学びの真似び(まねび) 「学び続ける人」になるために(教育と受験と勉強法)

学習の仕方に困ったことはありませんか?ここでは、「真似び=学び」という形で、さまざまな学習方法へのアドバイスをしていきます。学習の仕方に悩んだら、受験勉強で行き詰まったら、ぜひ訪れてみてください。効果的な学習方法を知って、学び続ける人を目指しましょう!

複雑な大学入試の種類・方式を学ぶ~一般・総合・学校選抜、個別・共通テスト利用・全学部・外部検定入試…

今日は、大学入試を意識しはじめた人に向けて、大学入試というものがそもそもどのように行われているかを説明します。

当たり前のように大学入試を説明していますが、そもそも毎年受験生を見ている私のような仕事をしていない限り、大学入試の状況はどんどん変わっていて、まずこういう私のような教員が当たり前のように使う言葉が理解できない、ということが起こります。

考えてみれば、このブログでも、この説明をするのは忘れていた気がします。

言い訳ですけど、自分が生徒たちに説明するときは、当然こういうところからスタートしています。

というわけで、今日はこの当たり前のことをきちんと説明していこうと思います。なお、現高3はもはや必要ないと思うので、2021年度入試、つまり共通テスト元年となる(はずの)高2以下をターゲットに書いていきます。

総合型選抜・学校推薦型選抜と一般選抜

まずは、最初に気になってくるのは、いわゆる「推薦」と「一般」という区分けでしょう。

特に高校受験の知識で、この言葉をとらえるとなんとなく、

  • 推薦=必ず受かる、またはかなり受かりやすい。学力を問わない。
  • 一般=学力で行う普通の入試

というようなことだと思います。したがって、大学受験になると、「うちの子は入試に弱いのでなんとか推薦を…」なんていう話になるんですが、これ、ちょっと危ないんですね。

というのは、大学入試の推薦というのは、「受かる推薦」と必ずしも受かるとは限らない「落ちる推薦」があるからです。

「受かる推薦」というのは、旧来「指定校推薦」と呼ばれてきました。これだって、100%ではないんですけど、でも、これは「受かる推薦」。で、それ以外の推薦は、競争、倍率のある「落ちる推薦」なわけです。

というわけで、2021年度から、「一般選抜」「総合型選抜」「学校推薦選抜」の3本立てに整理されるわけですが、厄介なのは、この中に結局幅があるので、少なくとも運用当初は以下のような状況になることが考えられます。あくまでも私の予想ですが、残り1年で大きな情報がでていない以上、そうなるしかないんですね。

  1. 学校推薦型選抜=現状の指定校推薦のように、推薦されればほぼ受かる入試。おそらく、「学習成績の概要=評定平均」がメインで、まれに英語外部検定などの条件がつくこともあるだろう。
  2. 学校推薦型選抜=現状の公募推薦入試のように、学校から推薦がもらえない限り出願できないが、出願しても受かるとは限らない入試。選抜としては、実績、小論文、面接、学力、外部検定資格など、各大学が自由に設定。共通テストを課すこともある。
  3. 総合型選抜=現状のAO・自己推薦入試のように、学校の推薦がなくても出願でき、受かるとは限らない入試。小論文やプレゼン、実績などで合格が決まる。
  4. 総合型選抜=現状のAO・自己推薦のように、学校の推薦がなくても出願できる入試。科目は普通の受験科目で、結局は学力中心に決める。
  5. 一般選抜=要は普通の入試。ただし、これも多様化していて、とても1種類には見えない。

という感じ。もう一回押さえなおすと、

  1. 学校推薦型=指定校推薦・みんなが思う推薦
  2. 学校推薦型=落ちる推薦
  3. 総合型選抜=落ちる推薦
  4. 総合型選抜=名前は推薦だけど、実質一般入試
  5. 一般選抜=みんながイメージする一般入試

