コロナによる休校騒ぎが落ち着いてきた中、昨年度入試結果がまとまってきました。そうした大学入試の現状を振り返り、今年度入試に向けて考えてみたいと思います。
首都圏でもようやく普通に近い学校生活が戻ってきたようです。もちろん、すべてが今まで通りとはいかないでしょうが、徐々に、徐々に、今までと同じような生活が戻ろうとしています。
同じようになろうとすれば、「緩んでいる!」と批判されそうなのがつらいところですが、子どもたちの日常が戻れば、それは「緩む」と批判される部分もあるだろうと思うし、緩まないようにするということは、子どもたちから見れば日常が戻ってこないということなんだということは理解してほしいところです。大人だって、居酒屋に行くか、旅行に行くかはさておき、仲のよい知人とは平気で雑談くらいするんでしょうから。
というわけで、学校ではフェイスシールドとマスクをつけつつ、空き時間で消毒作業をする毎日です。
さて、日常が戻ってくれば、大学入試が気になります。ついこの間までは、9月入学だの、休校の延長だのを危惧していたことを考えれば、ありがたい話です。
ベネッセや河合塾から大学入試結果のまとめ資料が届きましたので、ざっと昨年、2020年度入試を振り返って、そして、現時点での今年の展望をしておきたいと思います。
- 安全志向の入試と定員厳格化による入試難化の一段落
- 国立大学~推薦入試の増加と地方国立の易化傾向
- 私立大学~難関私大の易化傾向、中下位大学はまだ難化も。
- 文系難化の歯止め、理系は難度そのまま
- センター利用入試の易化傾向
- 安全志向による推薦入試の動向~志願者増、合格者増に。
- コロナ禍の2021年度入試の動向
- 知らないとマズイ!主要私立大学の大きな入試変更
- 2021年度入試のキーワードはやはり「安全志向」
安全志向の入試と定員厳格化による入試難化の一段落
さて、まずは昨年度、2020年度入試がどんな状況だったかを振り返っていきましょう。
なんといっても、翌年に共通テストを控え、漠然とした「浪人できない」という感覚を持ちやすい、そんな入試が予想されました。
安全志向になると、
- 指定校推薦やAO入試(総合型選抜)などに流れやすい。
- 受験科目が多い大学を敬遠したり、判定が厳しい大学を敬遠したりしやすい。
- 受験大学として判定が出ている大学を追加しやすい。
- 結果として、ボーダーラインぎりぎりでは、むしろ逆転合格しやすい。
なんていうことが起こるわけです。実際、そんなことを予想はしていました。怖かったのは、定員厳格化の中で、推薦の合格が増えていくと、しわ寄せが一般に影響しますので、ここがどうなるか、というあたりでした。
もうひとつが今も書いた「私大定員厳格化」です。すでに昨年の段階でかなり落ち着きを見せていました。とはいえ、下位大学になってくると、まだ昨年でも大量に追加合格を出し、その影響を受けた大学は追加も出せずに入試を終えていたことがわかっています。
このあたりがどうなるか、というのが、今年の入試だったわけです。
国立大学~推薦入試の増加と地方国立の易化傾向
まずは、国立大学から分析していきましょう。
いくつかの予備校の分析で共通しているのは、「全体の志願者減」「センター問題難化」「安全志向・推薦志向」といったあたりでしょう。
まずは全体の志願者減です。
とにかく少子化から受験人口が減っています。ある意味では少子化が解消されない限り、全体的な大学入試の易化傾向はつづくのでしょう。まず、これがとても大きい。
その上で、センター試験が若干とはいえ、難化しました。平均点が下がったわけですね。こうなると、弱気になるわけです。このあたりは何回か書いてきたと思いますが、
要するに、80%目標の時、平均点があがって「80%とれたけど、ボーダーが82%になった時」は受けたくなり、76%しかとれなかったけど、ボーダーが78%に下がった時はどうも怖くなる…っていうのが人間心理なんですね。
ボーダーより上の人は、客観的に見ることができて、あまり動きは変わらないんですけど、特にボーダーぎりぎりとか、下になると、この影響が強く出る。
そして、今年はもともと安全志向に傾いていたわけですから、そんなこともあってより安全志向につながってしまったというのが、現実味のある分析ではないでしょうか。そもそも、国立を狙うような層が私大の指定校やAOなどを選択した、ということの影響もあるかもしれませんし。
