに入る気ならいいですが、そうでないことの方が多いし、クラブ活動の場合だと、ほぼ勝つことを放棄しているような状態ですから、成長は見込めませんね。

こうしたことを解決するのが原田先生の手法です。

大学受験でいうなら、

  • 最高の目標=第一志望。本当に行きたい大学学部
  • 最低の目標=絶対に達成しないといけない、最低限の目標。大学受験では滑り止めにあたるかもしれない。
  • 中間の目標=現実的に達成できたらそこそこ満足できる目標。

となるでしょう。

大事なことは、「最高の目標」でも書いたら、それを達成するための準備を始める、ということです。準備をしないなら、それは目標ではありません。ただのあこがれです。

目標にした以上、「最高の目標」ベースで、学習計画は作っていきます。

「最高の目標は、東大だけど、現実的にはMARCHだからまずは英国社だけで数学は捨てかな」なんていうことがあるなら、「最高の目標=東大」はないのと一緒。

同様に、「「最低の目標」は元気に学校を卒業することだから、何もしなくてもいいや」なんていうのも、「最高の目標」と「中間の目標」がないのと一緒です。

つまり、思いっきり高い目標書いてほっとく人と、最低の目標を現状維持にする人は、同じなんです。目標を立てたくないんですね。向き合わないといけなくなるから。その意味で、本当はみんな目標の必要性を知っています。知っているからこそ、現実的に目標を立てると苦しくなってしまう。だから逃げようとするわけです。

というわけで、この三段階の目標、やってみてください。

大事なことは、必ず、同じ直線に載せること。大学受験なら、

  • 最高の目標=東大
  • 最低の目標=GMARCH
  • 中間の目標=早慶

みたいなことです。

定期試験や模試なら

  • 最高の目標=偏差値65
  • 最低の目標=偏差値62
  • 中間の目標=偏差値63.5

みたいになります。

ダメな例は、

  • 最高の目標=英語でクラス1位
  • 最低の目標=全科目合計平均点
  • 中間の目標=数学で平均点+5点

のようなもの。これでは、英語でクラス1位で、全科目合計が平均に行かないときに目標達成したかわからなくなります。この場合、気になっているものをすべて、数値で並べます。

  • 最高の目標=英語でクラス1位、全科目合計平均点+20点、数学平均点+7点
  • 最低の目標=英語でクラス5位、全科目合計平均点、数学平均点+3点
  • 中間の目標=英語のクラス3位、全科目合計平均点+10点、数学平均点+5点

というような形。こうしていけば、目標がどの程度達成できたかわかるようになります。次の目標を立てるとき、もし仮に最低の目標を下回るものがあれば、それが最優先の課題だということがわかってきます。

 

現在の偏差値から長期目標のグラフを書き、そこから中期目標を得て、今回の目標を決める!

とはいっても、こうした目標から、「今回の目標」、つまり次の定期試験や、次の模擬試験の目標をどう達成すればいいでしょうか。

たとえば、目標に東大と書けない人も、東大と平気で書いて達成できなくても気にしない人も、それは目標が時期的にも遠すぎて、近い目標をどう設定すればいいかわからないことが多いですよね。

遠すぎるから、まだ時間がある。だから、差が縮まらなくてもまだ大丈夫な気がするし、時間があるから成績が上がったらちゃんと目標を決めよう…なんて気にもなる。

でも、どんな人でも高3の夏が終われば、現実的になります。つまり、高い目標を立てていて、模試の成績が悪ければ、本気ならもっともっと必死にやりますし、本気でなければどんどん目標を下げてきます。

でも、高3になったのでは手遅れ。高2の秋冬にはほとんど決着しているのが大学入試でです。

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というわけで、私はグラフをふたつ書くことをお勧めします。

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長期目標を設定するグラフ。1年後にどの程度の成績が必要か割り出します。

こんな感じです。現在高1偏差値50であったとして、卒業時に最高の目標を早慶東大旧帝レベル、最低をGMARCH千葉大レベルと想定して、設定します。

グラフは最高、中間、最低と3本になりました。このグラフを比例で書いていいのかという問題はありますが、「偏差値50から」であるとすると、かなり高い目標なので、早めに目標値に達するような設定は無理がありますから、厳しいのは承知で比例グラフを書きました。

そうなると、1年後には、最高レベルで58、中間で55、最低で53を達成すればいいことがわかります。

そこで二つ目のグラフに移ります。

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先ほどの1年後の数値をもとに拡大したグラフを書くと、今回の目標がはっきりします。

目盛が細かくなりました。

さきほどの1年後を、学年末に設定して、また現在地の偏差値50からグラフを3本書きます。そうなると、定期試験5回で時間を割ると、

今回の目標は、

  • 最高の目標=3年後75のために=今回、51.5
  • 中間の目標=3年後65のために=今回、51
  • 最低の目標=3年後60のために=今回、50.5

であることになります。実はたったこれだけの努力を毎回することができれば、さきほど設定した目標を達成できるわけです。

どうでしょう?最低ベースなら偏差値は1もあげなくてもいい。

もちろん、これは常に右肩上がりです。落ちる設定はありません。だから必ず達成しないといけません。偏差値が58になっても、同じようにまた、0.5~1.5あげないといけません。

実はすごく厳しいことです。だから比例で書くことは本当は問題です。

でも、裏を返せば、「絶対に達成する」という厳しささえ持ってくれれば、その達成は一回につき「0.5から1.5」です。いえ、今回はそもそも、偏差値50の人が東大を狙う設定にしています。偏差値50から、最高千葉大GMARCH、最低日東駒専で設定するなら、もっともっと小さい目標になるんですね。

現実は、この程度でも、すごい成長なんです。いつも定期試験で無謀な目標を立てたり、当たり前すぎる目標を立てたりしていませんか?そして、達成しないことが平気になっていく…。これが目標達成の最大の敵です。

 

最高の目標であっても、「絶対に」達成する!