ということです。だから、2~4はそもそも誤解してはいけない部分だし、それぞれも大学ごとにいろいろなポリシーで選抜するので、一言で言えないような状況になっているんです。

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学校推薦型選抜と総合型選抜

 

受かる推薦=学校推薦型(旧・指定校)

まず、「受かる推薦」です。これは「学校推薦型選抜」に限られるわけですが、学校推薦型選抜がすべて「受かる推薦」ではないということです。

たとえば、「指定校推薦」と今、呼ばれているものがこれに当たります。私立ではこれが普通にあって、国立にはないはずです。公立には大学によって設定しているところもあります。

私立大学でもすべての大学がやっているわけではないし、やっている大学でもすべての学部で指定校を設定しているわけではありません。例えば早稲田は、2019年度入試で教育学部の自己推薦をやめて指定校に切り替えました。つまり、2018年度入試まで教育学部には指定校推薦はなかった、ということです。こういう情報を公表してくれている大学もあるし、調べないとわからない大学もあります。

すごく当たり障りのない言い方をすれば、「学校推薦型選抜」は、「学校が推薦状を書く」ということが、「総合型選抜」との大きな違いです。したがって、旧来の「して公推薦」と「公募推薦」の二つを含んでしまっているんですね。

おそらく、ですが、「指定校推薦」という言葉は残ると思います。なぜなら、私たち学校は、「指定校」は学校で発表したりする必要があるけれど、そうでない「学校推薦型」については、自分たちで持ってきてもらうしかないからです。指定校は、もらえた学校だけが要項をもらえてそこから出願する生徒にわたるわけですが、そうでない「学校推薦型」は、自分で要項を取り寄せて学校にお願いして推薦してもらうかどうか確認していくわけです。だから、この二つは混同できない。だから、区分けする言葉が必ず必要になると思います。

というわけで、まずは「指定校推薦としての学校推薦型選抜」です。

この選抜の場合、

  • 大学、学部から、特定の学校に枠が与えられる。
  • 評定平均などの条件を越えた人の中で、学校が推薦する人が合格する。
  • 原則落ちない。選抜である以上、落ちることはありうるが、その場合、おそらく次年度以降、その学校への枠はなくなる。「推薦に値する人を送ってくれる高校」という信頼に基づいて成り立っている入試だから。
  • 2021年度より、この入試についても学力入試が必須となる。しかし、「学力」には、「小論文(作文)」「口頭試問(面接)」「英検などの資格」なども含まれているため、現状と変わらない。

ということになります。

特に最後の部分が新入試で誤解されている部分のようです。

  • 現状でも、指定校推薦は「入試」であり、不合格はありうる。
  • たいていの大学は、そのために作文や面接を課しているため、今まで通りで実施できる。
  • 一部の大学では、そもそも学力試験を課している。ただし、だからといって平気で落としたりはせず、ほぼ100%の合格。問題を同封するなどして、「この程度の問題ができないような生徒は送らないでね」というメッセージ程度にしか使わない。
  • 一部の大学では、「英検」などがマストになっている。現状私が把握しているのは、早稲田一部学科、立教、芝浦など。
  • 早稲田の一部が今年から指定校推薦にもセンター受験を義務化。今後も「共通テスト受験が条件、ただし成績は問わない」というパターンも増えるだろう。

こんなことが私が理解していることです。

もちろん、指定校推薦そのものに問題があるという考え方もありますから、これを機会に「落ちる推薦」に変わる可能性も確かにありますが、大学の定員管理や倍率の維持から考えれば、この入試を簡単になくすとは思えません。少なくとも、来年一斉に多くの大学が指定校推薦をやめる、つまり、指定校推薦という名の平気で落とす入試になる、なんていうことは原理上、ありえないです。

だから、指定校推薦はなくならない、ということでいいと思います。

 

落ちる推薦=総合型・学校推薦型(旧・公募)

となると、公募推薦をやっていたけど、指定校ではない国立大学などは、今まで通り入試を行うためには学校推薦型選抜を行うわけです。そして、AO入試が総合型選抜になるわけですね。