というわけで、難関大をのぞいて、特に地方の国立大では減少がはっきりと見えました。学部系統でいえば理工系は維持、人文系や国際関係は維持したようですが、全体としてはとにかく志願者が減少する入試となったようです。
また、難関大をのぞいて、とは書きましたが、実際は、難関大でも微減していることが多いです。東大のような難関大で考えれば、やはり、微であっても、「減」であることは大きく、やはり、全体としては入りやすかった印象ではないでしょうか。
つまり、「国立に行きたい!」と頑張っていた人が報われるような入試になったということが言えると思います。
私立大学~難関私大の易化傾向、中下位大学はまだ難化も。
私立大学は、何と言っても、「定員厳格化」が止まって、徐々に各大学が慣れてきた、というのが、一番ではないでしょうか。
「定員厳格化」というのが言われだしたころは、そもそも合格者がどんどん減らされる中で、合格発表をどのくらい出せば足りるのか足りないのかがわからないような状況でした。
大学自体が手さぐりで、だから、合格者を減らしたけど、それでもオーバーしてみたり、減らした結果、大量の追加合格をださなければいけなくなったり…。オーバーしてしまったから、余計、次の年に減らさなければいけなかったり。(定員厳格化は、1年ごとの話でなく、在籍している学部や大学の人数が影響するんですね。)
最初のうちは、正直「とりあえず大きく減らして追加合格で調整すればいいよね。というかそうするしかないよね」って感じだったんでしょうけど、追加合格というのは実に不安定で、いい学生がとれるとは限らないし、手間もかかるし、最悪、埋め切れない、みたいな現象も起こるわけです。
だから、「定員管理」が固定された後については、そのデータをもとに、また大学が合格者を増やしつつある、というか、追加合格でなく、できるだけちゃんと合格発表しようとするというか、それができるようになったということでしょう。
昨年あたりで、早慶やMARCHなどの合格発表がだいぶ落ち着いてきた印象でした。そもそもの難度も若干下がったような印象でしたし。
でも、昨年だと、成城・成蹊・武蔵・明学・國學院とか、日東駒専、特に東洋大あたりは、必ずしも易化とはいえないし、大量に追加合格を出しているような状態でした。となると、その追加合格の影響を受けて、その下の大学、大東亜帝国なんて表現が復活するほど、あるいはその下のランクまで復活するほど、難化し、また追加合格では、スケジュール上埋めきれないまま終わる…というような状況でした。
こういう状況が少しずつ解消されたのが今年、ということだと思います。
まず、最上位の早慶です。文理で傾向が違うので、詳細はあとにしていきますが、原則的に、応募が減り、合格者が増える、というのが特に文系ではっきりと出ています。理系では合格者はほぼ変わらないものの、応募者は微減です。
つまり、易化傾向にあったということです。上智あたりになると、志願者が前年比94なのに合格者は115、東京理科大は志願者は98でほぼ前年並みですが合格者は109でやはり易化傾向にあると推測されます。
MARCHレベルに入ってきても同じです。志願者は微減とはいえ減少傾向、合格者は増加傾向です。立教は合格者前年比116、法政は110です。青学と中央がほぼ前年並みですが、志願者と合格者を見ると合格者の方が前年比が大きくなります。
成城・成蹊・明学・武蔵、日東駒専のランクになると、より鮮明になります。志願者は大学によっては維持しています。武蔵とか日大とかですね。
ところが合格者は大きく増やしている。結果として難易度もだいぶ落ち着いた感じになっています。
さらに下の大東亜帝国も、傾向自体は同じで、志願者減、合格者増で、大学によってはかなり合格者を増やしているところもあります。しかし、難易度になってくると前年ママのところが多くなります。これは、「安全志向」の中、受験生が受験校を増やし、結果として追加合格を大量に出さざるを得なかったような状況なのではないかと推測されます。
逆に言えば、東洋大に象徴的にみられるように、この上のランクでは、前年までの反省をもとに一般入試で合格をしっかり出し、追加合格を減らすことに成功した。ところが、その結果、この下のランクでは、たくさんの合格を出されたことにより、どんどん抜かれてしまった…というようなことでしょう。
受験生からすれば、厳しいので受験はしておいた。ところが一般入試で受かった。だから手続きはしなかった。結果、追加合格を出した…というような現象でしょう。
