2021年度、英語4技能外部検定「成績提供システム」の実施が見送られる方針となり、今日にもそれが発表されるということです。どのような発表になるかわかりませんが、そこから受験生が考えておくべきことをまずはまとめます。
衝撃的なニュースですね。「身の丈」発言から一気にここまで進みました。とりあえず、「やるのか、やめるのか」という混乱は「やめる」という決着になりました。しかし、これで喜んではいけません。
だって、まず「中止」ではないから。「延期」である以上、必ず導入されます。次に、「成績提供システム」が動かない以上、使うといって発表していた大学の入試形態がどう変わるかということを、特に私立大学について、もう一度発表を待たなければいけなくなったから。さらに、成績提供システムが動かないだけで、まずは大学共通テスト、特に英語の変更については、何もやめる理由がないわけだから、「4技能なくなった!」ではなく「リスニング対策重要だよね」ってことを忘れてはいけないから。そして、私立大学や推薦入試が、成績提供システム、つまり4技能ありきで、すでに入試を動かし、変更を加えて発表してきた以上、これが元に戻ることはないと思われるからです。
やめたら、やめたで大混乱、というのは、まさにこういうことですね。もういいんです。よしあし論じてもしょうがないし。
今、忘れてはいけないこと、考えなければいけないことをまとめます。
- 英語共通テストはリスニング重視へ
- 私大や推薦入試は結局4技能が要求されている!
- 現段階で、「中止」ではない。いつから動き出すのか?令和6年度入試が目途。2024年が共通テストから英語がなくなる予定の年だけれど…
- 最後に…もし共通テストの英語が共通の4技能になるとしたら、さんざん叩いているベネッセの一本化になるしかないのでは?
英語共通テストはリスニング重視へ
まず、現段階で発表されているのは、民間試験の延期です。正確にいえば「成績提供システム」が延期されるということですね。
しかし、所詮、入試としては「A2が出願資格」だとすれば、ほとんど関係ない話で、問題は、共通テストの英語の変更の方だと書いてきました。
まあ、だから平気で、成績提供システムやめちゃうんですけどね…。
共通テスト全般、センターより平均点が下がる動きをしています。で、英語は、時間とか問題数とかは同じまま、配点は、リーディング100、リスニング100になるわけで、また、このリスニングがぐっとレベルがあがったように感じます。
これ、私立とか通っていて、リスニングとかちゃんとやってくれているならいいんですけど、そうでないと結構大変なことです。
だから、まず、外部検定見送りになっても、英語の運用力自体は、来年からだいぶ重視されるようになっていくことを忘れてはいけません。
私大や推薦入試は結局4技能が要求されている!
続いて、です。
ここまでまとめてきたように、私大の入試改革は、ガツンと行われております。文科省は来年から、学力の3要素、「知識技能」「主体性」「思考力」を入試で義務付けるからです。
もちろん、適当に逃げる大学もたくさんあるでしょうが、真面目に入試改革を進めている大学もたくさんあります。
もちろん、今回の発表から様子を見ていかないといけないですけど、私立はもう、変えるって発表したところがたくさんありますね。
- 今まで通りの入試を行う大学
- 外部検定を大々的に導入するけれど、もともと成績提供システムに完全にのっかることをしない大学=立教大学・早稲田商など
- 成績提供システムを使って新たな入試をはじめるつもりだった大学=早稲田政経・上智・青山など
一番上は、問題ないけれど、二番目の大学も実は問題ないんですよね。だって、成績提供システムと関係ない制度だから。もちろん、立教が「成績提供システムが入らないとなると受験生がうちのために外部検定受けることになるので、やっぱりやめます」となる可能性もありますが、一方で、「成績提供システムと関係ないんで、そのまま行きます」となる可能性もあります。
最後のパターンは、見直しをするしかありません。ひとつは、外部検定だけなしにして、他はそのまま。もうひとつは、「外部検定を成績提供システムでなく設定して、そのまま」というパターン。これだと大変です。もちろん、最初から見直す、という可能性もありますよ。前提が変わったんだから。
というわけで、まずは、私大入試がどうなるのかが不透明な状況になってしまったということで、そして、その中に「結局英語外部検定が重要な役割を持つ可能性が強くなっている」ということを理解しないといけません。