で、これが現状、保護者・生徒が一番、勘違いする、厄介なところ。つまり、「推薦てほとんど受かるんですよね?」という誤解です。

「いえ、そんなことないですよ。落ちるんですよ」と説明しても、

「わかってます。でも一般よりは受かりやすいんですよね?」と言われるんですよね。すべて高校受験の経験からきているんだと思います。あるいは「AOは青田買いで誰でも受かる」的な話からきているんだと思います。

まず、理解してください。特にみんなが行きたがるような大学、学部について、「受ければ受かる」ような入試は存在しません。だから、ここには必ず競争があるし、となれば当然不合格者が出ます。

で、みんなが入りたがるような大学・学部となれば、そもそも設定された基準は、あくまでも「受験資格」なのであって、その基準を超えた人の中でさらに厳しい競争が起こるわけですね。だから、準備が必要です。ざっと分類すると、以下のような選抜になります。

  • スポーツや文化活動・ボランティア活動などの実績が必要で、重視される入試==出願書類で、「アピールしたい順に3つ書け」とか「大会やコンテストの規模を書け」などの指定が入る。
  • 上記のような特別活動を通じて、学部に必要な「学力」をつけているかが重視される入試=面接が実質、口頭試問のようになり確認される形式。
  • そういうものとしての「小論文」
  • そういうものとしての「面接」
  • そういうものとしての「英語4技能外部検定資格」
  • そういうものとしての「学力」=名称はともかく、実質が学科試験
  • 以上の組み合わせ。全部であることもあれば、「これとこれ」というようなケースもあります。

というような感じ。

たとえば、最近の国立大学の流行りのパターンだと、

  • そもそもある程度資格を設定する。実績型。
  • 入試では、面接とか一部学力を要する、たとえば英文を読んで、意見を書くような小論文入試を課す。
  • とどめに、センター試験の得点で本当の合格を出す。

という感じ。2番目と3番目は「合わせて一本!」というケースが流行りで、

  • 実際の入試で、資格や実績、当日の小論文、面接が問われるというケースでは、のちに共通テストで一定得点がとれて始めて合格
  • 共通テストが課されていない場合は、小論文という名で実際、かなり学力が問えるような出題がされている

というのが、一般的なケースです。もちろん、本当に学力そのものが入試では聞かれないケースもあります。筑波なら、ACは基本的に学力を度外視しているというか、内容重視で進行しますが、公募だと評定平均とか当日の学力的な論文、面接がきいてくる印象です。だから、一概には言えませんが、国立ほど今後学力を課してきながら、その枠を広げてくると思います。

最近で言えば、東北AO何期とかつけて、最後のやつは、「センター試験で基準点とったら、前期までの間に実際に会って試験らしきものしますよ」みたいな形式です。要は、「センター高得点者確保したいんじゃないですか?」みたいな形です。

まして、学校推薦型に、学力が義務付けられるわけですから、今後も、「学力+意欲・実績」という形式は増えていくと思います。

私立に関しては、総合型選抜のもととなるAOが青田買い形式であったことは間違いありません。しかし、誰でも入れたというのは大ウソ。MARCHがおそらく境目で、この大学群だと、AOが振るわずに、つまり、入学者の成績が低迷ぎみで、入試から撤退気味の大学群と、第一志望者を確保するためにそれでも学力試験を課すなどして残した大学群に分かれますが、理科大、上智、早稲田となってくると、入った生徒もかなり実績を残しているようで、「AOで入るやつは頭が悪い」というのはうそのようです。

早稲田では優秀な順に「AO→指定校→一般→附属」と入試担当者から聞きました。もう少し下の大学群になってくると、優秀なものが「一般」で、振るわないのが「指定校」「附属」です。AOはおそらく、その間。だから、やめてしまうわけですが、大学によっては、「指定校より優秀なら残す意味がある」という考え方もあるはずです。逆に、AOが指定校より成績が悪いなら、AOの枠を指定校に回すか、AOという名の学力入試にしていくなどの作戦がとられているはずです。

