学びの真似び(まねび) 「学び続ける人」になるために(教育と受験と勉強法)

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激戦の2019年度入試、センター利用リサーチA判定で「落ちる」ことがある理由を考える。

今年の入試も大変厳しい状況だったために、保護者会などでも「A判定で落ちた」というような、必ずしも具体的な事例でなく、心配される方もいらっしゃいました。というわけで、このあたりの可能性をきちんとおってみます。

 

模試A判定から落ちるのと、リサーチA判定で落ちるのは意味が違う

まず「A判定で落ちた」といっても、実はいくつかのことが紛れています。

一つ目は「模試」でA判定がついていたのに、試験で受からなかったということ。当然、入試の難化を象徴することになるんですが、逆にいえば、あくまでも模試ですから、準備が十分だったのか、A判定は毎回ついていたのかなどなど確認すべきことはたくさんあります。

二つ目はセンター試験後の「リサーチ」でA判定だったのに落ちたというケースです。こちらは実際の入試の自己採点を使っているわけですから、自己採点ミスなどがなければ、どうしてはずれたのかということが疑問になってきます。今日はどちらかというとこちらを中心に検討します。こちらも厳密にいえば、「センター試験の点数のみで合否判定するのに、A判定で落ちた」というのと、国立大学のように「二次試験があるんだけど、A判定がついていて落ちた」というのでは意味が違ってきますよね。

というわけで、順にこのあたりを考えていきます。

模試A判定で落ちる理由

「模試でA判定なのに落ちる」ということについては一度まとめました。

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すごく簡潔にまとめると、「本当に難化したケース」と「個人の問題であるケース」があります。

本当に難化する、というのはそもそも模試の判定基準は未来予想ではないからです。模試の判定基準は模試の前に1年を通して決まっています。その都度動かしているわけではありません。今までの結果などから予想していた基準をもとに、判定ラインを模試の前に決めています。したがって、分析会では「B判定ライン以上に志願者が多いので激戦になる」というような報告がされます。合格ラインより上に志願者が予想より多くなれば、それは「難化」ですし、当然、A判定が実質のB判定やC判定になっていきますから、これはありえることです。この話はちょっと厳しくって、学校の先生用の分析会みたいなところでは報告されるので、模試を実施する予備校に通っていたり、情報提供をきちんとする学校では、その前提で指導がされていきますが、そうでないと、「わからない」情報になってしまっています。

実際に、昨年の場合、秋口の予備校の分析は、学習院から下、成蹊、成城、武蔵、明学、國學院、東洋、専修、駒沢…とすべて、「受験者増」「B判定ラインより上で増」と厳しいことが予想されていました。これらの大学群ではA判定で落ちた率は、20%より高かったと予想されます。まあ、これから出て来るデータを見れば、本当のことはわかりますが…。

もうひとつは、個人の問題です。たとえば、「一回だけA判定をとった」とか「3年生の5月にA判定だった」とか、あるいは「受験校対策をまったくやっていない」とか「苦手科目や苦手分野がある」とか、さまざまな要因の中で、不合格がつくこともあるでしょう。

大学は模試の結果をもらってそれで合否判定をするのでなく、当日の入試問題の高得点者を合格にするからです。

特に起こりやすいのが、模試の受験者の実際の得点が50%ぐらいで、下目の大学を滑り止めにするようなケースです。偏差値上は、それでもA判定なんでしょうが、実際の入試では、下位の大学でも合格最低点は70%程度になることもあり、そうなると、苦手分野ややっていない分野などがある場合は、問題が簡単になっても得点が伸びないというようなこともあるんですね。

「油断」というようなことでなく、しっかりと準備をすることがまずは合格の前提になるわけです。

リサーチA判定で落ちる理由~センターのみか二次試験があるか

それに対して、センター試験後の自己採点結果、つまり実際の得点を使ったリサーチでA判定がついていたのに落ちたということになると、もう少し理由を考えなければいけません。まあ、自己採点ミスとか、予備校の定員の間違いとかがあれば、それはお話になりませんが、そうでないとすれば、どんなことが考えられるのでしょうか。

まず、ここも二つに分けないと、話が混乱します。

ひとつは、実質、センター試験の結果のみで判定をするケース。であるとすれば、その他の要因がないわけですから、判定のデータに何があったのかを検討しないといけません。

もうひとつは、二次試験など独自試験が課されるケース。こちらの場合であれば、当然、「逆転される可能性」があるわけです。でも、今年、それが多く起こったとすれば(そんなことがたくさんあったかわからないですが)、その理由があるはずです。そんなことをわけて考えてみたいと思います。

センター試験のみ、リサーチA判定で落ちる理由

センター試験の得点のみで決まる大学がA判定で落ちたとします。これは、自己採点ミスがなかったとするなら、予備校が予想したボーダーラインが上がった、ということにほかなりません。ちなみに自己採点ミスだったかどうかは、たとえばセンターの得点開示でミスがあったかわかる他、入試結果をまとめた資料などでボーダーラインを推測することができる形になります。