要するに、上の大学から、1年ごとに落ち着いてきた。昨年でMARCHまで落ち着き、東洋は追加合格を出した。今年は、日東駒専まで落ち着いて、その下が追加合格を出した…。裏を返せば、まだその下の大学は追加でとりきれず、難化傾向が続いている可能性があると思います。
この下のランクでも、志願者減、合格者増の傾向にはあります。しかし、安全志向で、来ない受験生が併願し、しかも日東駒専あたりが一般入試で合格者を増やし、さらに大東亜帝国が追加で抜くとなると、それでも足りなかったんでしょう。結果、難度はまだ上昇傾向にあるということだと思います。
ちなみにですが、上位から下位まで合格者が増えているような状況の中ですが、追加合格の占める割合は上昇傾向にあります。
追加合格が昨年より大きく増えているのは、早稲田、上智、法政、明学、駒沢あたりでしょうか。東洋大は昨年大量に出しましたが、今年は出していないようです。受験生がさまざまな理由で受験校を増やしながら、トータルとして大学は合格者を増やし続けている状況が見えてきます。
文系難化の歯止め、理系は難度そのまま
先ほど書きかけましたが、こうした全体としての易化傾向は、文系ではっきりと表れていて、理系ではさほどではありません。
しかし、さほどではない、とはいえ、こうした傾向が理系でも見える、とはいえます。芝浦工大とか東京理科大とかのデータを見ると、やはりそうした傾向にあるようです。
文系がより易化したのは、個人的にはなんといっても、大学入試そのものの難化傾向がおちついたことによると思います。私大定員厳格化の影響は、私大文系で特に強く影響が出ていました。私大文系が難化したってことですね。こうなると、国立を志望したり、あるいはどうせ難しいならと理系で頑張ったり…という生徒が増えてくるものです。
では、理系が難化するかといえば、安全志向や全体的な少子化がありますから、結局は文系で易化傾向、理系の難度は変わらず…という印象だと思います。
センター利用入試の易化傾向
今年の入試でもうひとつ強調しなければいけないのは、最後であったところのセンター試験利用入試の志願者が各大学大幅に減ったことです。
そもそも、私大定員厳格化の中で、まず、このセンター利用の合格者をしぼることで、入学定員をコントロールしようとした節があります。受験生からすれば、併願校についてはできればセンター利用で確保して、日程を楽にしたいという思いがあり、併願校であればあるほどセンター利用を使う…という印象だったのですが、昨年までの結果を見る限り、センター利用でそう簡単には合格がとれないということははっきりしていました。MARCHなら85%越えは当たり前で90%目標。人気学部ではそれでも足らないというところ。日東駒専でも80%はとらないと、といったところでしょうか。
こうなってくると、そう簡単には合格がもらえません。本当に上位大学に受かる人ならいいですが、そこを実力相応やチャレンジで受けるとなると、とてもじゃないけどセンター利用で合格確保…なんてことは考えにくくなります。
結果、出願を控える。
まして、今年はセンターが難化して平均点が下がりましたから、目標点がとれなくなる。
一般入試でしっかり合格を確保しようという流れが、最初に書いた全体としての合格者増にもつながるわけですが、結果、センター利用は「すいた」ということなのでしょう。紹介されていたのは、東洋大の法学部とか、芝浦工大とかですが、一般とセンターの難度が変わらない、あるいはセンター利用の方が低い、というような分析になるようです。
この2大学はもともと、センター利用で合格をしっかり出すタイプの大学です。国立併願者とか、センター利用の方が、いい学生がとれるという算段だと思うんですけど、受験生の受けやすさとかを考えるタイプの大学は、そろそろ、センター利用でもしっかり合格を出すようにして、一般とセンター利用の難度のバランスがとれるようになってきたのではないでしょうか。
受験生の方は、「センター利用は難しい」「追加合格は一般から出すらしいから一般を受けた方がいい」ということで、敬遠していたわけですが、一部ではこうした動きになっていくわけです。
共通テストになることも考えると、来年の入試も同様に共通テスト利用と一般の難易度のバランスはしっかりとれるようになっていくと考えられます。
安全志向による推薦入試の動向~志願者増、合格者増に。
共通テスト前年の「安全志向」から、推薦入試に流れることは予想されていたことでした。実際はどうだったのでしょうか?