いずれにせよ、学力を取り込みながら、ここで優秀な層を取り込もうという考え方は必ず増えていきます。その場合、もちろん「学力を図る」ということがポイントですので、共通テストや英語外部検定などがカギになるはず。

そうしないと、ますます入試日程を先取りして青田買いする国公立に太刀打ちできないですからね。

とにかく大事なことは「おちる」選抜だということ。

ただし、ここが小論文や面接、あるいは実績であったら、「学科試験の学力」とは「別の学力」が要求されていることになります。

だから、確かに学校や模試の成績とは、特に文系では合否の相関はないように感じます。ただ、大学もそういう中で研究を重ねているようで、条件として「英語外部検定」を課したり、小論文の中で英文を読ませたり、ある程度学力が測れるように工夫をしているように感じます。

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国公立と私立の違い 共通テスト必須か、独自試験か

続いての視点は、一般入試を解説する前に、国立と私立の大きな違いです。

最近は、国公立もかなり大学の独立性が高められているので、自由に入試ができるようになっていますが、国大協などによって、実際にはかなり制約もつけられています。というわけで、国公立と私立では大きく枠組みが異なります。

国公立は、共通テストが義務付けられます。まず、これを受験して、そして二次試験に挑むわけです。つまり、例外的なケースはたくさんあるわけですが、共通テストと二次の合算で合否が決まります。共通テストの科目は文理とも5教科7科目がメジャー。そして二次科目は、私立と同様に、文理に特化した主要3~4科目。もちろん、そうでない大学もあるんですが、国公立を意識するということは7科目を学習するということになります。

私立は、文理に特化した2~4科目で入試をすることがほとんど。ただし、このあたりも見直されつつあり、複雑になっています。

もう少し細かく見ていきましょう。

 

国公立~共通テスト+2次試験が原則、前後期制でチャンスは2回、ただし合格は確保できない

国公立は、前述のとおり、共通テスト5教科7科目と二次科目の合算で決まります。

共通テストは、

文系:英語・国語・数①・数②・地歴公民2科目・理科1科目

理系:英語・数①・数②・国語・理科2科目・地歴公民1科目

が一般的です。文系の理科は基礎つきOKの確率が高く、理系の理科は基礎なしに限る大学が多いです。地歴公民は4単位科目と2単位科目があり、特に文系では4単位科目指定になることが多く、また旧帝大などは理系も含めて4単位科目に限る傾向があります。

上記については大学や学部ごとに細かな違いがありますから、実際はよく調べる必要があります。

二次科目は、

文系:英・国・歴史or英・国・数ⅡBor英・国・数・歴史

理系:英・数Ⅲor数Ⅱ・理科1科目or2科目

というのが一般的です。東大理系は英・数Ⅲ・理2・国ですね。東大文系は、英・数ⅡB・国・地歴2です。

もちろん、実技や面接、小論文などが課せられたり、実質共通テストのみで決まるような大学もあります。これは共通テストと2次の配分、あるいはその中の配点を大学が自由に決めているからです。

たとえば、東工大の場合、共通テストの得点は二次に進むための最低点として示しているだけで、その得点さえとれば合否は二次だけで決めるため、共通テストの得点は合否に関係ありません。

普通は、英語が筆記100点、リスニング100点、国語200点、数学①100点、②100点、理科と社会は全部100点。だから7科目でたいてい900点なんですが、それを何点にしようが、国語を100点に縮めようが、全部大学の自由です。だから、自分の受ける大学がどういう配点にするかを調べないといけませんし、配点の合う大学を受けると受かりやすくなるわけですね。

もうひとつ国公立で知っておかなければいけないのは、前後期制で、「チャンスが2回ある」ということです。

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後期も共通テスト終了後にまとめて出願。前期に手続きすると後期は受験できない。

