学びの真似び(まねび) 「学び続ける人」になるために(教育と受験と勉強法)

学習の仕方に困ったことはありませんか?ここでは、「真似び=学び」という形で、さまざまな学習方法へのアドバイスをしていきます。学習の仕方に悩んだら、受験勉強で行き詰まったら、ぜひ訪れてみてください。効果的な学習方法を知って、学び続ける人を目指しましょう!

共通テストとコロナ禍の2021年度大学入試動向その1 全体的な傾向

秋も深まってきて、2021年度大学入試動向分析データが見え始めました。まだまだ不透明ではありますが、動向分析をしていきたいと思います。

共通テストの導入、そしてそれに伴う二転三転に続き、新型コロナとそれにともなう休校、あるいは意識変化など、今年の大学入試は果たしてどうなるのか、見当もつかない状況ではあります。

しかし、大学入試は何らかの形で必ず行われます。なぜなら、選抜をしない限り、大学に希望通り受け入れることはできないからです。

入試が、共通テストだけになったり、そもそも延期され、入学時期も延期されたり、最悪の想定はいくらでもできますが、大学入試、あるいは選考がなくなる、ということだけは考えられません。

というわけで、まだまだ不透明ではありますが、今年の大学入試動向分析をしていきたいと思います。

今日は全体的な概観です。

昨年の結果分析はこちら。

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共通テストの導入の影響

今年はなんといっても「共通テストの導入」が最大のトピックです。

とはいえ、いろいろと変更につぐ変更で実際に変わるのは、以下の通り。

  • 名称
  • 英語がリーディング100点、リスニング100点に。(ただし、傾斜配点により実際にそうだとは限らない)時間設定は変更なし。
  • 数学①の試験時間が70分に。(記述が導入されるはずで試験時間が増えたが、記述は行わず、時間だけが残った形に。)
  • 試行調査を見る限り、平均点の低下=問題の難化。試行調査は見る限り、50点程度を狙っている?

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初期のモデル問題などでは、たとえば国語で複数の文章を読ませる形をとった名残で、模試などではそうした形式変更を実践したケースもありますが、その後2回の試行調査では、従来の形に近づいていたこともあり、少なくとも「必ず複数の文章が出る」ということはありません。

というわけで、記述も外部検定もなく、結局は意外とそのままの入試になったわけですね。

リスニングの配点変更~私大は意外と1:1であることに注意。

さて、リスニングの配点変更ですが、中には「傾斜配点だから昨年とほとんど変わらないよ」というような意見があったりするんですが、全体からすればそうではありません。

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まず、国公立大学で考えてみても、東大や千葉大文学部など、今までリスニングを使っていなかった大学でも利用するようになります。この中には私大の青学や中央商などの共通テスト利用も含まれます。

で、国立大でみても、

1:1となるのが北海道、九州や東工、一橋などです。

東北・京都・大阪・名古屋・東京医科歯科などは3:1。ですから割合は4:1から配分があがっています。

で、確かに4:1の国公立も、千葉・筑波などありますから、自分の志望大が4:1なら…と言いたいところですが、そうはいきません。

私立大学の共通テスト利用は、リーディング:リスニングが1:1が圧倒的に多いんです。

私立は学部ごとに違いますから、ざっというと、早慶上智GMARCH(慶應は共テ利用はありません)で4:1となるのは、 東京理科・法政・中央だけ。

1:1 早稲田・上智・青学・明治・立教・学習院

というわけで、私立大の共通テスト利用を考えると、「リスニングはできなくてもいい」というのは非常に危険です。

このあたり、高校二年生以下の人もよく知っておいてほしいところです。

ちなみに、問題自体は難化傾向。後半は、B1レベルで1回読み…となっております。しかも、しれっと直前に1回読みが四問と発表されておりますので、かなり注意してくださいね。

平均点はどうなるのか?その影響は、どう出るのか?