実は、主力となる指定校推薦や付属校の推薦については、あまりデータが出てきません。枠ではなく、実際にどれだけ入学者がいたのかというのが、一般の枠に関わるのですが、このあたりはデータがまとまっていないのか、非公表なのかはともかく、正確につかむことができません。
見えてくるのは、AO入試や公募推薦入試の結果なのですが、こちらを追っていきましょう。
まず、国立大学です。国公立大学は、推薦AOといっても、センター試験の結果を踏まえて合格判定がされるケースが非常に多いので、必ずしも学力が問われないわけではありませんし、試験そのものも英語を中心にしっかり学力を確認しているケースが多いので注意してください。
さすがに募集人員はずっと拡大してきたこともあって、横ばいに転じましたが、志願者と合格者はともに増加傾向にあります。AOでは、志願者の増加に比べて、合格者の増加率の方が低いのでやや厳しくなってきた印象はありますが、それでも合格者が拡大していることを考えると、推薦入試自体の拡大、そして易化傾向は続いているのではないかと思われます。
私大の方は志願者の増加に比べて、募集人員や合格者は増えていかない状況がすでに去年で起こっていました。つまり、競争が厳しくなっているということです。
今年でも推薦入試は、合格者が増えてはいるのですが、志願者の増加にはまだついていっていません。AOにいたっては志願者だけが増え続けて、募集人員や合格者は微増程度。大学も募集人員に合わせて合格発表をしていることがわかります。
そもそも大学のAOや公募推薦、今年からの総合型選抜や学校推薦選抜になるわけですが、これらは、必ずしも学力とは連動するわけではないとはいえ、ある特定の「能力」を見ようとしていることは間違いなく、競争のある入試であることを、受験生の皆さんはきちんと自覚してください。
高校入試のように、推薦というと必ず一般より入りやすくなるとか、合格保証をしてくれるとか、そういう類のものではありません。
今年はコロナの影響で不安を感じる受験生がまた多く推薦に流れると思いますが、決して「推薦に流れたら受かる」わけではないんです。
むしろ、これらのデータから見えるのは、大学の総合型、学校推薦での合格発表は結構限界まで来ているので、志願者が増えればより厳しい入試となることが予想されるわけです。
定員を増やす、というような立命館型の発表があればともかく、そうでないかぎりは、一般選抜もしっかり考える受験戦略、つまり合格するまでは受験勉強を継続することをくれぐれも注意してほしいと思います。
コロナ禍の2021年度入試の動向
さて、このような入試状況の中、大学入試はどのようになっていくでしょうか。そもそも共通テストが行われ、それに合わせて様々な大学入試改革が予定されていたわけです。
ここまでもまとめてきましたが、簡単に振り返っておきましょう。
大きく分けると、
- 共通テストが導入され、変わること。
- どの入試区分でも「学力」「主体性」「思考力」の学力の3要素が問われること。
- それに合わせて私大が入試改革を行うこと。
- 総合型選抜、学校推薦型選抜、一般選抜の3つの形態に整理されること。
などがあげられると思います。
共通テストはどう変わる?数学の試験時間とリスニング
まず第一に共通テストです。いろいろありましたが、結論的には大きな変更がないような状態になってきました。現時点で予想、あるいは発表されているのは以下の通りとなりました。
- 平均点は50%程度を狙うと推測される。今後、発表する予定はなし。
- 数学①が70分となる。
- 英語がリーディング100点、リスニング100点となる。時間については今まで通り。
まず、平均点については、今後も発表の予定はないそうですが、試行調査の結果やその分析資料を読む限り、平均点は50%程度を狙っていたことがはっきりわかります。ただし、本番でもそうなのかはわからない、と発表されているわけです。これはもしかしたら、今まで通りセンターでのボーダーを狙いながら、結果平均点が下がったように感じるという、安全志向にぶれるリスクがある展開になるかもしれません。これは予備校の模試の平均点と判定予想しだいだと思われます。
次に数学ですが、これは事実上、影響がないと思います。
