これから何回かにわたって、学習計画の立て方を検討していきます。今日は、まず、目標を立てることを考えます。
学習計画作りについての具体的な説明を始めました。実はこれが成績のよい人とそうでない人の決定的な違いです。
そして、もっと重要なことは、「できる人」はこの思考方法があまりにも当たり前で、そうでない人がいるということさえよくわかっていないことが多い。
だから、学習のアドバイスを求められても、この思考方法がある前提で、具体的な参考書とかやることの説明が始まってしまいます。
しかし、この一番大事な部分、つまり、目標を達成するために学習計画がある、という部分が抜け落ちていると、適切なアドバイスであっても生きないことが多いのです。
もし、あなたが保護者や教員であるなら、「うちの子は言わなければやらない」「やることを指示しないとできない」と考えているなら、まず重要なのは、そこが変わることであり、「どんな参考書を使うか」「塾に行くかどうか」ではないということ。
もっといえば、難関大に合格するなら、まずは、「目標を設定して」「やることを考える」ということが重要なんですね。それができなければ、難関大は厳しい。
今日はそんな話をしていきます。
前回はこちら。
「目標」を設定しないとやることが決まらない!学習よりも重要な目標意識。
まず、「目標を設定する」ことだと書きました。第一歩は、目標の設定だと。
4月のスタートで、学習の相談にくる生徒がたくさんいました。共通していたことは、「学習の方法」を聞きにきたこと。そこに「目標の設定」がかけているんですね。
みなさんからすれば、「基礎からやり直したいわけだから、目標なんて関係ないんじゃないか」という声もあがるような気がします。
「最終的には東大まで狙うかもしれないけど、いきなり東大のレベルではできない。基礎からやり直すことは、東大も、早稲田も、MARCHも、日東駒専も同じなんだから、最初の1冊は同じでしょ?」
だから、相談する多くの生徒は、「まったくできないので、どうやって勉強すればいいか教えてください」という台詞でした。
それでも、大事なこと、それも第一歩は「目標の設定」です。
「でも、3年生だったらまだしも、基礎もできていないし、もう少し勉強して感触を見てからでないと目標なんて決められない」という声も聞こえてきそうですね。
いや、それでも、第一歩は「目標の設定」です。これをしないわけにはいかない。別に大学を一つに決められないなら、10あげてもらっても構わない。学部が一つに決められないなら7つ8つあげてもらっても構わない。とにかく目標を設定しないことには話が前に進まないのです。
「目標」と「現在地」を比べて、高さと残り時間を考える。
「目標」が決まると、「現在地」との比較が可能になります。ここで重要なのは次のふたつ。
- どこまで登らないといけないのか?現在地と目標地点の高さを知っておく。
- いつまでに登らないといけないのか?目標に到達するまでの残り時間を知っておく。
このふたつでやることが変わってくるわけです。
さきほど、「どうせ基礎からやるんだから、難関大もそうでなくても最初の一歩は同じだ」というような考え方を書きましたが、この観点から考えてみましょう。
たとえば、ある万能な問題集があると仮定します。(現実にはそんなもの存在しませんが。)そのとき、その問題集をやっていて、難関大からそうでない大学まで進学する人の差が出るとするなら、おそらくそれは、「定着度」ですね。100%理解すれば〇〇大学、80%なら△△大学、60%なら××大学というように。
では、その定着度の差はどうやって生まれるでしょうか。
それは、やはり時間ではないでしょうか。あるいは回数といってもいい。本来は、それだけではありませんが、話をシンプルにするために、ある同じ頭のつくりをしている人が、同じやる気で取り組んで定着に差が出るとするなら、回数と時間以外に考えられません。
そうなると、いつまでに1周終わらせるか、それはつまり、1日にどのくらいの学習が必要かは目標によって変わってくるわけです。
たとえば、最難関大を受験するためには、「基本、標準、応用」の応用までやらないといけないとします。たとえば、英単語は1900全部覚えないといけないとします。たとえば、上級問題集までやらないといけないとします。
そうだとすれば、やることが増えていますよね?そうなれば、最初の一歩が本当にみな同じだとしても、いつまでにそれを終わらせないといけないかは、目標によって異なってくるわけです。
スポーツでも同じです。あなたが初めてやるスポーツのクラブに入部します。日本代表になりたいのか、全国優勝したいのか、全国大会に出たいのか、県でベスト4に入りたいのか、県大会に出たいのか、それとも地区予選で1回でも勝てればいいのか。
目標によって、毎日の練習や求められる意識やレベルが変わってくると思いませんか?