さて、続いて平均点の話です。

共通テストに変わることで、平均点が10%程度下がることが予想されます。

これは、試行調査が50%程度の平均点であったこと。そして、その分析報告で、どうもそのあたりを狙っているというような記述があったことによります。

しかし、昨年の秋に出されたQ&Aでは、「平均点の設定については公表する予定はない」と書かれていることもあり、実際にどうなるかはまったくわかりません。

要するにいえることは、

  • 昨年までのセンター試験の目標得点率は、平均点が下がれば当然下がる。
  • しかし、実際にどう平均点が設定されるかはわからない。
  • 共通テストのボーダー予想は、現時点では、平均点がどの程度下がるかわからない段階で業者が「適当に」予想している。
  • したがって、その予想があたるかどうかは、普段の「あたる」とは別の話になる。
  • 共通テストが終われば、例年通り、リサーチによって適切な予想に切り替わる。

こんなことです。

ちなみに河合塾は現時点、平均点が下がる設定で予想しているようです。したがって、昨年に比べると各大学ボーダーラインが下がっています。

kasikoi.hatenablog.com

実際どうなるかはまったくわかりません。平均点が10%下がればボーダーも10%下がるといいいたいところですが、分布が影響しますから、上位、中位、下位でそれぞれどのようにボーダーがずれるかはわからないわけですね。

で、実はそれに加えて、結構重要なのが「心理的要因」です。今までもここで書いてきたことですが、

  • 平均点が下がる=弱気の出願=2次で逆転しやすい
  • 平均点が上がる=強気の出願=2次で逆転しにくい

になるんですね。

 センター平均点が上がった2019年。

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 センター平均点がやや下がった2020年入試。 

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今回、共通テストで平均点が下がることがどう影響するのか?あくまでも平均点が「下がる」と仮定して、

  • 受験生が昨年までのセンター試験ベースの目標点で考えていたために、弱気の出願になる。
  • 受験生が修正された目標点で考えていたために、その目標点ベースで強気になったり弱気になったりする。
  • 受験生が目標点を意識できなかったために、リサーチの結果をそのまま信じて出願する。

の3つぐらいが予想されます。

しかし、実際には、「平均点が昨年並み」という可能性もあるわけで、そうなると、

  • 修正された点数ベースで考えていたから強気出願
  • 昨年と比べての上下で、動く

どっちになるかもわかりません。

今年はこのあたりの動きも、個人的には読みにくいところです。

 

国公立の志望動向は敬遠傾向か。

国公立の動向は今のところ鈍い感じです。

そもそも受験生が減少傾向ですから、全体的には易化傾向になっているわけですが、今年はコロナ禍の入試ですから、東日本大震災直後に似て、地元志向が強まるのかな、そうなると国公立は難化傾向になるのかな、なんて思っていたんですが、そこにブレーキをかけたのが、どうも「共通テストそのものへの敬遠傾向」のようです。

  • 平均点が下がる=難しそう
  • 資料とか複数の文とか慣れていない問題形式=難しそう

という二つの意識から、敬遠傾向が出て、でも結局は地元志向が強まって相殺した、という感じでしょうか。

 

私大共通テスト利用と全学部入試の人気

私大に目を向けましょう。

今日はざっくりですので、簡単にまとめると、

「共通テスト利用」と「全学部統一入試」の人気です。

共通テスト利用と全学部統一入試に共通していえることは、東京に出てこなくていい、ということです。

全学部統一入試の場合、ここだけ地方会場を設定している大学が多く、同じ大学を受けるにしても、コロナの状況下、できるだけ遠出しなくて済む方策を考えているようですね。

共通テストに関しては、昨年、だいぶ易しくなったことの反動の面も大きいと思います。定員厳格化の影響をもっとも受けたと思われる受験型で、MARCHで90%は当たり前、日東駒専でも80%は当たり前という感じになってしまったことで、昨年は「出しても無駄」みたいな雰囲気が漂い、受験生が減少しました。

そうなれば、ボーダーも多少は下がり、そしてそこへ、コロナで東京に行かなくていい入試、都会に行かなくていい入試の需要が生まれた、というところでしょうか。

ただ、特に全学部統一入試に関しては、特に学部併願を認めるところを中心に、難度がやや高いところが多くなります。また、定員厳格化の影響で、「合格発表をおさえて、後で追加合格で調整する」という方法をとる場合、「追加合格は個別一般入試からのみ」という大学が多数派であることも覚えておいてほしいところです。

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私大で大きな入試変更があるのは、早稲田(一部)、上智、青学、立教