問題は最後です。
実際には、傾斜配点といって、各大学が配点を動かせるので、大きな問題はないんだ…という方もいらっしゃいますが、私は間違いだと思います。
国立大学はざっくりと以下の通りです。
- 今まで通りの4:1 52.9%
- 若干あがる3:1 16.8%
- 共通テスト通りの1:1 22.4%
- その他 7.8%
です。
これだけ見ても、北海道・東工・九州・広島などは1:1ですし、東北、名古屋、京都、大阪は3:1となります。東大は7:3ですが、今までセンターのリスニングを捨てていたことを思えば、意味のある変更です。
そして、問題なのは実は私立大学です。
現時点の共通テスト利用の詳細を見ると、1:1で行くのは、早稲田、明治法政経文理工農(食糧環境政策)経営国際日本総合数理、青山、東洋あたりです。
それ以外の大学も詳細を発表していないというのが実情で、学習院は4:1、中央は学部ごとで決定というあたりが発表されているライン。
つまり、共通テスト利用あたりも考えると、リスニングの比重は俄然高まっていると言わざるを得ません。
また、リスニングの後半はB1レベルで1回読みとなってきていることは強調してきましたが、くれぐれも「今まで通りだろう」ではないというあたりはおさえておきましょう。
総合型選抜と学校推薦選抜に「学力」は入る?
つづいて、すべての入試形態で学力の3要素を問う、ということでした。となると出て来るのが「指定校にも学力検査があるの?」ということです。
これは多少裏があって、英検などの外部検定、小論文、面接なども含めて学力とみなしているので、実は今までと変わりません。
指定校推薦であっても、入試ですから、合格を保証する大学はひとつもなく、何かとんでもないことが起これば落とします。その要因のひとつは、当然学力であるわけですね。指定校推薦は、高校と大学の信頼関係、つまり、「高校が推薦してくれる人はちゃんとした人ですね。信じます。だからそうは落としません」ということにすぎないわけで、それを飛び越える問題があれば、不合格になります。まあ、そうなれば来年の枠はたぶんないでしょうけど…。
というわけで、指定校についてはあまり心配しなくて大丈夫です。
ただし、総合型選抜や今までの公募推薦にあたる学校推薦選抜は、今回の改革でより、学力をしっかり問う大義名分ができた状況になっているので、多少なりとも変わってくるかもしれませんね。
調査書重視の入試って本当?
調査書の書式が変更され、ざっくりいうと細かくなって、上限がなくなるという変更とともに、これを入試に加味するということが義務付けられました。
「ポートフォリオ」で大騒ぎになった学年でもありますね。
私立大学については、今までも書いてきましたが、結局何も起こりません。本来、「必ず」なんですが、私立のほとんどは、
- 総合型選抜とかでやる。
- 出願時に必ず提出させるが、判定には用いない。
の二つで乗り切っています。
ポートフォリオも細かくなった調査書のためと、拡大していく総合型選抜のためには、すごく有意義なことなんですが、こと一般選抜には何も関係ない、ぐらいの話になっています。
なので、気にする必要はない…といいたいところなんですが、国公立に目を向けると必ずしもそうとはいえない状況も出てきています。
- ボーダーラインで活用 一橋 埼玉
- 総合的に判断 東工 千葉
- 得点化 都立大
- 新たに面接を課す 歯学部とか看護とか(医学部はもともとある)
という感じ。筑波大学はやるやるといっていましたが、「コロナの影響で実施しない」という発表になりました。本当に真意かわかりません。やらなくていい理由を探しただけかもしれないし。もし、本当に「コロナの影響」だとすれば、筑波はもともと「ボランティアや全国大会やコンクール、コンテストなどの課外活動」を評価するつもりだったということになりますが、現時点わかりません。
もし来年筑波がやるなら、たぶん、今書いたことを評価するんだってことの可能性が高い気がします。
まあ、総合的に評価っていうのも、「やんないよ」っていうことのようにも聞こえますから、都立のようなものは少数派ということでしょうから、事実上、気にしなくていいと思います。