高校2年生になって、慌てて入部して、「初心者で、まだとても全国とかいえるレベルじゃないから基礎練習をやります。もしできるようだったら、全国狙います」と言ってきた場合、あとで全国大会に出場するチームのレギュラーになることは可能でしょうか?そもそも、非常に厳しい条件であるからこそ、「全国大会に出場する」ためには、基礎練習からはじめるにしてもかなりハイスピードで高い意識で練習しなければ不可能だし、可能にできる人がいるとするなら、宣言した人だと私は思うんですね。
仮に、本当に決まっていないとしても、少しでも最難関に行きたいとするなら、最難関向けの計画を立てる以外ない。その計画で動いて無理だったら、目標を下げればよい。でも、その逆は非常に難しいわけです。
だから、まずは「目標」の設定が不可欠なんです。
「目標」が決まらないなら、最大限の準備をしておく。
これは、今の話にもつながります。
学年が低いうちは、大学や学部などが具体的に決められないということがあるかもしれません。というか、それが正常です。勉強しないうちに、具体的なことがわかるわけがないですから。
でも、この状況をもって、だから目標がない、ということになると話が違ってきます。
この状況は、「目標がひとつに決まらない」ということですね。逆にいえば、目標をたくさん書くことができるはずです。
たとえば、あなたが高校に入学したばかりで、学部をどうするかがわからないとします。
それは、「学部が決まっていない」のではなく、「〇学部」と「〇学部」と「〇学部」と…と進学する可能性のある学部がたくさんあるということです。
文理が決まっていないということは、文系にも理系にも進学する可能性がある、つまり、両方の準備をする必要がある、ということです。
国立と私立で試験科目数が違いますよね。決まっていないということは、両方の準備をする、つまり、科目数の多い国立の準備を基本にすることになります。
決まっていないから、何をしていいかわからない…というのは甘えです。決まっていないから、すべての準備をするんです。もし、準備が多岐に渡って大変だったら、早く目標を絞りましょう。後戻りはできなくなりますが、準備も絞ることができます。
絞りたくないなら、全部の準備をする。
全部の準備をするためには、切らないものを全部書き出す必要があります。A大学、B大学、C大学…A学部、B学部、C学部…
とてもじゃないけど、そんなことできない?それは、あなたが大学や学部について決まっていない、決められないのではなく、「考えていない」「調べていない」んですね。それではどうにもなりません。目標がないのではなく、そもそも準備する気がないのでは、それは先には進みません。
逆に言えば、目標を決める以上、それがひとつか複数かはともかく、あなたはまず第一歩を踏み出さざるを得なくなります。
目標設定のコツ「目標は絶対達成」「目標は幅を持たせる」「時間軸を意識するにはグラフを2つ書く」「偏差値は得点化して割り振る」
さて、とにかく目標を設定することの大切さがわかってもらえましたでしょうか。
そうなってくると、次に必要なのはどのように目標設定をするかですね。これに関しては、一度模試の分析について書きましたので、これに非常に近いものがあります。
これから目標設定の話をする上で、できれば読んでおいてほしいです。こういう形で分析をしていくことが大事です。上に書いたようなことを正確にやっているかどうかはともかく、賢いと思う生徒は、自然とそういう思考法をしています。逆にいえば、成績があがららない生徒は、こういう考え方ができない。究極をいえば、「がんばる」とか「言われたことをやる」という思考法になっていることが多いんです。だから、成績をあげるためには、逆にこういう思考法にならないといけないわけですね。
同じような話にはなりますが、もう一度「目標設定」という観点に絞って書いておきたいと思います。
ただ今回は長くなってしまいましたので、見出しだけの予告にして、次回に詳細を書きたいと思います。
目標は絶対達成!
まず、目標は口だけではだめ。夢物語ではだめ。必ず達成しないといけないんです。そのプレッシャーが大事です。だから、単に高い目標をかかげて、心の中ではできるわけないと思っていたり、達成できなくても平気でいられるような目標を立ててはいけません。
目標は幅を持たせる。
そうしたことを防ぐためには、目標に幅を持たせることが大切です。原田先生の著作にもありましたが、「最高の目標」「最低の目標」「中間の目標」と3段階にすることがその対策としては有効です。ただし、最高の目標だからといって達成できなくてもいいと思ったり、対策をしなかったりするのはだめですし、最低の目標が現状維持のような形も意味がありません。
時間軸を意識するにはグラフを二つ書く。
目標をスモールステップにするためには、長期目標のための時間軸を設定したグラフと、それを細分化して1年程度に縮めたグラフの二つを書くことによって、適切な目標設定ができるようになります。意味もなく高い目標を掲げて毎回達成できずに終わるのでなく、長期計画に向けて達成しなければいけないスモールステップの目標を立てることが重要です。
偏差値は得点化する。
学校の定期試験だと順位、模試だと偏差値などが目標としてわかりやすく設定されますが、このままだとその目標に到達するために何をすればよいかが不明瞭になります。一番わかりやすくなるのが「得点」に換算することです。大学入試などではどうしても偏差値や学校内での順位などが指導の目安になるわけですが、それを得点に直すことで、どの分野でどれだけ点をとればいいか、そのためには何をすればいいかが明確になります。
というわけで、次回は以上のことをもう少し詳しく書きます。模試の回でかなり細かく書いていますので、まずは読んでもらうと助かります。