こうしたこととは別に私大で大きな入試変更があるのは、早稲田、上智、青学、立教です。

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  • 早稲田政経。共通テストで数学を含めた科目+独自試験(英語系と現代文・社会系)
  • 上智。「共通テスト利用」(新設)「TEAP入試」+一般選抜=共通テスト+独自入試(論述型)
  • 青山学院、一般選抜=共通テスト+独自試験
  • 立教、英語の独自試験を廃止し、外部検定or共通テスト英語+国語、社会などの独自試験。日程を並列にして、自由に選べる形に。
  • 早稲田商。数学利用、歴史利用、外部検定型で定員を分ける

それぞれ大きな変更ですので、各大学のWEBページで確認しましょう。特に、過去問題については、サンプル問題、モデル問題などを発表していますので、しっかりと対策しましょう。

詳しくは次回の大学別の分析で触れますが、上智や青山学院などの入試変更は受験生の敬遠傾向につながっているようです。

上智であれば、新しく共通テスト利用ができますし、青学であれば、共通テスト利用に全学部統一があります。こうした受験型があるせいか、入試方式ごとに人気の偏りがあるようです。

このあたりも、動向がどうなっているのか、しっかり考えて出願したいところです。(もちろん、こうした情報が流れますから、アナウンス効果で多少修正されてはいくのですが…)

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安全志向の反動?難関志向へ

昨年は、共通テストを翌年にひかえ、「安全志向」の年でした。事実、今年の現役生の成績は浪人生よりもいい、などの模試報告がネット記事であがっていたりもしました。

理由を考えてみると、

  1. 昨年の安全志向の結果、優秀な生徒が現役進学し、浪人生が少なく、弱い。
  2. 共通テストなどをひかえ、思考力、記述力などを鍛えられてきた。また、英語は外部検定が導入する前提で、外部検定の受検が促進され、結果的に力がついた。
  3. コロナ禍の影響で、自宅学習時間が大量に確保され、また、結果的にクラブ活動などが早く終わった形となり、受験勉強に専念できた。

などがあげられています。

このどれが正解か、全部かはわかりませんし、3が正解だったら、「学校って何だろう…」ということになりかねないんですが、ともかく、昨年の安全志向の反動もあり、難関校の人気はあまり衰えていないようです。

むしろ、難関国公立の方が、国公立全体より集めているというような印象です。

今年の受験生は「浪人」をどう考える?~コロナ禍と「弱い」現役生(現高2)

ちなみにですが、今年の受験生は浪人をどう考えるか、あるいはどう考えるべきか、書いておきます。

まず、意識として、入学したとしても「オンライン授業」であることを考えると、1年待って本命大学に行くというのもありかもしれません。

たとえば、東京にあこがれがありながら、今年の受験に怖さがある場合、やるだけやって、だめなら、浪人でも、どうせ、オンラインなんだから、それもありかな…なんて考え方も出てきそうです。

もしかしたら、難関人気というのはそういうことかもしれません。

ちなみに、今の高2以下は非常に厳しい戦いになるような気がします。

  • 今年の受験生が、「浪人辞さず」の傾向が強くなる。
  • 今年の受験生が導入されるはずだった英語4技能外部検定に対応し力をつけたのに対し、高2以下は、導入が見送られたことで外部検定への意識が極端に下がっている。
  • 今年の受験生が、3月~5月にかけて、クラブの引退を余儀なくされ、受験勉強に集中したのに対し、高2以下は意識が低く、休校期間中の学習がそのまま遅れていて、学力低下している可能性が高い。

なんていうのが、さっきの来年版ですね。

浪人生さえいなければ、全体的に意識が低下している中で、まじめにやった人が報われる年になりそうですが、「強い」浪人生が入ってくるとなるとかなり厳しくなりそうです。

高2以下の人は、少しでも早く受験態勢を整えてほしいところですね。

 

学部人気は「理高文低」傾向が顕著

学部人気、系統人気も反動が見られます。

簡潔にいえば、「理高文低」です。

これらもここ数年の反動であるだろうと思われます。また、一般に、不景気になっていくと、理系人気が高まるということもよく言われています。このコロナ禍の先が見えない状況から文系就職の不安というものも原因として働き、もともと、文系の難しさが強調されていたこともあって、「理高文低」となったように考えられます。

大学別に見ていくと、文系については、前年に比べかなり狙い目となる系統などが見つけられるのですが、理系ではほぼほぼ前年並みという感じです。

そういう意味でも、全体としては受験が落ち着き、また、少子化の影響で徐々に易化傾向に進んでいることがわかります。

というわけで、詳細に関しては、次回ということにしたいと思います。

 

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