ただし、書いてきたように、総合型選抜、学校推薦選抜の比重は高まっていますし、ここでは、主体性こそが問われるわけですから、ポートフォリオそのものはどうでもいいんですが、ポートフォリオを書くような作業を通じて、志望理由や大学の学習計画を語れる自分になる必要があることは間違いないし、私自身はとても大事な作業だと思って生徒に接しています。
言葉を変えれば、ポートフォリオみたいなものを提示されて、それでもやりたくない、面倒だって捨ててきたとするなら、あまり推薦向き、総合選抜向きではないということですね。
外部検定~成績提供システムはなくなったけれど…
外部検定が共通テストからはずれました。
しかし、これは英語外部検定入試がなくなったわけではありません。
あくまでも、共通テストに外部検定がいらなくなっただけの話です。ここまで書いてきたとおり、総合型選抜、学校推薦選抜では、受験資格などで要件となっているケースが多いし、実際受けさせてみて、「英語が原因で落ちたかな」と思うような難関大もあります。アドミッションポリシーや受験資格に英語外部検定みたいなことが書いてあって、2級ぐらいで出しちゃったあたりですね。旧帝だとそのひとつ上ぐらいじゃないと厳しいかなと。準1級までなくても2級上位合格ぐらいじゃないと厳しいかなと感じています。ちなみに最低レベルですよ。加点にはなりそうもない。
私大に関しては、外部検定入試がどんどん幅をきかせています。定員が割かれたり、加点されたり…。
加点ということでいえば、千葉大みたいなところは、一定点で満点扱いにしたりしますから、外部検定は非常に重要です。
今年はコロナのおかげで、もしかしたら、受験資格としての英検はかなり緩和される可能性がありますが、でも、持っていたら有利、ということを消す、つまり、「英語は問わない」なんていう風になるわけがありません。2年生で一定資格とっている子が相対的により有利になる可能性があります。
だから、6月現在の状況では、なんとか外部検定は受験して、しっかり有利に働かせることをおすすめします。もちろん、一般選抜、普通の入試オンリーって決めた人はいいんですけど、そうじゃなくて、英語得意なんだよね、武器にしたいよねっていう人は、必ず、外部検定を狙っていきましょう。
そうです。総合型選抜とか学校推薦選抜とか考えているあなたのことです。そこに目が向かないから落ちるということはないと思いますけど、目が向いて努力して資格取った方が有利になることは間違いないんですよ。
知らないとマズイ!主要私立大学の大きな入試変更
最後になりますが、今年から私大の入試がどんどん変わっていきます。成果があがれば、この傾向に拍車がかかっていくことでしょう。というわけで、主要大学の大きな変更のみあげます。早稲田商も結構大きいんですけど、このレベルを大きいとやると際限がなくなるので、本当に大きく変わるところを選んでおきます。
早稲田政経~共通テスト+独自試験2科目
早稲田は、共通テストを必須にするのが、政治経済、国際教養、スポーツ科学です。
国際教養とスポーツ科学は端的にいうと、科目自体は、今までのまま、独自試験をやめて、共通テストにのっかるという感じ。国際教養は、英語が独自試験で、スポーツ科学は、共通テストだけだったり、小論文足したり、競技歴足したり。
問題は政経ですね。
共通テスト100点 外国語・数ⅠA・国 25×3 数ⅡB・理・地歴B公→1 25
独自試験 100点 大問1 社会科学系現代文 大問2 英語長文 大問3 英作文
https://www.waseda.jp/fpse/pse/assets/uploads/2020/03/3d879adced4c01b546c4e0fd42776a92.pdf
数学が共通テストとはいえ、必須になったこと。相対的に英語の比重があがったこと。そんなことが課題になったと考えられます。
上記がサンプル問題です。まだ追加で公表されるとのことですから、確認しておきましょう。
上智~TEAP、共通テスト利用、一般(共通テスト+独自試験)
続いて上智です。
今までは、TEAP利用と一般入試でした。
まず、「共通テスト利用」を開始。共通テストだけで判定する方式です。