これが一番理解しないといけないことなんですが、前期、後期とチャンスが2回あるんですが、共通テストが終わったあと、私立が始まる前に、両方とも出願しなければいけません。そして、前期に合格した場合、後期を受験するためには、前期を捨てなければいけないんです。つまり、前期を滑り止めにして後期で本命チャレンジという作戦は使えないんですね。

「じゃあ、前期の合格を見てから、後期出願すればいいんじゃない?」

いえ、だめですよ。出願は共通テストを受けたらすぐです。2月頭には国公立の出願は締め切られています。

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ちなみに、上記でも説明していますが、中期日程というのがあって、これは公立大学が設定できます。(できる、であって、している、ではありません)

この日程もルールは同じですので、前期で合格が出て手続きをすると、中期の合格対象者からはずされます。前期が不合格で、中期と後期を受験した場合は、手続き締切前に両方の発表がくるために、例外的に両方の合格を見てから選ぶことができます。

なお、現在国立大学は、2回の受験チャンスを受験生に与えることが義務付けられています。つまり、普通に考えれば、「前期と後期を必ず設定する」ということなのですが、実は現状「後期を廃止する」大学が多くなっています。これは、「学校推薦型選抜」や「総合型選抜」を設定することで、前期と合わせて2回という、条件をクリアしているんですね。

東大、京大も学校推薦型選抜を導入していますが、これによって後期が廃止されています。後期入試は原理上、「前期で失敗した人の入試」になっている以上、優秀な人を集めるなら、「入試の前」がいいんですね。

というわけで、後期は反動で復活させる大学も出て来るかもしれませんが、今後、「学校推薦型選抜」や「総合型選抜」が、共通テストや英語外部試験などを加味しながらより枠が拡大していくことは間違いないですし、そうなると、私立大学自体も生き残りをかけて、「総合型選抜」を充実させるだろうことが想像できます。

 

私立~独自試験が原則だけれど、自由に入試を設置

さて、私立大学です。

この私立大学の入試がさらに複雑になっています。

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共通テスト利用・全学部統一・個別…同じ学部でも何度もチャンスがある

おおざっぱに分けて次のようになります。

  • 共通テスト利用…共通テストを何らかの形で利用する方式
  • 全学部統一入試…大学独自の共通テストを作ったイメージ。どの学部も同じ問題で受験する。
  • 個別入試…いわゆる昔ながらの学部ごとの日程
  • 英語外部検定入試…上記のどれかと組み合わさることが多いが、英語外部検定を利用する入試

このような形で、同じ大学同じ学部を志望しても、上記のものをその学部が設定していれば、チャンスが何度もある、ということになるわけです。逆に言えば、まったくこういう入試を設定せず、1回の入試で決める大学もあるわけです。では、そのあたりを説明していきましょう。

共通テスト利用入試~あったり、なかったり…方式も様々で一言で言えない。

まず、共通テスト利用です。この方式は大学によってあったり、なかったりします。

たとえば、ないのは慶応大学です。まったくやりません。

早稲田は学部ごとに異なります。やるところもあれば、やらないところもあります。またやる学部も科目数も違えば、独自試験を追加したりとか方式も違います。

MARCH以下になってくると入れるのがメジャー。ただし、科目数はだいぶ大学で異なります。明治は2019年度の場合、3科目or5科目か3科目or4科目or5科目かなど学部ごとの設定です。立教は3科目か6科目で統一して設定しています。

難関大学ほど、国公立併願者を集めたいため、多い科目数だけで設定してきたり、3科目と別に多科目を設定します。

一方で、受験生の受けやすさを狙っている大学は、3科目です。両方欲しい大学は、それを両方設定するわけですね。

逆に言うと、MARCH以下の、多科目入試は国立大併願層を狙っているので、ボーダーは3科目に比べて低いことが多いです。

ですから、受験勉強の効率だけを考えれば私立受験者は3科目にしぼることがいいように感じますが、2年生まで数学がしっかりできていたのに「私立志望だから数学は捨てる」というのはもったいない気がします。