ここでは、リサーチよりボーダーラインがあがったとするならどういう要因がありうるかを考えてみます。

センター後、リサーチ後の出願は可能かどうか~アナウンス効果

まず、確認しないといけないのは、その大学がセンター試験後やリサーチ後に出願可能かどうかです。このあとの国立大学もそうですが、リサーチの結果を見て出願できる場合、せっかく予備校が予想してもそこから「動く」ということが起こってしまうわけですね。

こういうのをアナウンス効果と言います。

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国立大学だと、定員の少ない「似たような系統」があるところ、たとえば、教育学部とか、東京外語大の学科とか、あるいは「同じ系統で地域が近い大学」、首都圏でいえば、千葉大看護と東京医科歯科看護、筑波看護と茨城県立医療と千葉県立医療、東京学芸大と千葉大などの教育学部などで起こりやすい話になります。

私大でも、いまや、ネットで点数を入力すると、A判定とかB判定のところを探せますから、リサーチ後に出願できるとなると、「動く」わけですね。まして、同じ大学の同じ学部で、学科を選ばないといけない、併願できないようなところでは、こういう細かい動きがすごく多くなるわけです。

ただ、今年のようにセンターが遅いときは、私大に関しては、こうした「リサーチを見て出願」する可能性は下がりますから、違う理由かもしれません。

予備校は、各大学の個別事情をよくわかっていない

となると、予備校が読み間違えた、ということも考えられます。もちろん、入試方式や定員が複雑ですから、ちょっとした変更を気付かずにすすめてしまった、併願の有無や第二希望に入る可能性があるなどの方式を完全に把握できずに、判定を出したという可能性もありますが、これはレアなことだと仮定して、すすめましょう。

実は、予備校は、大学の個別の事情を完全にわかっているわけではない、ということなんですね。

これはほとんど私立大学の話です。

国立の場合、指定校がほぼありませんし、入試結果の公表などはかなりきちんと行いますから、推薦の定員、前期の定員、後期の定員と、しっかりわけて、その定員を確保しようとします。実際に合格者もほぼ(多少は辞退しますが、多少ですから)全員入学してくれますので、ここを間違うことはないし、間違った数名は次の入試や追加合格で埋めればいいわけです。

私立大学はそうはいきません。もちろん、定員はきちんと決まっていますが、その定員を「当てる」ことは非常に難しいことなのです。

まず、指定校推薦。各高校に定員を見越して配分するわけですが、辞退する高校もありますし、学科が選べる推薦の場合、特定学科に集中することもあるでしょう。

次に併設校推薦。基準はあるにしても、指定校同様、何学科に何人くるかを試験で選考できる、つまり落とせる関係ならいいですが、「付属」というように、ほぼ保証してしまっている関係の場合、やはり、どれだけの生徒がどの学部にくるかは毎年変動するはずです。

公募推薦やAO入試は、ある程度出願者を見て、定員通りに発表することができますね。

で、ここまでで、合格者がいて、手続き者がいて、ようやく、一般入試を迎えるわけです。

一般の定員を圧迫している可能性はありますよね。今までならそれでも一般で一般の定員に近く合格発表ができますが、「定員厳格化」がありますから、もうできないんです。申し訳ない、ごめんなさい、と思いながら、減らすしかないんですね。

さらに私立大学が抱える事情というのは、現状の入学者です。経営上、あるいは学校の施設上、そして現在においては、「定員管理」の問題上、大学はどのぐらいの学生を抱えられるかが決まるのです。たとえば、4年のうち、間違って多い入学者がいた場合、そのことによって施設や設備、場合によっては教える人が足らなくなりますから、やや少ない人数にせざるを得ません。そんなことをやって、多い学年が卒業したら、急に今度は足りなくなる。やや多くとりたくなるわけですね。

現在は、よくもわるくも「定員管理」。定員厳格化ですから、とにかく守らないといけないんですが、このペナルティは1年だけでなく、数年にわたって考えるんですね。だから、昨年現状、学生を定員管理より多めに抱えている成城や國學院が減らしにいく、つまり、定員さえもとれない可能性があることはある程度わかっていることだったわけですね。

で、その少なくしなければいけない「定員」を予備校ははたしてわかっているのか。あるいはわかったとしても、その「配分」、つまり、センターで減らすのか、一般で減らすのか、というのは、本当に大学の事情でしかなく、よほど大学の入試担当者が具体的に教えないかぎりわかるわけがない部分なんです。

データが絶対に正しいわけではない

最後に集めているデータも絶対的なものではありません。たとえば、東進は後発の感があって、なかなかデータ集めができていない気がします。また受験生の方も、業者ごとに志望校を変えて書いてみたりしますよね?だから癖がでやすい。

私の経験上、地方ではベネッセ模試を入れている確率が高く、ベネッセを頼りがち。首都圏の中高一貫校は河合模試を入れていて河合塾を頼りがち。また、やや低めの大学を志望することが多い学校はベネッセをベースにしていることが多い印象です。