混乱がおさまったんじゃないですよ。これからも、まだ、私大発表したけど変わるの?変わらないの?って混乱が始まるんです。やめるってそういうこと。立教とかかわいそうでしょうがない。まじめにやったらこれだから。
国立の推薦入試については、もともと「基準などは変えないし、成績提供システムに限定しない可能性が高い」と書いてきましたが、これで「ほとんど今まで通りの基準で実施するに違いない」ということが明らかになりました。特に旧帝大クラスでは、出願資格になっていなくても高い英語能力が求められていて、英検などの成績添付が可能な携帯があることを考えると、最低でも英検2級、できれば準1級ということが求められていて、相応するスコアをまったく持っていないと不利になるのではないかと思います。
現段階で、「中止」ではない。いつから動き出すのか?令和6年度入試が目途。2024年が共通テストから英語がなくなる予定の年だけれど…
現段階で「中止」ではありません。そうなるなら…と思っていましたが、調査書をデジタル化し、新指導要領入試が始まるあたりで、これを導入すると考えているようです。
この年は、「指導要領が変わって試験科目が変わる」「調査書がデジタル化されていく」「共通テストから英語がなくなって外部検定に変わる」というあたりが予定されていたわけです。
ここまで不透明になってくると、まあ、指導要領はやるとして、その他を一気にやるのか、あるいは、またこれも段階的になるのか、そもそもできるのかがわかりませんが、こうなったわけです。
これ、大事なところで、現高2は「英語外部検定なくなっていいや」ぐらいの話かもしれませんが、現中2で実施ですから、当然、その上の中3や高1は、「浪人したら全部一気に変わるからね」ということになるわけです。試験科目については経過措置がとられるはずではありますが、それでも必ず「安全志向」になるわけです。
したがって、高1や中3は「助かった」どころか「より悲惨な残酷な選択」をつきつけられるわけで、喜べるような状況ではありません。
これが「延期」っていうことです。
「中止」になるんでしょうかねえ…。また大騒ぎして、また「延期」するんですかねえ…。私にはわかりませんが、やっぱり、きちんと議論しないと、きっとまたこれが続くんだろうなあ、と思います。そして、苦しむ学年が変わっただけ…という状況になるんじゃないでしょうか。
最後に…もし共通テストの英語が共通の4技能になるとしたら、さんざん叩いているベネッセの一本化になるしかないのでは?
ちなみに、ですが、先ほども書いたように、やるかどうかはわかりませんが、この改革は、もともと、「センターの英語が4技能になる」から始まったものでした。
一番最初にこの話を聞いたときは、まさに今の高2のセンター試験の英語が四技能になるものだと思っていました。得点も1点刻みではなくなるみたいな話でしたし。センターそのものがね。
これがトーンダウンして、英語は残るは、一点刻みだは、外部検定は出願資格だは、そしてついに延期になった訳です。
期せずして、共通テストから英語をなくすかもしれなかった2024年まで延期です。
それだけですめばいいんですけど、反対の主たる理由は、費用負担と複数の試験を判定するという不公平ですよね?
見直す間に、センターのように4技能一本化する意見、出ませんかね?
たぶんGTECが不公平だって叩かれるんですけど、日程違えば英検だって人によって問題だって違うし、従来型の面接だって人が違えば採点違うかもしれないし。
私は国語だから気になるのかもしれないけど、記述は正確に採点できない、と主張されるなら、「じゃあ入試は記号選択だけですね。記述は不公平ですから。」みたいないじけ方をしたくなるし、じゃあ英検だって不公平だよ、と言いたくなります。
戻ります。公平にするなら、同一日程同一問題です。改革の流れを組めばそれを複数回。
そのノウハウは大学入試センターにはない。それが記述のベネッセへの採点依頼につながるんだから。
となると、これってみんなが一番怒ってもいいところの、ベネッセ一元化以外選択肢がなくなってることのような気がするんです。
あるいは、不公平だから、2技能、マークのみ、つまり何も変えないか。こういう主張の方もいらっしゃいますから否定したくないけど、前にも書いたように延期を求めた人もいるわけで。中止じゃなくね。
というわけできっと議論は続くのです。
「体制を整えよう=基本的に同じ」
「センターで4技能作ろう=日程は考えよう」
「4技能は入れないで今まで通りの英語にしよう」
で、また議論が始まり、つまり、混乱も続く。皮肉を言うと混乱が先伸ばされた訳です。
高2はともかく、その被害が中2になっただけですから、教員としては良かったなんてことはない、というのが私の意見です。
しょうがないけどね。