最後ですが、共通テスト利用と一言でまとめていますが、「共通テストだけで合否を決める大学」と「独自試験を課して合算で合否を決める大学」があります。

前者は、まさに共通テストを受けただけで、私立には行かずに合格をもらえますが、後者は、当然どこかで受験しにいかなくてはいけません。成蹊大学のP方式のように、「独自試験を欠席しても共通テストの得点だけで合算の合格最低を上回っていれば合格を出す」というような大学もありますが、普通はそこを欠席したら合格最低点には届きません。こうなると共通テスト利用とはいっても、実質の一般入試ですから、いわゆる共通テスト利用とは、立ち位置が異なってきますね。

 

全学部・統一入試~MARCH以下の流行 大学ごとの「共通テスト」

続いて、近年誕生して、主流となっているのが「全学部入試」「統一日程」などの名称で呼ばれる入試です。

早慶は実施されていません。上智はこれがTEAP入試の日程にあたります。MARCHは全大学実施しています。

この入試は、大学ごとに、独自の「共通テスト」を作ったもの、といったらわかるでしょうか。

たとえば、これまで大学入試は、学部ごとに日程が異なり、問題が異なっていたわけです。試験回数を増やすとなると、日程も、問題も、学部の分作らなければいけなくなります。これは、実は大きな負担です。

でも、受験生を増やすためには、回数を増やしたい。

そういう中で、学部ではなく、大学が全学部で共通する問題を作り、全学部がその問題を使った日程を1日共通で増やせば、学部の数でなく、一日、そして一題分の負担で済みます。

これが全学部統一日程。

まず、これも大学で特色が出てきます。

立教は、この日程について、学部間の併願ができません。つまり、いろいろな学部の志望者が同じ問題を受けるけれど、出願できるのは1学部だけ、合格も一人一つだけ、ということです。

明治や中央は、併願を認めています。また、たくさん出願すると受験料が割り引かれるとか、一定金額払うと後は何学部併願しても増えないとか。そうなると、一人でこの日程だけで何学部も併願して合格を確保する受験生が出てきます。

一般的に、ですが、併願を認めないパターンの方が合格はとりやすく、併願を認めるパターンの方が合格はとりにくいですね。

また、同じテストで違う学部の合否判定に使う、ということは、学部間の合格レベル差が見えやすくなる、ということでもあります。これは、特に学部の教授が入試への関わりが強い大学では、「差をつけられたくない」意識へとつながり、比較的不人気の学部が「差をつけられないように」高い合格最低点で判定しやすい、なんていうことも起こります。

法政大学はここをT日程と呼んでいますが、2科目入試にしています。文学部の日本部学科などでは、課題図書が指定された論文入試です。このように、個別日程と入試科目や入試問題で差異化を図っているケースもあります。

英語外部検定利用入試~全学部がそうなっていたり、個別で別定員をつくったり、別日程になったり…

さて、英語外部検定利用入試です。

これは、一般に英語外部検定を利用した入試のことです。いくつかのパターンがあります。

  • 受験資格型…外部検定が出願資格となっていて、大学が作る英語の試験をなくし、文系であれば国語・社会、理系であれば数学・理科だけで決めるパターン。
  • 得点置き換え型…外部検定が出願資格となっているだけでなく、資格ごとに得点が決まっていて、差をつけていくパターン。
  • 見なし得点型…外部検定の資格ごとに得点が保証されつつ、当日にも英語を受験することが可能で、そのいい方の得点をとってくれるパターンや、一般入試を普通に英語で受けるよりもいい得点(〇級以上は100点など)で、一般受験者より有利に扱うパターン。