というわけで、くどく書きますが、目標は「絶対に」達成しましょう。たった偏差値0.5です。あるいは1.5です。絶対になんとかしましょう。

これがなんとかなれば、あなたは受かるのです。

これならできませんか?

こういうのを「スモールステップ」と呼びます。最終的な目標から逆算して、その都度その都度の目標を設定するんですね。

決して、現時点から、適当に次の目標を設定してはいけません。最終的な目標と、そこに至るまでの時間を考慮して、今回の目標を決めます。

そのスモールステップは、おそらく思っている以上に低いものです。だから、「絶対に」達成しましょう。達成しなければ、長期目標のグラフが狂います。徐々に徐々に、時間が少なくなり、その分、いつか「スモール」は「ビッグ」になってしまいます。

この覚悟が大事。

たとえば、あなたが先ほどの設定で、「偏差値0.8」あがったとします。この事実は、「最低の目標は達成できそうだが、中間、最高の目標は達成できない」ということを意味します。

受け入れるなら、この段階で最高の目標を0.8程度の先に修正すべきです。

受け入れないなら、次に向けて同じ設定でグラフを書きなおすと、傾きがその分急になっているはずです。つまり、次回は、前回「1~1.5」上げることができない自分が、それ以上のペースで上げることを覚悟しなければいけません。

0.8上がったと喜んでいる場合ではないのです。

だからこそ、「最高の目標」でも書いた以上は、そこを基準に判断して、だめなら目標を下方修正するか、今回を失敗ととらえてやり直す覚悟が必要になります。

最初に把握した重点科目をもとに、三段階の目標を科目ごとに設定する。偏差値1は標準偏差×0.1

となってくると、さっき例で書いたような、3段階の目標設定例では、あまり現実的でないことがわかります。

少なくとも、試験科目に準じて、全科目の目標がほしいぐらいの設定であることがわかってきます。

「とりあえず英語」「まずは苦手から」

そんなことを言っていると、「絶対に達成」は無理ですね。

もちろん、計算さえ合っていれば何も問題はありません。たとえば、「苦手の英語をこのぐらいやればこのぐらいあがる。その場合、国語は放っておいて現状維持でも目標の数値は達成できる」ならいいんです。

でも、そう言い切れるということは、結局全科目の目標を総合した結果であるはずです。ここでいう全科目とは、入試で使う科目のことであり、私大や二次を含めて考えると、文理でその科目は変わってくるはずです。

全科目しっかりと、分析をして、仮に今回力を入れる科目があったとしても、そのことだけで、全体の目標が達成されないといけないんですね。

そうなってくると、「偏差値をあげる」ということが急に不安になります。これを得点化して、具体的に〇点上げるにした方がいい。そうなると、スモールステップが急に見えてきますね。

「あと何点とるために何をすればいいか」ということです。いつも「平均点」というような言い方をする生徒が多いです。そうではなく、それは何点か、あと何点か、といううことです。そして、さっきグラフを書いてわかったと思いますが、次のテストでいきなり平均点をとる必要もない。逆算した通りの点数をとればいいだけです。

もちろん、センター、共通テストだけで使う科目も、最低何点とるかは常に計算していないといけません。そうなると、もちろん、自分がすでにその成績をとれるようになっていればいいわけですが、そうでなければ当然目標設定が必要になってきます。

試験科目や傾斜配点を知って、自分がどの科目をやらなければいけないか、課題があるかを考えて、こまめに目標設定することが求められます。

偏差値は、そのためにも得点に。偏差値1あげるのに必要な得点は標準偏差×0.1です。

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それを次のテストでどうあげるのか。それは今のテストで、どこであとその点数がとれたかですね。

そうすると勉強法が見えてきます。

 

じゃあ、何をやればいいんだろう?

というわけで、ここまでくると勉強法の話になってきます。

成績があがらない人はいつも、

「がんばりが足りないからだ」

と思っているふしがあります。

計画通りに進まなければ、「がんばらなかったからだ」。

計画通りに進んで上がらなければ、「一生懸命さが足りなかったからだ」。

という具合に。常に精神論です。

でも、そもそも今日の話で、点数を具体的にあげるためには、勉強法そのものが、変わっていくということを意味しているはずなんです。

苦手科目をつぶせたら、次は違う科目。

苦手分野を克服したら、次は違う課題。

というか、そもそも、学校から言われた半分課題のようなことを、ひたすらみんなと同じように、今までと同じようにやっているなら、おそらく、スモールステップとはいえ、あがることは難しいんじゃないでしょうか。

 

というわけで、次回は、タスクの設定の話に移ります。