これでデータが変わるかどうかはわかりませんが、違いは当然出て来ると思います。

 

国立大学などの二次試験がある場合に、リサーチA判定で落ちる理由

つづいて国立大学などの二次がある場合の話です。そもそもすでにまとめましたが、

  • 国立の場合、リサーチ後から出願するので、アナウンス効果が起きる

という大前提がありますので、当然、「予想したからこそはずれる」というような現象が起きる可能性があるわけです。

そういうことがないとするなら、他にどんな可能性があるでしょうか。

センター:二次の配点比率と二次問題との相性

まずは、これをシンプルに「逆転」されたと考えましょう。

そう考えれば、まず大切なのは、センター:二次の配点比率と、それから二次試験に対応できるかどうかという話です。

原理的には、「センターのような解答を選ぶ問題」と「自分で説明する問題」では、対策したかいなかが顕著にでる可能性があります。加えて、特に理系では、そもそもの範囲が違います。数学ですね。

センターではⅠA、ⅡBですが、たいてい二次試験は数学Ⅲです。したがって、数学Ⅲになるとできない受験生がいるとすれば、逆転されるのも当然です。

そして、二次試験の配点が大きいとなれば、たとえば、センター:二次が1:1であったとしても、科目数が7:3とか7:4であったとすれば、二次科目は2倍の価値を持つわけですから、十分逆転される理由になりえます。

こうした科目に特に苦手意識があるわけでもなく、記述模試でも合格の偏差値をとっていて、過去問題をやっても合格最低点がとれているとするなら、もう少し別の理由を探る必要があります。

2019年度のようにセンターが易化すると、激戦になりやすい

今年の場合、顕著だった思うんですが、センターが易化すると、C判定より上の人、あるいはD判定ぐらいでも、つっこんできて、激戦になる可能性が高いんです。リサーチで出した通りに出願するというか。

こういうときには、二次力勝負になります。判定がいい人がそのまま居残り、さらに上からも降りてきて、下の方は逃げる人もいますが、やっぱり逆転狙いでつっこんでくるからです。

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端的にいうと、本来、こういうときには逆転がしにくいんです。うちの学校でも中堅大学については結局は、A判定、B判定の人が合格し、C判定以下の人がきれいに落ちているような状況になりました。

したがって、本来的にA判定が落ちにくい年だったはずなんですが、それでも逆転されたとするなら、説明としては、「C判定の人が逃げずに受けてきた結果、合格圏内の人がたくさんいる状況になり、その中で二次力がなかったため逆転された」というようなことになると思います。

逆に言うと、センター自体が難化すると、目標点がとれないと弱気になって、下げる生徒が多くなります。この場合、下げるのは、ボーダーぎりぎりの生徒です。だから逆転できるんです。最後のイス取りゲームに参加する人が減るからです。この場合は、A判定の人は安泰。余裕で合格を確保でき、残った椅子を争うぎりぎりの人が減る感じになるので、「逆転の年はA判定はむしろ安泰」。

そこから考えると、今年はA判定は落ちやすかったとはいえます。

実際は、わかりません。千差万別ですね。でも、論理的に考えるとこういうようなことが考えられます。

 

来年もA判定は落ちるのか?

最後にこの傾向は、続くのか?ということについてです。これは予想はしません。模試が始まって分析結果を見てから予想するのが適切だからです。

しかし、次のことは言えます。

  • 今年の難化した結果を使って、次年度の判定基準が作られる。
  • つまり、模試A判定が落ちるとすれば、その予想をさらに越えて難化した場合は、十分同じことが起こる。
  • 大学も今年の結果を見て、指定校などの配分を決めるはず。少なくとも、意図的に指定校を増やそうとしない限り、一般は圧迫されない。
  • 逆に言えば、今年の状況をよいと思ったり、もっと欲しいと思っていたりすると、さらなる難化が起こる。
  • センター利用がリサーチAで落ちるかどうかは、定員の圧迫によるところが大きいので、大学が推薦などをどう考えているかによる。ただし、今年のボーダーをもとに予備校は次年度に反映させるので、おそらく、これ以上予想を上回ることは考えにくい。
  • 国立大学の逆転は、そもそものセンターの平均点やアナウンス効果によるので、現段階では何もわからない。

こんな感じです。

私の予想は「空前の安全志向」ですが、少子化の傾向がある中、しかも今年がこれだけ厳しい中、さらにすべての大学が難化するということには…

少なくとも今年と同じぐらいで、だとすると、A判定だから落ちるは減りますね。予想が厳しいわけですから。

でも「空前の安全志向」で、またさらに中堅が難化する確率もなくはないですよね…。

わかりません…。

「A判定で落ちる」って聞いて不安になった人、原理的にはそんなことはないんですよ。(というかA判定って80%ラインて言われますから、5人に1人は落ちる前提ですけどね。)

今日、書いたことは逆から読めば、どうすれば、「A判定で落ちる5人に1人にならないか」ということでもあります。

まだまだ時間はありますから、しっかり準備していきましょう。