こんな感じです。一番最初は英語が苦手な人におすすめで、英語が得意な人が資格型の大学に出願すると、合否判定はそれ以外の科目にだけになってしまいます。

だから、英語が得意な人は、得点化してくれる方に出願した方がいいことになります。

もうひとつのこの入試のパターンは定員の分け方。

  • 日程や方式を個別方式と分けて、併願可。それぞれはそれぞれで判定。日程をわける方式の場合、全学部統一日程で入れる方式が多い。
  • 同一日程で実施して、外部検定方式と一般方式を同じ定員枠で判定するパターン。英語外部検定が個別の英語に換算されるなどの方式。
  • 同一日程で実施して、外部検定方式と一般方式では枠を完全に分けているパターン。これだとどちらが自分にとって得か分かりづらい。

特に問題なのは最後のパターンで、これもまだ「併願可」ならいいんですが、「併願を認めない」大学もあるんですね。

東京理科大がこのパターンで、外部検定か、センターの英語かを選択しなくちゃいけない。併願はできない。外部検定は英検2級以上から出願できるんですが、2級の場合、加点は0点なので、「外部検定方式で出願すると英語ビリからスタートかあ…」となるわけです。でも、実際は英検準1級取得者がたくさんいるとは思えませんから、そうなると迷いが出ます。どちらで出願するか。

この方式は、今後もいろいろなパターンが出て来ると推測します。

 

個別入試~個別以外にこれだけあると一学部で何回も受けられるけど、個別自体も複数回受けられたり…

というわけで、こんな入試方式があるうえで、みなさんが考える「一般入試」「個別入試」があるわけです。

これだって、大学によっては、前期と後期にしたり、國學院のように「バランス型」「得意科目重視型」「学部特色に合わせた配点型」のような3日程を作って、3回チャンスを与えるような大学もあります。

なので、本当に1大学1学部でも山ほどチャンスがあるんです。

たとえば、明治の法学部受けたい場合、

共通テスト利用…3科、4科、5科、全部出願したら×3

全学部で×1、個別で×1

計5回の合格がとれます。タダならいいんですけど、センター利用で1校1万5000円とか1万8000円とか、個別は35000円が基本です。

ふう。

チャンスが多い、といえば聞こえはいいけど、定員は変わりませんから、こうやって受験校数を増やさせられているんですね。

 

2021年度からの新型入試・共通テストや英語外部検定を利用しながら…

こんなことを前提に、2021年度からの新型入試も触れておかなければいけません。変えてきた大学のパターンの共通点は、

  • 英語外部検定を利用する
  • 共通テストを利用する
  • 自作の入試問題を思考力型、つまり記述・論述のウエイトをあげる

ということのようです。

変えた大学は、

  • 早稲田大学政治経済学部
  • 上智大学
  • 青山学院大学
  • 立教大学

です。もちろん、細かい変更はその他にもたくさんありますが、「新型」という名前をつけるとなれば、このあたりになります。

逆に言えば、大半は変えません。

慶應義塾大学にいたっては、まったく動じない。共通テスト利用は今まで通りなし。全学部なし。外部検定も使わない。個別一発勝負。文系は個別でも小論文必須。記述は出します。総合型選抜はやるところは自信を持ってやりますよ(全学部じゃないですけど)、という感じ。

一応新しい傾向をまとめておきます。

共通テストを利用した新型入試・早稲田政経・上智・青山学院~基本科目を共通テストで聞いて、大学独自では論述中心へ?