続いて、「TEAP方式」は英語を得点化することに。いままでは資格でしたから、英語以外で決まっていました。
そして、「一般方式」は共通テスト+記述論述型独自試験となりました。
特に最後が大きいわけですね。
ポイントは、
- 共通テストを受けていないといけないこと。
- 独自試験は記述・論述型になること。
です。
さらにいうなら、この大学は、今まで得点の標準化の過程で、実はかなりバランス型となっており、イメージとは異なり、国語や社会もできないとダメな感じだったんですけど、総体的に英語の比重があがったような印象です。
一般方式の、独自試験・サンプル問題はすでに公開されていますので、確認しておきましょう。
青山学院~一般を共通テスト+独自試験に
青山学院も、上智と同じような方式です。
経済学部をのぞき、共通テストを利用します。また一部には共通テストを利用しない方式もあります。
で、独自試験は、アドミッションポリシーに応じて設定とのこと。
以下のPDFファイルから独自試験にリンクがはられています。
https://cdn.aoyama.ac.2xx.jp/wp-content/uploads/2020/06/ad_2021exam_info_subjects_20200616_s5D8f.pdf
なので、一覧をプリントアウトするよりは、そのまま見て、リンク先に行って問題をダウンロードしましょう。
やはり問題を見ないのは損ですよね。
立教~一般入試から英語の独自試験をなくし、共通テストか外部試験の英語を利用。日程は自由に選択する方式に。
立教大学は、英語の独自試験を廃止しました。
英語は、共通テストの点数か、外部検定試験の点数を利用します。で、2月6、8、9、12、13に国語と数学社会を受けることで、受験可能。
つまり、日程が自由に選べるような入試になったわけです。
立教はもともと
- 問題はどの学部でも基本的に同じ
- 全学部でも併願は認めない。つまり、志望学科優先。
というポリシーでしたから、今回の改革で、要は、第一志望学科を4回とか5回とか受けられるようになるわけです。
この立教の日程移動は、併願関係にも大きな影響を与えるような気がしますね。
2021年度入試のキーワードはやはり「安全志向」
さて、最後に、何のデータもない時点ではありますが、今年の入試を展望しておきましょう。
まずは、昨年に輪をかけて安全志向が広がることでしょう。
コロナの影響で、学校が長期にわたり休校になりました。授業がない、ということは受験生にとって、私はさほど大きなことではないと思いますが、そうはいっても、「学校がない」「定期試験がない」というようなことで、「勉強しなくていい」というように過ごした人にとっては、今さらながら、不安な状況になっていることでしょう。
こうなってくると、「なんでもいいから決めたい」という心理が働くことは間違いないでしょうね。
当然、推薦に走る…などの行動が予想されます。
また、経済状況も大きく影響するでしょう。リーマンショックの時を考えてみても、私立を敬遠したり、受験校を減らしたり…ということも予想されます。
一方、地元志向も強まるでしょう。できれば、東京の大学には行きたくない、というような心理も働くに違いありません。
最初の推薦で決めたいというのは、場合によっては私立志向ですし、安全志向ということになれば、国立回避で、科目をしぼって私立志向ということにもなるんですが、一方、経済状況や地元志向から考えると、地方国立には一定のニーズが出て来ることも考えられます。
学科傾向でいえば、こういう情勢の時には理系とか教育系とか医薬看護系とか実学志向が高まるんですが、コロナの状況かで、教育や医療を受験生がどう捉えてどう動くのかは、ちょっと未知数です。食いっぱぐれない職業として認識するのか、危険や変革が求められる大変な職業として敬遠するのか。
まあ、この辺は模試動向が出てくれば秋には見えてくるでしょう。
いずれにしても、安全志向は間違いないような気がします。そうなってくると、いつも書くことですが、真っ当に努力した人が報われる入試になる、ということでしょう。
また感染拡大の状況とはなりますが、学習計画をきちんと立てて、第一志望に向かっていきましょう。