まずは、先陣を切った早稲田政治経済。要は、共通テストを使って数学を課す、ということでした。ついでといってはなんですが、古文とか漢文とかも共通テストだけにして、個別は、モデル問題からすると、政治経済・社会科学的な思考が問われる評論文と英語長文の2題にしぼる。さらに英語外部検定ですね。この最後はとりやめになりました。

www.waseda.jp

www.manebi.tokyo

いずれにせよ、「共通テストを使って、独自試験を簡略化し、その分記述のウエイトをあげるという作戦です。

続いて、上智ですね。

上智は、もともとTEAPと個別でした。整理すると以下の通り。

  • TEAPは維持。ただし、資格型でなく、得点化に。英語が生きる形に。
  • 共通テスト利用を新設。
  • 共通テストを基本にして、学部試験は論述型に。

という感じです。

www.manebi.tokyo

www.manebi.tokyo

www.sophia.ac.jp

上智大学の一般選抜ですが、TEAP型はともかく得点換算になったことが大きな変更点です。

で、普通の一般選抜は、まず外部検定は任意とはいえ、加算になっています。基本は共通テストになるようですから、共通テストの英語の満点が上限とはいえ、加算される以上、資格はとりたいところ。

新設の共通テスト利用でも、英語外部検定は「使わない」ではなく、「B2以上は得点に合わせて見なし得点化」ですので、やはり取得したいところです。

まだ詳細はわかりませんが、独自試験は簡略化され、その分、論述型、思考力型の入試になるとのことです。

https://www.sophia.ac.jp/jpn/admissions/gakubu_ad/itd24t000004wq4a-att/gakubugakka_kyoutsuu_heiyou.pdf

青山学院大学も同じような発想だと思われます。

www.aoyama.ac.jp

https://www.aoyama.ac.jp/wp-content/uploads/2019/12/ad_2021exam_info_subjects_20191219_rU5t9.pdf

経済学部・理工学部などは結局、学部が作る今まで通りの独自試験でそのままいくようですね。

ところが、それ以外の学部は、学科試験を共通テストを利用して、メインとなる科目については独自試験で行う感じ。たとえば、日本文学みたいな感じなら国語を従来通り実施するけれど、そうでない教育人間とか法とか国際政経とかは、小論文的というか総合的というか、そういう論述の形。

まあ、詳しくはリンク先を見てください。サンプル問題がある学部もあるので。

こういう形になっていくのが新型入試のひとつの形だと思います。

したがって、従来よりも普通の大学受験の準備と、論述型、論文型の準備とが並列されていく生徒が増えていくはずです。

 

立教大学の日程選択型入試~大学全体で試験問題を作り、学部が指定する科目が受験できるならどこでも受けていい入試

最後に紹介するのは立教大学です。

www.manebi.tokyo

 立教の変更点は主に二つ

  • 英語の独自試験を廃止して、外部検定のみに。ただし、成績提供システム廃止にともない、共通テストの英語を認めることに。
  • 日程を5日間から自由に選択。

 

www.rikkyo.ac.jp

残り2科目がどうなるかは書かれていませんが、おそらく今まで通りだと思います。

どうして、こんな5日間から選ぶ入試ができるかといえば、立教が「大学で入試問題をまとめて作っている」からです。

つまり、どの学部を受けても同じ傾向の問題が出ている。だから赤本が大学でまとまっている。

こういう大学はほかに学習院とか東洋とかです。意外と今は多いですよ。

なので、全学部と個別も同じ入試問題傾向なんですね。

だから、どっちで受けても同じ。これをまとめてしまえば、大学は全体として入試にかかるコストや負担を減らせるし、受験生は入試日程を自由に選べるということでしょう。日程ごとの、問題の難易度をどう調整するのか、合格発表は日程ごとにやるのか、5日間終わってからまとめてやるのかなど、ちょっと不透明なところはありますが、どんな風になっていくのかは興味があります。

学習院がはじめたコア入試というのも違う学部の試験の時でも、受けていいよ、というやり方ですが、これを完全に自由にしたパターンです。

これからはこういう入試も出て来るかもしれません。

 

というわけで、複雑な大学入試の現状をまとめました。はじめて、あるいは久しぶりに受験に携わる方の参考になれば幸いです。

私自身は、入試はわかりやすい方がいいとは思いますが、こうなっている以上、よく理解して、向いている大学、しっかりとした準備をできることは、むしろ合格のチャンスを作るのですから、前向きにとらえて受験に向かいましょう。